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「うん、全て認めるわ。私、Tシャツ忘れちゃったのよ。あれだけ注意していたはずなのに、なんで忘れちゃったんだろうね。でも、なんで私たち、こんなTシャツ一枚でビクビクしなきゃならないんだろう」

「Tシャツをみんなで着て仲良しだなんて、軋轢が生じるだけだってわかんないのかな。自分と他人が同じ気持ちでいると思い込むのは、傲慢だよ」

 今まで黙って聞いていた惣田さんがボソッと言った。

「ひとつだけ、この事件でわかんないことがあるのよ。

 惣田さん、あなた、なんで岡田さんに手を貸したの? それも惣田さんのイメージに合わないよ」

 私にもそれだけはわからなかった。さっきまで気を張っていたのは、真相がバレてしまう危険より、惣田さんの行動が理解できなかったことが原因だった。

惣田さんはゆっくり言った。

「網野さんはロッカーを開けたんでしょう? それならわかると思うんだけど。ロッカーを開けてみてよ」

網野さんはロッカーを開ける。

「よくご覧よ。Tシャツがないでしょう。私も持ってないんだよ」

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天網恢々 ピクリン酸 @picric_acid

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