第20話 リサ

 ルークは少し寂しげでどこか暗い表情だった。

「レン…もう自分を偽り続けるのはやめろよ…」


「ッッ! 違う! 俺は…俺は…」

 歯を噛み締めた。

「死んでなんか…」

 とっさに自分の両手を見る――


 ルークが俺の肩を掴んだ

「お前はな…」


「やめろよ…」


「お前の本当の名はな…」


「…やめろって…」


 バンッ!

 勢いよく扉が開いた!

 リンリンだ。

「ワシらはもう行くぞ。」


 ルークは途端、リンリンの方へと振り向く

「あぁ…俺らがやれば、世界の脅威を退けたって事で恐らく一気にこの世界の覇権に近づくハズだ。頼んだ。」


「その腑抜けはなんじゃ。」


「今はやめといてやれって…」


「自分のが今から戦いに行くのに、おまんはやらんのか。やはり、その程度だったって事じゃな。」


「おい…もういいって。さっ!早く行った行った!」


 リンリンはレンを一瞬睨み付けそのまま扉を閉めて出て行った。


「ルーク…」


「どうした?」


「俺は一体どうすればいいと思う…?」


「んー?まず真実を受け止めたら?逃げてるだけじゃ何も始まんねぇよ?」


 逃げてるつもりは無い

 本当は逃げたくない。

 でも目の前にある事実が何かを変えてしまいそうで怖い。

 こんな時にお姉ちゃんが居てくれればな…


 ――同時刻 ベルフェベット広場 ――

「行くぞおまんら!」


 オオー!


「ナーガ!転移ワープ魔方陣展開せぇ!」


「分かった…」

 広場に集まった総勢100人の魔道士全員を包み込むほどの巨大な魔方陣が足元に浮かび上がる。


「カレンちゃん!凄いねこの魔法!俺のちんこくらい凄いね!」


「………」


「あれ?カレンちゃん?暗いよ!?ここツッコまないと俺恥ずかしいんですけど!?何か1人で大声でちんことか行って警察案件何ですけど!?ねぇ!?…カレンちゃん?」


「ねぇアンタさ…」


「何…?あらたまって…」


「レンの事…どう思ってるの…?」


 シロウは少し顔をしかめてすぐ笑顔になった

「レンさんは…俺のちんこ」


「そういうのいいから」


「レンさんは俺の希望だよ」


「希望って…何よ…」


「何て言うか言葉じゃ伝わりにくいけど…」

 シロウは顔を上げた。

「大丈夫だと思うよ…!だって!レンさんだもん!きっと俺らの前にまた来てくれるよ!今はまだだけど…でも俺はレンさんを…信じてる…!」


「感情論ね…」


 でも…


 ――嫌いじゃ無い


「リンリンいつでも行けるぞ」

 ナーガが地面に手を着いた


「今から世界の覇権を取りに行く!おまんら!出陣じゃ!」

 手を振り払う!


 オオー!


空間転移ワープ!!」


 ――辺りが光に包まれる!――


 ………

 …


 ――同時刻 客室――


「行ったみたいだな」


「あぁ…そうだな…」


「ちょっと待ってろ。ちょっと飲み物持ってきてやる。」

 ルークはそう言うと立ち上がり部屋を出て行った。


 はぁ…

 お姉ちゃん…ゴメン…

 俺…やっぱりもうダメかも知れない…

 ルークが言いたい事は自分でも自覚してる

 でもやっぱりいざ他人に本当の事を突きつけられるのは辛い…

 逃げたい。どこまでも。

 リサ…ゴメン…

 ごめん…


 込み上げる感情に耐えるのが精一杯だった。

 劣等感と悔しさが自分の首を締め付ける。

「ッッ!クソッ!」

 握りしめた拳で壁を殴る。


 バン!

 扉が開く

「ごめんコーヒー無かったからお茶持ってきた…」


「ルーク…話してくれ…」


「覚悟…出来たのか…?」


「覚悟何て出来ない…」


「そうか…ならやめといた方が」


「でも!少しでも前に…進みたい…」


「はぁ…分かった。ホントにいいんだな?」

 ルークは持ってきたお茶を机に置いた


「あぁ頼む…」


「じゃあまず最初からな…

 レン・マケドニクスは10年前に死んだ。

 んでな、10年前の事件は色々とおかしいんだよ。

 まずお前の兄弟は何人だ?」


「姉と俺と妹で3


3何だろう?

 じゃあ何でお前の親はお前とキャンディさんを逃がしたんだ?

 逃がすなら子ども全員を逃がすだろ?」


「それは妹が小さかったからじゃ…」


「あの時のお前の家族は言わば世界の中心だったんだぞ?お前の母には2人の子どもしか居なかったんだよ」


「違う、妹はお腹の中に…」


「お前の母は妊娠何てしてなかったんだよ。

 第一、アーサーが魔界征伐に行ってる間にどうやって子供を宿すんだ?」


「それは…」


「んでだ。ここからは先は重要だぞ?よく聞いとけよ?」


「あぁ…」


「お前の回りの奴は、

 一体いつリサの事をお前のなんて言った?」

「妹がいた?違うそうじゃない。」


「でも!お姉ちゃんは[リサの笑顔を取り戻そう]って…」


「キャンディさんはそう言う意味で言ったんじゃ無い。」


「でも、お兄ちゃん…助けてって…」


「それは多分お前が真実を認めたくないから

 自分の中でリサがそう言ったていう立ち位置にしたんだろ」


「だけど…ッッ…」


「いいか、ちゃんと教えてやるよ。」

「お前の正体は

 10年前に死んだ

 リサ・マケドニクスのクローン。

 お前の本当の名前は

 リサ・マケドニクスだよ」












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