第三幕
第一場 - 広場にて
「なぁ道明寺……」
「ンだよ?」
「隣のクラスのC組にさぁ……ロミオとジュリエットって転校生、来たじゃん」
「ンあ……そういや、来たな」
「二人とも彫り深くて、目力あってさぁ……滅茶苦茶カッケーしカワイイじゃん……」
「ンだよ二階堂? まさかお前、ジュリエットちゃんに惚れたのか!?」
「そ、そんなんじゃ無えよ! そんなんじゃねェけどさぁ」
「ンじゃ、何だよ??」
「そもそも付け入る隙なんてねーし! だってホラ二人とも、転校してきた時から付き合ってっしさぁ……美男美女同士で、メッチャお似合いじゃね?」
「ンぁ……確かに、そうだな」
「だから俺は思ったワケよ……『こいつら、漫画みたいだな』って」
「はぁ?」
「『こいつら、恋愛小説に出てくる登場人物みたいだな』って。『この世界がラブコメだったら、この二人確実に主人公だな』って」
「何言ってんだお前」
「だってよ、名前がまずロミオとジュリエットだぜ? それで二人とも相思相愛で付き合ってるって。そんなんフツーありえなくね?」
「確かに、すごい偶然だな」
「だろ? 明らかに現実離れしてんのよ。こいつらだけ、少女漫画の世界に生きてんのよ」
「いるんだなぁ、現実にそんな奴」
「だから俺思ったワケよ……『この二人を見てれば、もしかしたらラブコメっぽいこと起こるんじゃねえかな』って」
「ラブコメっぽいこと?」
「ああ……例えば『風呂場で偶然出くわす』とか、『着替え中に偶然出くわす』とか」
「確かにアニメとか、良くそんなシーンありそうだけど」
「あと『遅刻しそうになって慌てて食パン咥えて走ってたら、街角であの
「お前の中に、『偶然出くわす』以外のバリエーション無えの?」
「とにかく、俺は二人をこっそり
「オマ……それ、犯罪じゃねえか!」
「だけどよ道明寺、見てくれよこの写真……」
「写真撮ったの!? マジで!?」
「いや、ダメだった……。本当なら、街角で食パン咥えてるジュリエットちゃんが、バッチリ撮れてるハズなんだけどよぉ……」
「全然写ってねえじゃん。誰だこの男?」
「分かんねえ。他にも、ホラ……」
「何か全部、転校生の間にこの男が入ってて、上手い事写ってねえな」
「そうなんだよ! コッチはベストポジションで撮影してるハズなのに……どういうワケか、二人の間に謎の男が入り込んじゃってるんだよ!」
「ホントだ。もはや軽いホラーだな……」
「だから俺も思ったワケよ。『もしかしたらこいつ、幽霊なんじゃねえかな』って」
「はぁ?」
「ホラ、ドラマとか小説で良くあるじゃん。『生きてる人間だと思ってたら、実は死んでました』みたいな。『これもしかして、心霊写真なんじゃねえかな』って」
「何言ってんだお前」
「だってフツー有り得ないじゃん。この男、どんな時にも二人の間に割って入ってんのよ? こうして見ると、完全にホラー写真だよ」
「確かに、偶然にしちゃ出来過ぎだな」
「だから俺、この写真持って近所の寺にお祓いに行ってきたのよ。『もしかしたらこれ、仲睦まじいカップルの間に憑いた、悪霊なんじゃないですか?』って」
「”間”に憑く悪霊って、よう考えたらメッチャレアやな」
「で。写真を見せた瞬間、寺の和尚が震え出してさ……」
「え!? じゃあまさか、本当に……!?」
「いや、結論から言うと、この男は悪霊ではなかった」
「なかったんかい」
「フツーに生きてる男子高校生だった。何ならロミオとジュリエットと一緒にC組に転校してきた奴だった」
「じゃあ何で和尚は震えてたんだよ」
「考えても見ろよ……悪霊でもないのに、カップルの間に挟まれてんだぜ?」
「まぁ、フツーに考えたらどんな状況だよって感じだな」
「田中って名前の男なんだけど……この田中って奴が異常なのさ。和尚も言ってたよ。『むしろ悪霊であってくれ』って。『生身の人間で、こんな状況に耐えられる人間がいるなんて』って」
「確かに……これだけ二人の間を
「だから恐ろしい男なんだよ……この田中って男は……」
「ンあ……名前からして、俺たちの方が断然主人公っぽいんだけどな……」
「あぁ。二階堂に道明寺……何でこの名字で、俺たちモテないんだろうな。これでモテなかったら、もう絶望じゃん。もうモテ要素ないじゃん!」
「落ち着け、そう卑下すんなよ。俺がラブコメの作者だったらさ、二階堂に道明寺なんて名字の奴、ゼッテー脇役にしておかないから。どう考えてもこれからぐいぐい、メイン・ストーリーに絡んでくる名字だから」
「マジで?」
「マジ、マジ」
「じゃあ、俺たちこれからカノジョできるかな!?」
「できる、できる。だから、もう泣くなよ」
「これから……これから放課後友達と駄弁ってたら、教科書を忘れて取りに来た女の子と、偶然出くわしたりするのかな!?」
「ンあ……お前の中に、『偶然出くわす』以外のバリエーション無えの?」
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