第320話 しりとりと後輩ちゃん
「先輩! お姉ちゃん! 『しりとり』をしましょう!」
ゆっくりまったりしていると、後輩ちゃんが突然立ち上がって宣言した。
出た。後輩ちゃんお得意の突然の思い付き。得意げに仁王立ちして、胸を張っている。平均より大きな胸がポヨンと跳ねた。
ふむ。しりとりか。のんびりタイム中だったからいいかもしれないな。最近やってないし。大きくなると、しりとりで遊ばなくなるからなぁ。最後に遊んだのはいつだろう?
桜先生がノリノリで手を挙げる。同時に、大きな胸がバインと跳ねる。
「はいはーい! お姉ちゃんは賛成!」
「はい、お姉ちゃんは賛成ですね! ではでは先輩は?」
「俺もいいぞ。楽しそうだし」
「決定でぇーす!」
楽しそうな後輩ちゃんが座った。セミロングの髪がファサァッと揺れる。
俺たち三人は向き合って座り、しりとりを始める。
なんか、後輩ちゃんと桜先生がやる気に満ち溢れている。そんなに楽しみなのか?
「では私から。しりとりはじめ!」
「どわぁっ!?」
後輩ちゃんが『はじめ』と言った瞬間、俺は二人に押し倒された。訳がわからずひっくり返され、荒ぶる痴女姉妹によってお尻をモミモミと揉みしだかれる。
「ぐへへ。先輩のお尻……ぐへへへへ!」
「力が入ればカッチカチだけど、何もしなければもっちり柔らかねぇ~。揉みごたえがあるわ!」
「へっ? えぇっ? いやぁぁあああああああああああ!」
悲鳴をあげた俺は、二人の拘束から抜け出し、ズザザッと壁際まで後退する。なになに? 何が起こった? 何で俺はお尻を触られた? 全然意味が分からない。
怖いです。この頭のおかしい残念でポンコツな姉妹が怖いです。理解不能です。
「あぁ……もっと触らせてくださいよぉ~! ぐへへ」
「まだ足りないわぁ。げへへ」
「な、なんで突然セクハラを?」
顔を見合わせた姉妹は、得意げに胸を張った。渾身のドヤ顔。二人の胸がポヨン、バイン、と跳ねる。
「「 だって『尻取り』だから! 」」
し、しりとりって物理的なしりとりかよ! 言葉の最後の文字を取るって意味じゃないのかよ!
くそう……1ミリも疑わなかった俺の馬鹿。相手は後輩ちゃんなのに。
二人の痴女が目を血走らせ、欲にまみれた笑い声をあげながら、手をワキワキと動かして、ゆっくりとにじり寄ってくる。まるで、肉食動物が草食動物を狙っているかのよう。
「ふっふっふ……先輩はヘタレですからね。私たちのお尻を触ることが出来ないはずです」
「だから、お姉ちゃんと妹ちゃんが一方的に弟くんのお尻を触ることが出来るのよ」
「何という素晴らしいゲームなのでしょう!」
「しりとりを考えた人に感謝したいわ!」
俺や日本国民が知ってる一般的なしりとりと、二人が独自に考えたしりとりは別物ですからね。
この二人は本当のしりとりって知ってるよね? なんか不安になってきた。
「先輩のお尻を揉み放題……」
「触り放題……」
「えい!」
「「 ひゃぅんっ!? 」」
後輩ちゃんと桜先生が、驚きの声を上げて身体をのけ反らせた。何故かって? 理由は、俺が近づいてきた二人のお尻を触ったから。実に柔らかかったです。
触られたことに気づいた二人が、ズザザッと壁際まで後退る。二人で抱き合い、顔を真っ青にしてガタガタと震えている。
「い、いいいいい今、先輩がお尻を触らなかった、お姉ちゃん?」
「さ、ささささささ触られたわよ、妹ちゃん」
「あのドヘタレな先輩が!?」
「ヘタレと辞書を引いたら、『弟くんのことである』って書かれていそうな超絶ヘタレの弟くんが!?」
「あり得ません! もしかして、熱がありますか!? 変な物を食べましたか!?」
「宇宙人に乗っ取られたの!?」
「もしそうだったら、先輩のことが大好きな私たちは気付くはずです」
「そうなのよ。でも、いつもと同じなのよね……」
心配と恐怖と不安と困惑の眼差しで二人が見つめてくる。コイツ大丈夫か、という表情だ。
なんか物凄く失礼なことを言っているなぁ。確かに俺はヘタレだけどさ、勇気を出した可能性は皆無なのか? 思いつかないのか? 酷い……。
「しりとりだろ? 俺が二人をお尻を触っても、何もおかしくないじゃないか」
「お、おかしいですよ! あり得ませんよ!」
「違和感あり過ぎよ!」
「「 さては偽物っ!? 」」
「おいコラ! また触るぞ!」
「「 どうぞ! 」」
あっ、いや、どうぞって言われても……。ヘタレって睨まないで!
恐る恐る近づいてくる二人。まるで、初めて見る電子機器に触れる猿のように、人差し指でツンツンしてくる。ふしゃー、と警戒している二人も可愛い。これで急に襲い掛かったら二人はどんな反応をするだろうか? 驚いて飛び上がるかなぁ?
「二人は気付いていないかもしれないが、マッサージのとき、お尻も揉んでるぞ」
そう。俺が触れた理由はマッサージで触っているから。気づかないだけで、お尻の辺りも結構疲労がたまる。最近のマッサージでは二人のお尻も揉み解している。だから、マッサージと思えば何とか触れる。今のは結構ギリギリだったけど。
「なん……だと!? 私たちの意識が飛んでる間にそんなことをしているなんて! グッジョブです! まさかそれで昇天を!?」
「お尻って結構使っているからねぇ。歩く時とか。マッサージのときに揉んでくれているのね。はっ!? もしかして、マッサージならおっぱいも揉んでくれたりして!?」
「ナイスお姉ちゃん! バストアップマッサージとかあるじゃないですか! 彼氏にマッサージしてもらう女性も多いと聞いてます! 情報源は……秘密ですけど」
「でも、問題は、これ以上大きくなったら困るってことね」
女性二人が自分の胸を両手でモミモミしている。桜先生は大きい。後輩ちゃんも平均より大きい。二人ともバストアップには興味がない。必要性がない。
というか、揉むのを止めろ! 柔らかそうなのが丸わかりだ! 生々しい!
どんなことを言われても胸をマッサージするつもりはないから!
「よしっ! しりとり終わり! 終わりと言ったら終わりだ!」
「今からが本番じゃないですか、ヘタレ先輩!」
「そうよ! もっとしましょうよぉ~!」
「絶対しません。二度としません!」
「では、マッサージはどうですか? 先輩の筋肉を揉み解してあげますよ?」
「妹ちゃんナイスアイデア! お姉ちゃんがマッサージを許可します! いえ、命じます!」
「イエス、マイシスター!」
敬礼をし合った姉妹が、俺の両腕をガシッと掴み、事態について行けない俺を、問答無用で引っ張って行く。とても楽しそう。そして、鼻息が荒い。
あっ。これは抵抗しても無駄なパターンだ。
悟った俺は、潔く諦めて、二人にセクハラという名のマッサージをされるのだった。
尻取り? もちろん続行されましたよ!
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