第13話
闇討ち刀となった刀に幸光は魅入っていたが、 ニカッと笑うと雪花の方を向いた。
「自分の闇討ち刀を手に入れましたよ! これで自分も人の役に立てるようになったでしょうか?」
「ふふ、そうだな。しかし幸光。けっして刀に呑み込まれてはならないぞ。その刀は名を《灼淵・闇鳴》と言う。それは闇を祓い人を救うが、気を許せば今度は持ち手が闇となる。過去の持ち手もそうなったと聞く……」
椿の存在ははっきりと公表されていない。というより、その存在は捻じ曲げられるように伝えられていた。闇祓いの中から闇憑きが現れたなど、信用に関わることだ。
今の闇祓いの中に誰が灼淵・闇鳴を所有していたか知る者はいない。仮に知っているものがいたとしても、それを決して教えてはならない。それが上からの指示だった。
「つまり……鍛錬が必要ということですね! 刀に呑み込まれない鍛錬をしなければいけませんね!」
「た、鍛錬でどうにかなるかは分からーー」
雪花が言い終える前に、解刀屋の扉が開かれた。
「なるッ!! 鍛錬に無意味無価値なもの無しッ!!」
そこにいたのは真っ赤な燃えるような髪に、野性味のある顔つきの女性だった。少々衣服がはだけているが、その女性は気にしていないようだった。
「いつか見つかると思っていましたが、もう見つかってしまいましたか不知火しらぬい 紅蓮ぐれんさん」
不知火 紅蓮。彼女は天才だ。そして、安寧の光にいる闇祓いの中で最強である。あの雪花でさえも彼女に勝つことができない。
才能を持ちながら、決して力に溺れることなく常に精進し続ける紅蓮はまさに最強というにふさわしい力を持っている。
「長いこと探したぞ。姉さん(・・・)もそこまで必死に隠すこたぁねぇだろうに。なぁ、そう思うだろ?」
「姉さん? 紅蓮さんに姉がいたなんて事は聞いたことがありませんが」
「あん? あぁー、これは秘密にしとけって言われたんだっけか? まぁどうでもいいな。幸光、お前はオレの甥っ子だ。お前らは知らないと思うが、霧鳴の妻である椿はオレの姉さんで、姉さんは本来であれば霧鳴と肩を並べてもおかしくない実力を持ってたんだぜ」
その場にいた一同は一度に入ってきた情報量過多によって停止していた。
つまりは、幸光は紅蓮の甥っ子であり、紅蓮は椿の妹だった。そして、椿は本来であれば霧鳴と同様の1番であってもおかしくない実力を持っていた。
「というわけでだ、甥っ子。お前に今から稽古をつけてやる。行くぞ」
「ゆ、幸光。お主もなかなかに大変な思いをするようだな」
「ボクも同情するよ。紅蓮さんの稽古ってただ人間の限界を迎えさせようとしてるだけだからね」
雪花と燕は同情の目を向けていた。
しかしーー
「貴様らもだぞ。ついてこい幸光!」
「はい!」
「え?」「へ?」
2人は頭をガシッと掴まれ、紅蓮の地獄の稽古に無理やり参加させられる事になってしまった。
紅蓮の稽古に参加したものは必ず強くなって帰ってくる。しかし、命を落とす危険性もあるため、番付きのみが紅蓮の稽古に参加させられる。そしたその稽古に拒否権はなく、紅蓮が稽古をしたいと思った日に急に行われる。
番付きの中で、紅蓮の稽古はこう名付けられている。
死に最も近づく瞬間という事で『三途渡り』、と。
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