第348話 クリームと後輩ちゃん
「二学期も無事に終わったことを祝して~!」
俺は後輩ちゃんと桜先生に目配せをして、一斉に声をあげる。
「「「 かんぱー~い! 」」」
カンカンッとコップがぶつかる音が響き、ゴクリと一口飲む。コップに入っているのは、普通に温かいお茶。今から夕食なのにジュースを飲むのはちょっと……ということでお茶になりました。ジュースは食後のお楽しみだ。
三人でこたつに入ってぬくぬくとしつつ、行儀よく手を合わせた。
「「「 いただきます 」」」
箸を持って一口パクリ。うん、美味しい。今日はピリ辛風の煮込みうどんにしてみました。ピリッとした辛さが身体の中から温めてくれる。
後輩ちゃんと桜先生は、幸せそうにハフハフしながら食べている。感想を言えないくらい夢中になっているらしい。
その顔を見ただけで作った甲斐があった。よく噛んで食べてくださいね。
「はむはむ、もぐもぐ」
「あちあち、ふぅーふぅー」
熱いものを食べているから暑くなったのだろう。額や首に透明な汗が浮かんでいる。二人は無言で服を脱ぎだした。
後輩ちゃんはサイズが合っていないダブダブなTシャツ姿だ。上手く着こなしていて可愛い。
そして、桜先生は白シャツ姿。ボタンは上二つを外し、胸の谷間が見え始めている。そして、胸が窮屈そう。あまりの大きさでボタンが弾け飛びそうだ。ボタンとボタンの隙間から、ピンク色のブラが覗いている。
…………んっ? 二人が来ている服はどこかで見たことがあるんだが。
「一つ質問があるんだが?」
「
「
「今着ている服って俺の服じゃないか?」
モグモグして、ゴクリと艶めかしく呑み込んだ二人は、何故か得意げに胸を張る。桜先生のシャツのボタンが!?
「ふっふっふ。とうとう気づいてしまいましたか」
「そうよ! この服は弟くんが着ていたものよ!」
「何故着てるんだ?」
「深い理由はありませんね。先輩の服を時々拝借していましたし、今回この服が一番近くにあったので」
「そうそう。お姉ちゃんの場合は洗濯籠だけど」
「姉さんが着てるのは、俺が今日着てたやつかよ! 汚れてるから今すぐ脱げ!」
後輩ちゃんもしれっと暴露したよな。時々俺の服を着ていたって? だから身に覚えがない服が洗濯されることがあったのか。
後輩ちゃんは許そう。でも、桜先生はダメだ。汚れた奴を着るなんていけません! 小さい頃習ったでしょ! 今すぐ脱ぎなさい!
「弟くんがお姉ちゃんの下着姿を見たいってぇ~! いや~ん。えっち!」
「……」
「な、何か反応して!」
そう言われても、もう下着が丸見えじゃん。透けてるし、谷間も見えてるし、ボタンの隙間からもバッチリと……。
この状況に毒されて慣れてしまった自分がいる。
「俺のシャツは臭くないか?」
「えっ? とてもいい香りがするけど。くんくん。弟くんの香りがするわよ。くんくん、くんくんくんくん」
匂いを嗅ぎすぎだよ! 後輩ちゃんもフラフラと近寄っていこうとするな!
この姉妹はもう手遅れらしい。ポンコツで残念だ。そこが可愛いんだけど。
「お姉ちゃんは超絶なブラコンなのであ~る! どやぁ~! 超絶なシスコンでもあるのだぁ~! どやぁ~!」
褒めて褒めて、という表情の桜先生。お姉ちゃん凄~い、と囃し立てる後輩ちゃん。調子に乗った桜先生は更に得意げに胸を張った。
「ドヤ顔するところじゃないし。一応姉さんは教師でしょうが!」
「家では弟くんと妹ちゃんのお姉ちゃんなの! 家に仕事は持ち込まない主義なの!」
うん、もういいや。うどんが冷える前に食べてしまおう。
桜先生からシャツを脱がせるのを諦めた。脱がせる元気もない。あぁ……煮込みうどんが美味しい。二人のポンコツ残念さがどうでもよくなるな。
暑いからなのか、俺にアピールするためか、もう一つボタンを外して胸の谷間が露わになった桜先生をぼけーっと眺めながら食べ続ける。
後輩ちゃんも対抗しなくていいから。お行儀よく食べましょう。
煮込みうどんを汗をかきながら食べ終わった後、今日は時々のデザートタイムだ。ジュースを注ぎ、二学期が終了したということで、ちょっと豪華なデザートを冷蔵庫から取り出した。
「じゃじゃーん! ちょっとお高めのクリームパフ! 和製英語でシュークリームです!」
「えっ? おっぱいパフパフ?」
「……後輩ちゃんやったぞ! 姉さんは食べないそうだ。半分こしよう」
「やったー! わーい!」
「ご、ごめんなさ~い! 冗談だから! 下ネタを言って申し訳ございませんでしたぁ~! お願いだからお姉ちゃんにもちょうだ~い!」
涙目で縋りついてきた姉さんを一分ほど放置し、本格的に泣きはじめようとしたところで許してあげた。グスグスと軽く鼻をすすりながら、桜先生は大人しくなった。
クリームパフのお皿が目の前に来ると、パァッ顔を輝かせた。何という変わりよう。
「自分たちへのご褒美です。姉さんはまだ仕事があるけど」
「それはお願いだから言わないで。今だけは考えたくないの」
連呼してあげようかと思ったが、止めておいた。折角のデザートだ。幸せな気分で味わいたい。桜先生もそう思っているはずだ。
「「「 いっただっきまーす 」」」
まず最初にパクリと食べたのは桜先生。齧った瞬間、中からクリームが飛び出して、鼻の頭に付着する。ほぇっ、とキョトンとしている先生の顔は間抜けで可愛かった。
「姉さんじっとしてて」
身を乗り出して、姉さんの鼻からクリームを拭って指を舐める。うん、甘い。
「あわわ……弟くんが……あわわわわ!」
何故か顔を真っ赤にした桜先生は、小さく丸まって顔を伏せた。どうやら、基準がわからない桜先生の羞恥のラインを超えたらしい。
「あはは! お姉ちゃんの鼻にクリームが! うふふ……はむっ! うっ!?」
あ~あ。後輩ちゃんも似たようなことが起きてしまった。人のことを笑っているから。口の周りに白いひげのようにクリームが付着している。
一瞬自分の指で拭おうとした後輩ちゃんは、ピタリと動きを止めて、スススッと無言で俺の隣に移動してきた。
「んっ!」
俺が拭えってことか。でも、ただ拭うだけじゃ面白くないよな。俺と後輩ちゃんは彼氏と彼女。なら、こうやっても大丈夫だろう。
指で拭うと思わせて、俺は顔を近づけキスをして舐めとる。うん、甘くておいしい。後輩ちゃん、美味しかったぞ。ごちそうさま。
「はぅっ!? あわわわわ……」
後輩ちゃんはポフンと頭から蒸気を噴き出して、爆発的に顔を赤らめると、スススッと無言で自分の席に戻った。恥ずかしそうにチラチラと視線を向けながら、静かにクリームパフをハムハムし始める。
珍しく、俺は後輩ちゃんに勝ったらしい。ちょっといい気分。
優越感に浸って二人を眺めていたせいで、俺は手元に集中していなかった。
クリームパフを齧った瞬間、クリームが噴き出す。俺も人のことが言えないな。
自分で拭おうとした瞬間、ガシッと両手が掴まれた。
「えっ? 後輩ちゃん? 姉さん?」
瞬間移動でもしたかのように、二人が隣に来ていた。なんか瞳が怖い、草食動物を狙う肉食動物のようだ。艶めかしくチロリと唇を舐めている。
えっ? 食べられちゃうの?
「せんぱぁ~い。大人しくしていてくださいね~」
「お姉ちゃんと妹ちゃんがちゃんと綺麗にしてあげるから!」
えっ? えぇっ? えぇぇえええええええええええええええええ!?
口の周りにクリームを付着させた俺は、超絶可愛い彼女と絶世の美女の姉によって、キレイキレイにされましたとさ。
その後、満足そうに、そして名残惜しそうに唇を舐めている女性二人と、背中を丸めて恥ずかしそうに俯きながら黙々と食べる一人の男の姿があったという。
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あれは忘れもしない中学生の頃……
少年だった作者のクラスに女性の教育実習生が来ました。
素晴らしいものをお持ちの実習生。
弾け飛びそうなシャツのボタンの隙間から、ピンクのブラが。
そう、実習生はシャツの下には下着しかつけていなかったのです。
お肌も丸見えでしたし、透け透けでした。
目の前に来た実習生から目を逸らしてしまった当時の作者はまだ純真でした……。
何が言いたいのかというと、100万文字突破しました!
いつもありがとうございます!
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