6

 これはヘマしたってやつだ。ヤスリだなんて。見ればわかるものだと思ってしまうのは、知っていることによる先入観なのか。

 でも、証拠にもならないようなことだ。平常心を崩すべきではない。素数を数えて落ち着くんだ。

 私は一体どういう立ち位置にあるべきなのだろう。探したって見つからないことはわかっているし、クラス委員が熱心に探し回ったら真実が露呈してしまうかもしれない。かと言ってあまりにも非協力的では怪しまれる。私は自分があまり器用でないことに気づき始めていた。

 立ち位置といえば、惣田さんこそどうなのだろう。惣田さんがこの件に関わっている理由はなんだろう。理由なくここまでセッティングするような人ではあるまい。いずれ私に何か要求するのではないか、それが気がかりでならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る