第二幕
プロローグ - 序詞
『さぁ〜今年もこの季節がやって参りました、『第二十一回・全国高校生カップルすいか割り選手権』!
大好きなカレシ・カノジョのために、自分が一番上手にすいかを割れる! と自負する高校生たちによる白熱のバトル!! 解説には前回準優勝の、栄光学園高等部一年生・松原ロレンスさんにお越しいただきました。さぁロレンスさん、如何でしょう!? 会場の熱気!!』
「よろしくお願いします。そもそも全国に”カレシ・カノジョのためにすいかを割りたい!”と考えているカップルが、常日頃からこんなにも大勢いることに驚きですね」
『非常に楽しみですね! すいかを割る速度、技術、筋力……そして、愛。
心技体を兼ね備えたすいか割りカレシ(カノジョ)の頂点は、一体誰になるのでしょうか!? 今年も全国から激しい予選を勝ち抜いて来た、七組のカップルが決勝大会に姿を見せました!』
「あれ? 決勝トーナメントは八組で争うんじゃないんですか?」
『実は一組は、開催期間中に破局してしまいまして……』
「あっ……すみません」
『いえ、こちらこそ……気を取り直して、早速大会に参りましょう! すいか割り選手権、熱闘スタートです!』
□□□
『さぁ選手たちの入場です……ここで、今回から初めてこのすいか割り選手権を見るという視聴者の皆さんのために、簡単にルールを説明しておきましょう。本大会は全国三十六局ネットを通じて、生中継されています』
「すごいですね。そこまでする必要があるのか、といった感じですね」
『また会場には五万人を超える観客の皆さんが……今年はお盆の三日間、貸切で球場を貸し切ってあります!』
「正味一時間足らずで終わるイベントに、三日間! 残りの二日間は、一体何をして過ごすんでしょう?」
『制限時間は一組三分間。カップルのどちらか一人が目隠しをして棒を持ち、もう一人は数メートル離れた所定の位置からメガホンで指示を出します。
いかに速く!
正確に!
美しく!
そして愛情込めて!
、すいかを割れるかを競っていただきます。松原さん』
「はい」
『今、過去大会のすいか割りファインプレイ映像が大画面で流れていますが……松原さんも映っていますね』
「こうして見ると、ちょっと恥ずかしいですね」
『松原さんは、本大会注目のカップルがいるそうですね?』
「えぇ。同じクラスの、ロミオ君とジュリエットちゃん……日本に来てまだ間もないんですけど、いきなり全国大会に出場したんですよ」
『それはすごい!』
《実況の、斎藤さん?》
『はい!』
《私、レポーターの藤木と申します。アルプススタンドからの情報ですが、何でもロミオ&ジュリエットペアのお二人は、友人の田中君をすいかに見立てて毎晩家ですいか割りの練習をしていたそうです》
『なるほど、藤木さんありがとうございます! 藤木さんには実際に会場の中から、選手たちの様々なレポートをしてもらう予定です』
「くっ、羨ましい……。本当だったら、私が間に入って……」
『え? 何か言いましたか? ロレンスさん』
「いえ、何でも……とにかく二人には、精一杯頑張って欲しいと思います」
□□□
『……おォーッとここでぇ! 群馬代表、織姫&彦星ペアが、絶妙なコントロールですいかを星型に叩き割ったァ!!』
「これは芸術点高いですね」
『織姫&彦星ペア、ここで一気にトップに躍り出ます! さぁ、その隣のブースでは……ロミオ&ジュリエットペア!』
「二人とも、頑張れ!」
『この二人、練習ではすいかをハート型に割る事に成功した、と言う話でしたが……』
「それってつまり、田中君の頭をハート型にしたんですかね?」
『本日は、竹刀を握っているジュリエット選手がやや緊張しているか、足取りが覚束ない!』
「落ち着いて、落ち着いて……」
『ロミオ選手が必死に場所を教えているが……今ようやく、竹刀を振り上げました。動きに迷いが見られます……割れたすいかは、残念! ハート型にはなりませんでした』
「惜しかったですね! あともうちょっと、思い切りが足りなかったかもしれません」
『目隠しを外したジュリエット選手、悔しそうな表情! 唇を噛み締めております。インタビューしてみましょう。藤木さん!?』
《はい! こちら現場の藤木です。まずジュリエット選手、お疲れ様でした! 今のお気持ちをどうぞ!》
「はい。あの、一所懸命頑張ったんですけど……こんな結果になって、残念です」
《ロミオさんは如何ですか?》
「僕にとってはジュリエットが一番なので……どんな形であれ、すいかが割れれば良いと思っていました」
《お熱いですね! では、その間にいる田中さん。本大会如何でしたか?》
「いや俺に聞くなよ! 俺全く関係ねえじゃん」
《頭は大丈夫ですか?》
「まだ痛いよ! 何だよ、『頭は大丈夫ですか?』って。その聞き方だと、俺がどうかしちゃったみたいじゃんか。どうかしてるのはこの大会だよ!」
《以上、現場から藤木でした!》
「聞けよ!」
『藤木さん、ありがとうございました! それでは引き続き、大会の様子をご覧ください!』
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