第252話 意地悪姉妹の後輩ちゃん

 

 お風呂から上がった俺は、髪を乾かし、バタンとベッドに倒れ込んだ。うつ伏せのまま、ベッドの甘い残り香を深く吸い込み、密かに堪能する。


 後輩ちゃんと桜先生の香りだ。とても癒される。癒されるのだが、俺のしている行為は変態じゃないだろうか? でも、まあいいや。後輩ちゃんと桜先生もよくしてるし。


 ベッドに倒れ込んだまま、グリグリと顔を押し付ける。



「どうしたの、弟くん? とっても疲れてるみたいだけど」



 桜先生が髪を濡らしたまま、肩にタオルを置いて、キャミソールにショーツ姿で寝室に入ってきた。ブラはしていないようだ。口にはアイスキャンディーを咥えている。



「…姉さん。露出は控えるんじゃなかったのか?」


「お風呂上がりくらい許してよ~。あっついの! 汗ビショビショになっちゃう」


「汗で透けてるんだけど」


「ふふん! 弟くんなら見られても良いのだぁ~! もっと見て欲しいのだぁ~! あぅ…ちゅめたい」



 汗で肌に張り付き、透け透けのキャミソール姿で大きな胸をバインと張っていた桜先生は、溶けて垂れたアイスをペロペロと舐める。その舐め方が実にエロい。


 火照った肌やら、塗れた髪やら、髪を耳にかける仕草やら、とても危険だ。ドクンと心臓が跳ね、仰向きになれなくなる。


 桜先生がアイスを口に咥え、俺の横のベッドに座り、全部露出した綺麗な脚を組む。



「ふぉれふぇ? ふぉうふぃふぇふふぁふぇふぇふふぉ?」


「ごめん。俺、多くの言語を知ってるけど、流石に今のポンコツ語はわからない」


「んくっ…ポンコツ語なんて酷いわよ、弟くん!」



 艶めかしく嚥下した桜先生が、溶けかけたアイスをビシッと突き付けてくる。



「それで? どうして疲れてるの? 体育の授業も集中してなかったわよ。妹ちゃんもだけど」


「ふぇっ? ふぁたしがどうふぁしましふぁか?」



 同じくキャミソール姿に短パン姿の後輩ちゃんが、アイスキャンディーを咥えながらやって来た。露出は多いけれど、後輩ちゃんはちゃんとブラをつけている。



「弟くんが疲れてる原因と、二人が体育の授業に集中していなかった原因を問い詰めようとしていたところです! 早くお姉ちゃんに白状するのです!」



 格好良くアイスを突き付けたのはいいけれど、垂れそうだったので慌てて咥えた桜先生。最後の最後で残念だった。


 エロく舐めている後輩ちゃんがあっさりと白状する。



「それはねぇ~。先輩が昨日の愛してるゲームの影響で、私のことを超意識してたの。んで、学校で先輩を揶揄ってたんだけど、調子に乗っちゃって、クラスメイト全員の前で愛の言葉を連発しちゃったんだよねぇ~。私が」


「妹ちゃんが!? 珍しい」


「いや~恥ずかしかったぁ。でも、先輩を愛でられたのでよかったです。試しにお姉ちゃんも言ってみたら?」


「おいコラ後輩ちゃん!」


「弟くん。大好き」


「ぐはっ!?」



 くぅ~! マジで止めて! 本当に止めて! 今の俺にはクリティカルヒットするからぁ!


 俺はベッドに顔を押し付けて隠し、足をバタバタさせる。



「ほほぅ。今が弟くんの攻め時ということですかな?」


「そういうことですなぁ、お姉ちゃん」



 女性二人がニヤリと笑う気配がする。俺の身体がビクリと震える。


 絶対に見ない! 二人を見たらダメだ! このまま顔を隠し続けるんだぁ!


 ベッドにしがみついていたら、耳元に人の気配を感じた。



「先輩」


「弟くん」


「「好き」」



 熱い吐息が吹きかけられ、甘い囁きが脳を溶かす。


 俺は両耳を塞ぎ、足をバタバタさせて暴れまわる。


 くぅ~! 二人のばか! あほ! 俺を虐めるなぁ~!



「ヤバい…先輩が可愛すぎます。おっと! アイスが溶けちゃう」


「これは…癖になりそうね。おっとっと。ちゅめたい」



 耳を塞いでも完全に音を消すことはできない。楽しそうな後輩ちゃんと桜先生の声が聞こえてくる。二人は盛大に顔がにやけているだろう。



「っ!?」



 誰かが俺の背中をスゥーッと撫でた。ビクッと反応してしまう。


 それが二人分に増え、服の上から優しく撫でられる。


 俺は抵抗するが、徐々に服を捲られてしまった。後輩ちゃんと桜先生の指が俺の素肌を這う。


 くすぐったい。でも、何か文字を書いているらしい。一体なんて書いているんだろう?



『す き』



 ぐはっ!? やっぱりそうですよね! その言葉を書きますよね!


 後輩ちゃんと桜先生のばかぁ~!


 恥ずかしい。とても恥ずかしい。でも、落ち着け、俺。落ち着くんだ!


 バタバタさせていた足をぐて~っと脱力させる。深呼吸して、ベッドの残り香を嗅ぐ。


 顔が熱いけれど、覚悟を決めて、急にムクリと起き上がった。


 俺の背中を撫でて遊んでいた二人が残念そうな表情を浮かべる。



「良いところだったのにぃ~!」


「弟くん。もうちょっと寝てて。お姉ちゃんたちが遊べないわ」


「嫌です! 俺を揶揄った二人にお仕置きしてやる! とりゃ!」



 俺は、二人が手に持っていた残り僅かのアイスキャンディーを奪うと、パクっと全部食べてしまう。


 二人の顔が絶望に染まった。


 ふふん! どうだ! 俺を揶揄って遊んだ罰なのだ! これで反省を………って、冷たっ!? 口の中が冷たすぎる! 頭がキーンとしてきた!



「あぅっ! あぁ…!」


「一気に食べるからですよ。馬鹿ですねぇ~」


「天罰よ!」


「あぅ…たちゅけて…」


「仕方がないですねぇ。んぅっ!」



 冷たすぎてハフハフしていた俺に後輩ちゃんが抱きついてきた。そのまま口にキスされて、強引に舌をねじ込まれる。舌と舌、唾液と唾液が絡み合い、冷たいアイスが溶かされ、俺は何が何だか分からなくなる。頭がパニック状態。


 積極的な後輩ちゃんが濃厚なキスを続けながら、何度か喉を動かす。俺はボーっと後輩ちゃんにされるがままだ。冷たい口の中を舐めまわす後輩ちゃんの舌が温かい。敏感に感じてしまう。



「ぷはっ!」



 じっくりねっとりキスしてきた後輩ちゃんが口を離した。いつの間にか、俺の口の中からアイスが消えている。後輩ちゃんが全部のみ干したようだ。


 今回のキスは、アイスの味がしました。


 後輩ちゃんが妖艶に舌で唇をチロリと舐め、指で撫でる。



「ごちそうさまでした」



 俺の胸がズキューンと撃ち抜かれた。あまりにも美しすぎる。


 ベッドにバタリと倒れ込んでしまう。



「うわぁお! 妹ちゃん積極的!」


「ふっふっふ! 今の私はイケイケモードなのです!」


「降参…俺はもう降参だから…」


「ダメですよ。これくらいでノックアウトしたら! これから髪を乾かしてもらわないといけないのです!」


「あぁ…そうでしたね…。二人ともまだ髪が濡れてたね…。今日は自分で出来ない? しばらく動けそうにない」


「嫌です! 自分でするのは嫌です!」


「弟くんがするの! お姉ちゃん命令! アイスを食べた罰です!」


「うぅ…するんじゃなかった…」



 俺はベッドに倒れ伏したまま後悔する。やっぱり二人にやり返したらダメだよね。俺、今回で学びました。後輩ちゃんと桜先生には勝てません。


 ぐてーッとしている俺を、二人がツンツンと突いてくる。とてもくすぐったい。



「ほれほれぇ~! 先輩起きてくださ~い!」


「待って、妹ちゃん。これはこれで弟くんを弄るチャンスよ!」


「なるほど! では、ツンツン…スリスリ…」


「ナデナデ…スゥ~!」



 後輩ちゃんの衝撃から立ち直っていない俺は、後輩ちゃんと桜先生によって突かれたり撫でられたり、おもちゃになりました。


 そして、二人の弄りによって、俺の復活が遅くなりました。


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