第4話

スマホに表示された魔物を倒すため、僕は、コンビニの駐車場に停めた車の中にいた。運転席にはタイトスカートを履いたスーツ姿のアレイアが、退屈そうに窓の外を眺めている。


夏の雨はスコールのように強く地面を打ち、深夜2時という時間も相まって人影はほとんどない。僕が今いるコンビニは、元々いた世界の近所にあるいきつけの場所だ。


僕は、眠い目をこすりながら、コンビニの入り口をじっと見つめる。ワイパーを動かしていなければ視界がなくなるほどの雨。戻ってきたという感慨よりも、これからしなければならないノルマが、僕の胸に重くのしかかっていた。


6時間ほど前、ガゼル王から話を聞き、これからのことをアレイアに相談しながら城の中を歩いていた。討伐しなければ魔物の名前、武器の入手方法など、僕の中では確認事項は山盛りだった。しかしアレイアは、そんな細かい事は必要ないといわんばかりに、無言で僕の少し前を歩き続けていた。


流石にしびれを切らし、前を行くアレイアの肩を掴み引き止める。


「おい、いい加減にしてくれ! こっちは命がかかってるんだぞ?」


荒っぽい口調で問い詰める。


「もう着きますから。今回の討伐対象である『トロル』のところまで。」

「今着いたところで倒し方もなにもわかったものじゃない! 僕にどうしろっていうんだ?」

「ですから、行けばわかります。落ち着いてください、サトウ様。アレイアにお任せください。」


猫のような瞳で下から僕を見上げながら、また毎度のように暖かく僕の手を両手で包み込む。これをやられると、それ以上何かしようという気にならなくなってしまう。もう、なるようになれ、だ。どうせ一度死んだ命。これ以上酷いことにはならないはずだ。


「さあ、着きました。この扉を開けてくださいませ、サトウ様。」


アレイアが指差したのは、白の中庭にある大きな扉だった。ここを通れば、トロルのところまでたどり着けるということなのか。


「時間があまりありません。急いでください。」


そう急かされ、考える間も無く僕は扉を開いた。光があふれ、何も見えなくなる。意識がとおのく。




次に目を開けた時、眼前には見慣れた光景が広がっていた。信じられなかった。


「どうですか、ご感想は?」


アレイアが意地悪そうな笑顔で僕の方を向いている。感想も何も、意味がわからない。だって、今いるのは、紛れもなく僕の部屋のアパートだったのだから。



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