第14話、勇者パーティの初試練
ある宿屋にて……。
使い古された木のテーブルを囲み、端正な顔立ちの3人が顔を付き合わせていた。
小さな衝突を経て、腹を割って話し合い、ある作戦の話し合いへと移行していた。
「いいですか? 君達は確かに強い。けれど……」
「経験がない、でしょ?」
オズワルドの言い淀んだ後を引き継いで、エリカが苦笑いで言葉にする。
「オレ達だって自覚してるよ。オズワルドの指示には従う。勿論、事の真相を確かめるのが先決だけどな」
「えぇ、勿論それで構いません」
双方、笑顔でやり取りできるまでになっていた。
「にしても、あのショーク伯爵がねぇ……」
「以前まではそこまで悪どい真似はしていませんでしたし、悪行に手を染めてからもかなり用心深くやってましたから。王都にいるあなた方では知るのは困難だったでしょう」
当初こそ、あまりに不自然な偶然の出会いに警戒心を剥き出しにして、戦闘と言う名の一悶着があったが……。
「よしっ、ならそろそろ行きまし――」
恐怖に心臓が凍る。
吐き気を催す程の圧力を受け、気を失いかける一同。
「ッ!?」
「ぁ、っ、グッ、……なんだ……今のは……」
今の僅かな間だけ、ストゥートの街の一箇所から身も凍る絶大な魔力が生まれたのだ。
「はぁッ、はぁッ……こ、こんな魔力、有り得るの……?」
「……」
察知しただけだ。
にも関わらず、魂を鷲掴みにされたような感覚に、全員冷たい汗を張り付かせて青い顔で息を整える。
外からは、そこまでの騒ぎは聴こえて来ない。魔力を感知できる程の手練れはあまりいないようだ。
「何かの、兵器かも……。魔力を無限に蓄えられる装置とか」
「……言いたくありませんけど、人質はもしかして……」
人質を生贄にして、魔力を貯めている可能性を疑うオズワルド。
エリカもハクトも否定できず、苦々しく険しい顔をしている。
「今の魔力が発生したのって、ショーク邸の方だね」
「……急ぐぞ。放っておけば、街が危ういかも知れない」
ハクトの言葉に、エリカも……そして肩をすくめたオズワルドも、すかさず賛成の意を示した。
♢♢♢
あれからもう一度訪れた同規模かそれ以上の魔力の余波を感じ、
だが、その頃には……。
「……………」
「……な、に、これ」
何をどうしたらこうなるのか、想像もできない景色が広がっていた。
夕方まで確かに存在した、圧倒されそうになるほどに贅を尽くした屋敷や見事な庭園が、一部だけを残して丸々消え去っているのだ。
「……足が震えて仕方がありませんが、こうしてても始まりませんね」
「あぁ……ふぅ。……行かなくちゃな」
不安と恐れによって心臓が大きく脈打ち、嫌な悪寒が止まらない中でも、正義感に突き動かされた勇者達はショーク邸へと足を踏み入れる。
各々武器を取り出し、周囲をくまなく警戒しながら消失した大地の半円を、沿うように進む。
すると、
………ぁぁ……………。
「……今の」
「女性の悲鳴? みたいだったな」
奥に残る屋敷の一部辺りへと視線を向ける。
「急ぎましょう! おそらく、唯一の手がかりです!」
オズワルドが、すぐに駆け出す。
「お、おいッ」
「素で女性に甘いんだね、あの人」
急ぎ、ハクトも溜め息混じりのエリカも後を追う。
屋敷に着くと悲鳴と言うよりも嬌声のようなその声は、はっきりと聴こえてきた。
「な、なんか只事じゃなさそうだぞ」
「うん、いくらなんでもおかしいよ」
オズワルドが取り付けたフックショットの縄を登りつつ、いつまでも続く声に異常さを感じる。
そして、いよいよ二階の声のする部屋を前に……。
「……行くぞ」
頷き合い、心を決め、―――飛び込む。
「なっ!?」
部屋の中は、想像を遥かに上回る異様な光景であった。
「……な、なに、……あの、鎧の人……」
3人の目が、釘付けになる。
大きな満月の下で、月光を呑み込むような漆黒の鎧。
そして本能で理解してしまう。
「――ふぁぁあああッ!! ぁあああぁぁぁぁあッ!!」
少女の頭に黒き邪悪なオーラを注ぎ込む全身鎧。
アレは、絶対者であると。
この場にいるだけで、あまりの邪気にカチカチと歯が鳴る。
あの鎧の中に、凝縮した負のエネルギーを閉じ込めているのではと感じる程だ。
間違いない。
先程の
自分達が恐怖に震えて臆病風に吹かれている間に、目の前の邪悪なる儀式が終わる。
「ぁぁ……うぅ……」
黒い鎧の存在が少女の頭から手を離すと、薄めの桃色髪の少女がたおやかに崩れ落ちる。
近くにいる獣人の少女と共に見目麗しい容姿だ。
圧倒され臆するエリカとオズワルドだが、熱き正義の血が
「……おいッ!! その子達に何をしたぁッ!!」
〜・〜・〜・〜・〜・〜
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今日も、もう1話更新します。
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