第18話 決別

 ルークは一呼吸置き語りだした。

「会長が悪魔化した時からおかしかった…

 最初からおかしかったんだ。

 ルシファーの急な撤退。

 キャンディのスーサイドのタイミング。

 魔法協会会長スルトの復活。

 全部繋がった。」


「だから、どうゆう事?スルト何て居ないってどうゆう事…?」


「まぁ、簡単に言うと…

 お前達やキャンディが戦った会長スルトは偽物だ。影武者的な。」


「偽物…?」


「ルシファーと手を組んで、国と国で戦争を起こさせる。

 ミネルバや俺はもちろん自分の国を守る。

 だが、世界の脅威となる会長を捨てておくわけにもいかない。

 キャンディは元々、協会本部の人間だし会長とはけりをつけたかっただろう。それに俺が自分の国の問題に他人を巻き込むとは思えない。

 キャンディを会長討伐に向かわせる。

 用意した自分の偽物と共にキャンディを道連れ。


 これが会長の筋書きだろう。

 んで、あそこの空に浮かんでる魔王城みたいな所に会長本人が居るだろう。」


「どうしてキャンディさんを殺す為だけにそこまで大きな事を…?」


「まぁ…キャンディさんと言うより

【マケドニクス家】だからかな…」


「マケドニクス家…」


「少し昔話をしてあげよう。」


 ――10年前――


 魔法協会会長 アーサー マケドニクス (42)


 選挙で勝ち最年少で魔法協会会長に就任した

 レンやキャンディの父。

 その人望は大きく厚く、実力も世界一。

 魔法協会や世界はしばらくは安泰だと思われていた。

 だが、アーサーが会長に就任して反発する者もいた。

 それがスルトだ。

 アーサーが来る前は会長だったこの老人は選挙に負け居場所を無くし、心底アーサーを憎んだ。今まで味わった事の無い程の屈辱。コイツの時代は終わりだと言う周囲からの目線。

 老人は見るたびに思った。アーサーを殺せば自分は再びあそこの座に戻れるだろうと。

 そして事件が起きた。


 アーサーが魔界征伐を行っている時だった。


「アーサー様ァァ!」

 1人の魔道士が呼び止めた。


「何だ、うるさいな。」


「奥様が…!!」



 その日、協会本部は火の海に包まれていた。

 レンやキャンディは母の魔法で遠くに飛ばされていた。


 スルトやスルトに荷担する者は協会を火の手にかけ、隙を狙ってアーサーの妻を襲った。


 アーサーが戻った時には妻は目の前で人質にされており、

 アーサーも手を出す事が出来ず油断したところをルシファーに殺された。

 そして妻も。


 スルトには国1つが味方していた。

 3大国だった当時、一番力を持っていたルシファーの国が。


 アーサーが死んだ事は世界で大きく取り上げられ、スルトやルシファーがやったという事はどこの情報にも載っておらず完全に抹消。

 原因不明の炎に協会が包まれ助けに戻ったアーサーも共に死んだ。という事でメディアは取り上げた。


 そこに駆け付けて炎を消しアーサーの亡骸を持ち帰ったということで前会長のスルトが称えられ再び会長の座についた。


 だが、スルトは自分の屈辱がいつまで経っても消えないことの腹いせにアーサーの子供、マケドニクスの血筋に不幸の雨を降らせた。


 ……


「まぁざっとこんな感じ」


「じゃあ何でキャンディさんは会長の側についたの?」


「アイツの考えは正直分からない。何か企みがあったんだろう…」


「ふーん…なるほどね…」


「とりあえずあれをどうにかしないとな!皆にも手伝ってもらうよ!」


「そうね!」


 レン…早く立ち上がれよな…

 お前ならきっと、世界を救えるんだから…


 ――会議室――


 長い長方形の机の椅子に腰掛けた。

 シロウやカレンも参加した。レンが落ち込んでいる今、やれるのは自分達だと考えた結果だった。

 ルークは戦争での怪我人や始末書などあったため、一緒には攻めれない。

 会議では

 シロウ、カレン

 幹部のナーガ、ジュリ

 そして情報屋リンリン

 魔道士数百名で攻めいると決まった。

 数日後にはミネルバの援軍が駆けつけるとの事。


 ……


 ――客室――


「レンさん…」


 ベットに潜っているレンを横目にシロウやカレンが側にいた。


「いい加減にしなさいよ!!」

 立ち上がり腰かけていた椅子を思い切り飛ばした


「カ、カレンちゃん…?急にどうしたの…?まさか…生理イッタァァァ」

 蹴り飛ばした椅子がシロウの顔面を直撃した。


「そんな弱々しいアンタは見たくないのよこっちは!!もういいわよ!立ち上がれないならここで豚みたいな生活をしてればいいのよ!」


「アンタは魔法探偵何でしょ!?アンタは何の為にここまで来たのよ!!」


「もう…無理だよ…

 俺は…

 俺は…

 もう…

 何にも出来ない…」


「…そう…なら…いいわ」


 カレンはドアノブに手をかけた


「カレンちゃんどこ行くの?」


「そんな腑抜けに用は無いわ。この戦いが終わったら私はここから出ていくわ。」


「ち、ちょっと!カレンちゃん!」




 怒りと悲しみが混ざった表情だった。

「今までありがとう」











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