Glorious Health side-Miori- 6



 実家へ帰るなり、お風呂場に転がり込んでシャワーを浴びた。

 どうしようもない眠気で、座っただけで眠ってしまいそうだった。荷物も部屋まで運ぶ余裕がなかったから、そのまま一緒に脱衣所へと持ってきた。

 娘が急に戻ってきたにも関わらず、両親は相変わらず何も聞いてこない。

 ただ、お母さんに「おかえり」と言われて、なんだか胸がいっぱいで涙が溢れそうだった。


「ベッド、シーツとかは洗ってあるからね」

「うん、ありがとう」


 荷物を抱えて、ふらふらと二階にある自室へと向かう。

 髪も生乾きだし、顔も化粧水を付けただけだ。

 高野さんだったら、こんな状態で寝るなんてありえないだろう。

 高野さんじゃなくても、かもしれない。

 自室のドアを開けると、時の止まったままの部屋が出迎えてくれた。

 二年同棲していた間も、近いので頻繁に実家には帰っていた。

 母はいつでも使えるようにと私の部屋は変わらずそのままにしてくれていたようだ。どこに何があるのか、配置の記憶も鮮明だ。

 今朝持ってきたダンボールがそのまま、部屋の入り口脇に重ねてあるのが視界に入った。

 明日はちゃんと片付けよう。


「つかれたぁ……」


 さすがにもう限界だった。シャワーを出来ただけ褒めたいくらいだ。寝ろ、と警告の偏頭痛までし始める。

 ベッドに転がって、忙しかった今日を省みる。

 今日は、嫌な夢も見ないで深い眠りにつけそうだ。

 目蓋が閉じる……前に、はっと思い出して上体を起こした。


 ――明日葉ちゃんご所望のレシピ!


 とはいえもう日付が変わろうとしているし、体力も限界だ。

 とても、入り口に積んであるダンボールからは引っ張りだせる気がしない。

 部屋の壁一面を埋めている本棚を眺める。

 実家には小学生の頃から集めていた本が遠慮なく置いてある。

 なにか、お弁当作りの参考になるような――

 探している途中、本に紛れてリングノートが一冊挟まっているのに気付いた。


 ――なんだっけ、これ。


 手にとって、開いてみた。

 そこには自分の筆跡で材料や作り方が細かく書いてある。

 記憶を辿るように、一ページ、一ページ捲る。

 すると、レモネードのページに挟まっていた、何かがひらりと落ちてきた。

 屈んで拾いあげる。





 四つ葉のクローバーだった。










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