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 人気のない体育館の陰で待ち合わせだった。渡り廊下を通って私がその場所に行くと、すでに惣田さんは待っていた。

「ごめんね、ちょっと遅くなって」

「遅くはないよ、私が早かったんだ。時計見ればわかるだろう?」

 今朝から数回話してみてわかったことは、惣田さんは社交辞令を社交辞令として受け取れない人だということだ。惣田さんには簡潔なやりとりを好む傾向があり、今回もやはりすぐ本題に入った。

「クラス委員の人は来た?」

「来てないよ。ロッカーを物色しているみたい」

「先にロッカーに行ったのね。案外本気で探す気なのかも知れないな」

「本気で探されたらバレないかな」

「ロッカー探しただけじゃわからないと思うよ。シンプルなタネこそバレにくいんだ。

 問題は岡田さんだね。何か聞かれた時に無難に切り返せるかどうか」

「そう、それ。もしかしたらってこともあるから、鍵を貸してくれない?」

「それは出来ないよ。この鍵は他のいくつかの錠のマスターキーになってるからね。ほかの錠を開けることができる鍵を貸すのはちょっとね。まあ、そこは多分突かれることはないだろうし、なんとか切り抜けてよ」

「それは、うまくいけばいいけど……。もしもってことも……」

「んー、言いたくないんだけどさ、この件に関して、私とあなたは対等じゃないはずだよ?」

そうなのだ。私はそこが疑問なのだ。相手に利点のない取引は不気味でしょうがない。

「じゃあなんで、なんでこの件に関わってるの? 私に何をさせたいの?」

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