水色の金魚
左利きの宇宙人
らしくがステキ
」
「どうして生きているんだろう」
そう思ったこと一度はあるんじゃない?
人間だものね。
始めに言って置きたいのだけれど
私は金魚よ 残念ながら人間じゃないわ
これから話すのはファンタジーね
信じるか信じないかはあなた次第として置きましょうか、
とっても不思議な体験なの
私自身も疑心暗鬼ね
これは私が眠って数年経ったある日のこと
ある記憶を思い出したの
そうね
私は自由がどんなものか見たくて
そこから飛んだわでも見えるものは毎日一緒きっと同じ所に置かれてるのね
見えるのは可愛いテレビに可愛い時計それにキラキラ煌めく石かしら
まぁそんなところね 今思えばそれは不自由で自由だったのかもしれないわね
私の主人は見た目は男の子なのだけど中身はそこら辺の女の子より女の子ね
彼と出会ったのは
暑い暑い夏の日
見る景色見る景色同じで飽き飽きしてたの
周りにいる仲間と今日は明日はって競ってたわ
何をってそれは自由になること
ここはとっても不自由なの
ここに10年もいるの
長過ぎるもう人生の半分以上いるのよ
仲間たちは次々と誰かの手に渡ったわ
縁日の屋台って華やかに見えて結構地味よ
景品なんだから可哀想ね
なんで私が売れ残ってるかって
その理由はひとつ私が水色の金魚だからよ
見る子見る子不気味がったわ
珍しいからかしらね
今の子は周りと違うことに違和感を感じるのね
だから赤い子の方が良いみたいね
私がどんなにアピールしても
そんな願いも届かないみたいよ
でも彼は違ったわ
少し年老いた黒い背広を着た男性と歩いていた彼はその人を「爺や」と呼んでいたわそして私を見るなり
「きれい」って言ったの
「珍し子がいるもんだわ」そう思ったわ
仲間たちはそれはそれは羨ましがったわ
「お前が1番最後だから安心だ」なんて
いつも馬鹿にしていたのにそんな私が売れたからね
やってやったわみんなにヒレを目一杯振ってお別れしたわ
凄く嬉しかったのと同時にやっと自由になれたそう思ったの
それから彼に飼われ始めたわ
いやちょっと待って彼は辞めるわね
そうねキミとでもして置きましょうか
彼は彼って呼ばれたくないと思うから
私にも名前をつけてくれたの
シンデレラがスキなのと水色だから“ブルーノ”ですって
まぁなんてネーミングセンスなのかしら
キミらしくて気に入っているのだけど
それから何日かしたある日
キミはとっても嬉しそうに水色のドレスを着て見せてくれたの
爺やが誕生日に買ってくれたみたい
まるで毎日キミが見ているシンデレラみたいだったわ
キミは「お揃いだね」なんて言ってくれたのよ
嫌いだった自分の色を初めて好きになれた瞬間だったわ
でも次の瞬間キミの顔色は変わったの
お父さんね 小さい頃にお母さんを亡くしたキミはお父さんに育てられたのよ
この立派な屋敷でね
たまにしか帰ってこないくせに
でもお偉いさんだってことはこの私でも分かったわ
そしてお父さんは開口一番こう言ったの
「お前は男の子なんだからそんな格好するんじゃない」って
私は「あら案外この世界も不自由なのね」
そう思っちゃったの
人間なんて贅沢な生き物だとばかり思っていたわ
お父さんが部屋から出て行って
もう溢れる寸前まで溜め込んだ瞳でキミは私に聞いたわね
「どうして、僕は男の子なの?
どうして、好きなものは全部女の子のものなの?」
その問いに答えてあげられないことがとても悔しくて仕方なかったわ
それと同時に降ってきたキミの涙がしょっぱかったのを覚えてる
出来ればこんなことを言ってあげたかったわね
「キミはキミらしく生きていいのよ」って
男の子だとか女の子だとか
気にしなくていいの
キミらしくって
この世界はもっともっと自由でいいのよ
シンデレラのドレスとっても似合ってるわ
素敵よって
私はいつだってキミの味方よ
ふと思ったの
私も人間だったらどうだったのかしらって
例えばキミとお出かけしたり、笑ったり、もちろん相談相手になってちゃんと答えてあげられたかもしれないわね
喋れないし、陸では呼吸もできない、ヒレで歩けないし、生きてる世界が違うと実感するわ
ある時見せてくれた人魚姫の気持ちね
ただ浮かんでるだけの金魚
でも毎日キミは話しかけてきてくれたわね
とっても嬉しかったわ
縁日の屋台にいる時より遥かにずっと
ここからの景色は素敵だったわ
飛び跳ねて見えた景色と今でも同じだけど
なんだか不思議と安心するわ
あと側にはキミがいることも
そしてキミはとっても強かったわね
ちょっとたった時かしら
キミは小学生になったのランドセルの色
少し心配だったのよ
黒が男の子で赤が女の子なんて決まりないのにひと昔前はそんな差別が普通だったからねでも水色のランドセルを
誇りを持って背負っていたわ
とても色が綺麗でキミにぴったりね
水面を叩いて水しぶきを上げて喜びを表したわそしたらキミは笑顔で
「この色かわいいでしょ、また君とお揃いだね」そう言ってくれたわね
この時また思ったの
きっとこれからキミは大人になっていく
私のことを忘れちゃうぐらいに成長するわ
でも私はキミをずっと覚えてる
私もそろそろだと思うのよ
キミに救ってもらったこととても感謝してる
このままずっと屋台で売られて売れ残って死を待つだけの金魚に夢を与えてくれた
キミに出会って見えなかった世界が広がったし自由か不自由かは自分次第でなんとかなることも教えてもらったわ
そうね最後に1つだけ言えるのなら
「ありがとう」かしら
それ以外見当たらないわ大事で大切で大好きなキミと過ごせた人生短かったけれど楽しかったわとても面白かったし私は人生を謳歌できたキミのおかげで本当にありがとう 愛してるわ
あらら
泣きながらいやもう号泣ね しょっぱくて仕方がないわ
そんなに愛されてたなんて知らなかったわ
最後まで見届けてくれてありがとう
また来世があるならキミに出会いたいわ
そして私は眠りについた
キミは私に立派なお墓まで作ってくれて花まで供えてくれたわねそれも水色の綺麗な花
こんな人間この世にいるのかしらってぐらいに優しくて人想いなキミはきっと人間じゃなくて天使ねなんてそんなキミにこれからたくさんの幸せが訪れますように
”thank you my best family i love you”
そしてキミがキミらしくキミで
これからも生きていけますように
ここまで思い出した時私は輪廻転生したのよ
そしてまた水色なの
赤じゃなくてよかったわ
私の大好きなこの色しかもちゃんと飼われてるわ
誰に飼われてるかって?
それは秘密よ
またの機会にお話しましょう
あ、そうだ忘れてた「どうして生きてるんだろう」なんて考えてるあなた
それは仕方ないこと人間いや生き物全般生きていれば悩みなんて尽きないそんなもんなの悩みがないことすら悩みなんだからでもね、
1人じゃないと気付いた時人は強くなれるし、もっと自由になれるわ
だからもっと周りを見てもいいのかもしれない
時には立ち止まって泣いたっていいし、走り続ける必要はないわ
少なくとも私はそう思う
だから自分らしくが大切ね
水色の金魚 左利きの宇宙人 @saakii
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