第19話 真相

「レンさん…いいんですか…このままで…」

 シロウは不安そうにこちらを覗いている。


 俺だって分かってる、このままじゃいけない事くらい。

 でも、それでも、姉さんは残った唯一の家族だった。

 辛い、悲しい、でも何でだろう…

 涙が出ないのは…


「レンさん…俺はカレンちゃんと一緒にキャンディさんの仇討ちに行きます…

 今は休んでください!安心してください!俺達がこの戦いを終わらせますから!それでカレンちゃん説得しますから!」

 そう言って立ち上がり笑顔を見せた。


 本当に、俺はダメだな…

 頼ってばかりで何も出来ない。何も…。

 ごめん。。。

 本当にごめん…なさい…


 ――同時刻 マーガレット――

「チッ…今度はスルトか…」

 ミネルバもまた、戦後の処理で手を焼いていた。


 ルークからの援軍要請にも答えたいが、魔法大戦でかなりの負傷者が出ており援軍を送る事が出来ない様子だった。

 だが、スルトもまたこの世界の脅威になりえる存在だった。

 このまま奴を放っておけばそれこそ世界が終わる。

 自室で始末書を処理していたミネルバもたまらずため息をついた。


「ゲルグ…いるか…」


「はい?何でしょうか女王様」

 そう言うと音も無く背後に現れたこの男は魔法大戦でも一際目立っていた重力の魔道士。

 マーガレット国幹部の1人にして幹部内では最年長。

 サングラスを掛けておりわずか半年で幹部に上り詰めたマーガレット国内最強の魔道士。


「お前が援軍に行け…私は忙しいのでな…」


「こんなおっさんを使うんですか…?めんどくさいんですけどね…」


「お前の素性はまだ謎が多いのでな、扱いには困る。だからさっさと援軍に行ってこい。」


「へいへい…酷い女王様だ…」

 そう言うとまた音も無く消えていった。


 ――ベルフェベット国――


「今夜は新月だ…現在は20時!今夜0時に突入する!各員!準備をおこたるなよ!今日明日で元凶を俺らベルフェベットがぶっ潰す!世界の覇権を取りに行くぞ!!」


 オオー!!


 広場に集めた数百人の魔道士の前で作戦の説明を行うルークだったがその表情はどこか不安げだった。


 チッ…俺が行ければスルトなんていう雑魚敵じゃないんだがな…

 どうも色々と引っ掛かるんだよな…


「それで詳しい作戦はな、そこの情報屋に聞いてくれ。」


 広場数百人の前に突然リンリンが姿を表した。

「ここからはワシが取り仕切る。まず、

 シロウ、カレンに魔道士30名

 ジュリ、リンリンに魔道士30名

 ナーガに魔道士40名

 計3部隊に分けてあの空中に浮いちょる塔を包囲する。

 3方向からの包囲じゃ、向こうもたまらず出てくるじゃろう。

 外にあぶり出された敵は諸君ら魔道士に任せる。

 幹部やカレン、シロウで塔に突入し元凶のスルトをぶっ潰す。

 以上が作戦じゃ。

 何か聞きたい事は無いか?」


「はーい!先生ー!」


「はいそこのシロウ君」


「俺が塔に突入するなんて聞いて無いんですけども…?」


「そうか。他に質問がある奴は」


「あ、無視ですか!?何かこの小説俺に対する扱い酷くないですが!?もっと優しくしてくれなきゃ困るんですけど!?」


「うるさいわね…黙りなさいよ…童貞」


「カレンちゃん!?急にそんな事言うの止めてくれる!?ていうかまず、俺未成年だし!?童貞何て当たり前だし!?俺は法律を守ってるだけだし!?ハイ論破wwwあ!ちょっ…!魔法使うのやめて!?あ!燃える!あ!アツイッテバチョアァァァァァァア」


 ――22時 突入まで後2時間――


 ベルフェベット門前


「そろそろ集合させるか…」


「ルークこんな所におったのか。」


「あぁ、リンリンかどうした?」


「貴様に頼まれてた情報の事を今言っておこうと思ってな…」


「あぁ、それね…で?何か分かったの…?」


「ルシファーの事について調べてたら興味深い事が分かってのう…」


「ほうほう…一体何が分かったんだ?」


「レンについて分かってな…」


「何でルシファーについて調べてるのにレンが出てくるんだ…?」


「それがじゃな…」











 ――客室――

 コンコン

「レン、ちょっといいか…?」


「…ルークか…いいよ…入って…」


 ルークはレンのベットの横にある椅子に腰かけた。

「どうだ…大丈夫か…?」


「あぁ…おかげさまで…」


「ちょっといいか…立って話がしたい」

 そう言うとルークは立ち上がった。


「何…俺は今…気力が無いんだよ…」

 そう言うとレンも立ち上がった。


 ルークはレンの目を見て喋りだした。

「お前もうすうす勘づいてたハズだよ」


「何が…」


「リンリンから聞いた情報と合わせて確信が持てた。」


「いきなり何だよ…」


 一度ルークは大きく深呼吸をした。

「お前は10年前の出来事を覚えているか…?」


 レンは深く考え込んだ後顔を上げた

「何が言いたいんだ…?」


「お前はもう知ってるハズだ。全部。

 レン マケドニクスは

【10年前に死んでる】」


「は?何いってんだ…?俺が死んでるだって…?そんな…事…」


「それで1個質問だ。」


「質問…?俺が質問してぇよ…何だよ…どうゆう事か訳わかんねぇよ…」


「10年前にお前は死んだんだよ。

 なら…


 今、目の前に居るお前は


 一体…」











 ――誰なんだと思う?















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