第3話 紫電の人狼3

 運動公園の近くの電信柱の上に立ち公園の入り口を眺める。入り口は警察が用意したのだろう照明で照らされ、通行止めのテープが張られ数名の警官が警護にあたっていた。

「ここも見張りか……」

「別の入り口は?駐車場の方」

 沢村に言われて駐車場近くまで近づくが、結果は同じだった。

「ここもダメか……」

 明かりの届かないぎりぎりの位置で沢村をおろし、腕を回しながら獣化を解かずにつぶやく乾。沢村もどこか入れる場所がないか考える。

「体育館の屋上からはどうだろう」

「高すぎる。オレ一人ならなんとかなっても、お前が落下の衝撃で怪我をする」

「市営プールからは?」

「遠すぎる。そこまで速く走れない」

「それじゃ、野球場は?遠すぎず高すぎない所にある」

「野球場?ここにあったか?」

「ちょっと目立たないところにあるからね、場所はたしか……」

 場所を聞き、ふたたび沢村を背負い野球場の近くまで跳ぶ。

「こんなところがあったのか……」

「サッカーとか他の陸上競技が中心だからね、うちの市のスポーツは。わからなくてもしょうがないかも」

 沢村の言う通り、野球場と定めている場所は運動公園の全体から見てやや端にあり、あまり広くとってはいないようだった。端にあるおかげだからか人員を割く余裕がないのだろう、外野側から運動公園の中心へ行けそうだ。


「……そうだ」

 運動公園の中心へ向かう直前、乾がふと思い出したようにつぶやく。

「お前、これ使えるか?」

 言ってジャージのポケットから取り出したのは沢村には見慣れないものだった。いや、ある意味見慣れてはいるがそれはここにあっていいものではない。

「これって、拳銃……!?」

 ゲームでしか見たことのない物体に思わず大声を出しそうになり、慌てて声の音量を下げる。

「あいつの部屋を漁ってたら机の引き出しに入ってた。撃ち方とかわかるか?」

「わかるわけないしひとのへやをあさらないというかいつとったのこれ」

「お前を起こす少し前」

 一息で出した疑問を一言で返される。なぜ部屋にあったのか、護身用なのか。

「……とりあえず持っとくけど、投げることしかできないよ」

 ため息をつき、腰の横になるようベルトではさむ。暴発しないか心配だ。……大丈夫だよね?


 運動公園の中心へと向かいはじめる。公園内でも灯りがあるとはいえ、周辺は暗いところが多い。沢村は周囲を気にするも乾のあとを追うのが精一杯だ。乾もそれに気づいているようで、離れすぎないよう歩幅を遅らせたり時折立ち止まっては沢村が来れるようにしてくれている。

「……乾のお父さん、どこにいるんだろ」

「……さぁな。広すぎて匂いを追えない」

 件の電気の匂いだろう。こればかりは乾に頼るしかない。

「それにしても、暗いのによく歩けるね」

 暗闇に少しだけ目が慣れてきた沢村が先に歩く乾に話しかける。

「この姿だと夜目がきくからな。それに匂いも……」

 言いかけて何かに気づいたように黙りこむ。そして沢村に振り返り怒声をあげた。

「伏せろっ!」

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