第384話 最終確認と後輩ちゃん

お待たせしました。

ラブコメの短編小説をいくつか書きましたので、ぜひそちらもお読みください。 

ではどうぞ!


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 リビングに集まった俺と後輩ちゃんと桜先生。各々キャリーケースを広げている。中に入っているのは衣服や洗面用具など。修学旅行へ持っていく荷物だ。


 今、何故広げているのかというと、旅行前の最終確認をするためだ。全員で最後に持ち物チェック。忘れ物をしたら大変だからな。まあ、最悪の場合は誰かから借りる方法もあるけど……。


 明日、一足先に荷物をトラックで送るらしく、朝早くからクラスごとに積み込み作業があるらしい。



「では、確認していきましょー!」


「おぉー!」


「お、おぅ」



 後輩ちゃんも桜先生もテンションが高いなぁ。修学旅行が近いからか?


 いや、いつもこんなにテンションが高い気がする。元気いっぱいで天真爛漫だ。そういうところも可愛い。


 修学旅行のしおりを手に持った美少女と美女。ふんす、と得意げに鼻息荒く、胸を張ってドヤ顔をしているのは何故だろう。



「では先輩! 確認をお願いします!」


「お姉ちゃんのもお願いします、弟くん!」


「……いや、なんで俺が?」


「「 家事能力皆無の私たちが触ったら爆発するけどそれでもいい? 」」


「……絶対に触らないでくださいお願いします」



 そうだったぁ。二人は家事能力皆無。服は散乱させ、ポイズンクッキングを始める魔界の主、魔王だった。


 魔王二人に触らせてしまったら、折角キレイに詰めたバックの中身が凄いことになってしまう。


 爆発はしないと思うけど、爆発後みたいに洋服やタオルが散乱する。荷物がごちゃごちゃに混ざって無駄な労力が必要になるだろう。


 …………本当に爆発しないよね? 不安だ。



「確認は先輩にお任せします。私たちはしおりの持ち物の欄にチェックを入れるので!」


「みんなで確認すれば三重チェック! 二重三重チェックは社会人の基本! 大事なことよ!」


「そうだな。後輩ちゃん、俺のしおりにもチェックを入れてくれ」


「ブ・ラジャー!」



 一言多いぞ、後輩ちゃん。どこかの幼稚園児みたいじゃないか。


 さりげない下ネタは止めてください。貴女は現役JKの淑女でしょうが。



「ではまず、タオル! 女性陣にはちょっと多め!」


「「 タオルよーし! 」」


「体育服の夏用冬用! 姉さんにはスポーツ用ジャージ!」


「「 チェックチェック! 」」


「下着類!」


「オーケーです。ほうほう。先輩にお任せしましたが、こういうのを選びましたか」


「なるほどぉ~。弟くんはこういうのが好きなのね! 参考になりました。意外と過激ね!」


「……姉さんの下着はほとんどが過激なやつでしょうが! 残念ながら、タンスの一番近いほうから適当に選びました。…………女の子の日は大丈夫か?」


「たぶん?」


「時々、予想外のタイミングで来るのが大変なのよねぇ」



 二人はお腹を触って、う~ん、と悩み始めた。男の俺にはわからない感覚。そこは女性陣に任せることしかできない。



「まあ、生理用品を入れたバッグにそれ用の下着も入っていますから」


「手荷物用と分けてるから大丈夫よ!」


「何故だろう。姉さんの用意が良い。いつもはポンコツなのに」


「弟くん酷い! 何年女の子の日と付き合っていると思ってるのよ……。もう20年近いのよ! あぁ……20年か……」



 ヤバい。なんか桜先生の地雷を踏み抜いてしまった。


 どよ~ん、と落ち込む桜先生。今年30歳になった桜先生は、意外と自分の年齢を気にしている。年齢=恋人無し、なのが不思議だ。絶世の美女なのに。



「大丈夫だよ、お姉ちゃん! 先輩が貰ってくれるから!」


「そうよね! 次はお姉ちゃんの番よね! 妹ちゃん、お姉ちゃんは頑張るわ~!」



 何を頑張るのか、俺は詳しく聞かない。深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ。


 気を取り直して、持ち物チェックを続けていこう。



「ハンカチとティッシュ!」


「ほい!」


「靴下!」


「あるわよ~!」


「洗面用具! スキンケア用品!」


「えーっと……大丈夫です!」


「お姉ちゃんも確認したわ!」



 その後も順調に確認していく。まあ、このチェックも三度目くらいだから、揃っているのはわかっているんだが。念のためというやつだ。



「全部確認が終わりましたー!」


「手荷物のほうもそろってるわよ!」


「では、最後にバッグを閉じて……これで完了!」



 あとは、明日の朝、トラックに詰め込めば全て終わり。運転手さんに任せて、俺たちはリュックだけを持って当日に移動すればいい。



「バッグの鍵は開けておいてね。毎年必ず先生たちの注意を無視して鍵を閉める人がいるから。そういう人に限って鍵を忘れるのよ」



 おっ、なんか先生らしい。桜先生は現役の体育教師なんだが。


 まだ確認していないものってあったかな?


 ふと、俺の視界に入ったのは財布だった。財布は確認した。でも、中身は確認していなかったな。財布だけ持っていって、肝心の中身がなかったら何もできない。悲惨な修学旅行になるだろう。



「後輩ちゃん、お財布の中身も大丈夫か?」


「ちょっと待ってくださいね…………ちゃんと入っていますよー。お金が無かったらお土産も買えませんからね」


「姉さんは?」


「お姉ちゃんも大丈夫! 免許証だって入ってる。もし足りなかったらお姉ちゃんに言ってね!」



 いやいや、ダメでしょ。一応、外では教師と生徒。そこんところわかってる?


 この笑顔は自覚してなさそうだなぁ。やっぱりポンコツで残念。学校ではクールなのに。



「そして、じゃじゃーん! コレもちゃんと持ってるわよ!」


「私も持ってるー!」



 スチャっと懐から小さなケースを取り出す美人姉妹。さりげなくウィンクするのが綺麗で可愛い。とても似合っている。そこらのアイドルや女優も霞むほどの美しさ。


 二人が持っているのは缶の名刺入れ? 何故そんなものが必要なのだろう?



「何時如何なる時も対応できるように持っておかないと!」


「お姉ちゃんは別に要らないのよ。でも、一応持っておかないと!」


「おい。まさか中身は……!」


「「 もちろん避妊具! 」」



 堂々とドヤ顔で得意げに言うことじゃないと思うんですけど……。


 財布に入れないのは流石だ。財布に入れるのはとても危ないらしいから、名刺入れのようなケースに入れるのが良いらしい、というのは性教育講演会で聞いた。


 だが、修学旅行には必要ないと思う。



「カップルの必需品です」


「姉弟の必需品よ」


「いや、確かに必需品だけど、修学旅行には絶対に必要ないからな。18禁小説の読みすぎじゃないか?」


「私も必要ないと思いますけどね。ただ、持ち歩く癖をつけておかないと」


「お姉ちゃんは大人の女性だから!」


「……まあ、うん。好きにしてくれ」



 持っていったとしても、バレなければ問題ない。見た目は普通にただのケースだから。


 確かに姉弟やカップルの必需品。俺は……要らないな。絶対に必要ないから。無駄な荷物は必要ありません。それよりもカイロを持ち歩いたほうが有意義だ。天気予報によると寒いらしいから。


 荷物の確認も終わった。忘れ物はないはず。これだけ確認したんだから。


 修学旅行当日まであと数日。楽しみだ!















 …………って、よく考えたら避妊具は姉弟の必需品じゃないよな!?

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