第248話 下ネタトークと後輩ちゃん

 女性の皆さん…最初に謝っておきます。

 申し訳ございません。

 男は…作者は…馬鹿なんです。


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 女性の胸。それは男なら誰でも憧れる夢と希望と浪漫が詰まった至福の膨らみである。


 大きさも形も柔らかさも、女性一人一人違う。その好みによって、熱い議論が巻き起こる。



「胸はおっぱい! それしか認めない! あのマシュマロのような柔らかさ…。揉んだ時に手から零れ落ちる大質量…。おっぱいこそ正義だろうが!」



 大きな胸派。所謂、おっぱい派が立ちあがって熱弁する。拳を握って瞳をぎらつかせている。


 それに反論する者が立ちあがった。怒りの炎を燃やしている。



「異議あり! 胸はちっぱい。これしかない! 小っちゃくて慎ましやか…。可愛いだろうが! それに、感度も良好! 胸だったらちっぱいだろ!」



 小さな胸派。すなわち、ちっぱい派に賛同する者たちが、そうだそうだ、と声を上げる。


 今度はおっぱい派でもなくちっぱい派でもない第三勢力が立ち上がる。おっぱいとちっぱいの中間、ぱい派だ。



「時代はおっぱいでもちっぱいでもない。ぱいだ! 手で丁度良く包み込める大きさ。大きくもなく小さくもない。柔らかさも抜群。感度も抜群。形も綺麗で張りもある! ぱいこそ至高の芸術だ!」



 三つの派閥が睨み合う。バチバチと大量の火花を散らしている。全員が瞳をぎらつかせ、ガンを飛ばす。



「あぁんっ? 巨乳なんて将来垂れ下がるだろうが!」


「あ゛? そっちはまな板だろうが!」


「垂れ下がることもなく、まな板でもないぱいは最強!」


「「中途半端は黙ってろ!」」



 言い争いと睨み合いが続く。誰も一歩も譲らない。否、譲れないのだ。


 そこへ、第四の勢力が登場する。どこにも属さず、無言を貫いていた、ただ一人しか所属していない勢力が、スッと立ち上がって睨み合いに割って入る。



「そなたらに、我が言葉を授けよう。『胸に貴賤なし』。皆で復唱しましょう…せーのっ!」


「「「決められないやつは黙れ!」」」


「うわ~ん! せんぱぁ~い! みんなが酷いです~!」



 ただ一人の第四の勢力である後輩ちゃんが、三つの派閥の圧力に負けて俺に抱きついてきた。


 そう。女性の胸について熱く語っていたのは男子ではない。女子たちだ。女子たちが教室のど真ん中で熱く下ネタトークで盛り上がっているのだ。


 男子たちはそれを遠くから聞き、うんうん、と頷いている。


 …………改めて思ったけど、ウチのクラスっておかしくない?


 泣きていてきて、俺の身体にスリスリと顔を擦り付けてくる後輩ちゃんを優しく撫でる。


 潤んだ瞳の後輩ちゃんが可愛らしく上目遣いで見つめてきた。



「先輩はどこの派閥の人間ですか? あっ! 私派でしたねっ!」


「うぐっ…」



 こういう時にも俺を揶揄うのを止めない後輩ちゃん。悪戯っぽい笑顔が可愛らしい。


 そうですよ。俺の好みは後輩ちゃんですよ。悪いかっ!?


 はぁ、と呆れのため息をついて、にらみ合いが続く女子たちに問いかける。



「何やってんだ?」


「何って、教室の中心で下ネタトークを叫ぶ?」


「何だよそれ…。皆は淑女なんだから、もっとお淑やかにしましょうよ」



 俺がそう言った瞬間、女子たちが急にお淑やかになって、おーほっほっほ、と高笑いを始める。


 いや、高笑いの時点でお淑やかじゃないな。悪徳令嬢かっ!?



「あっ、先輩は演技する女性は苦手ですから。素のほうがいいですよ」



 今のタイミングで暴露しないでくれ、後輩ちゃん。確かにその通りですけど。


 折角静かになったと思ったのに…。高笑いはうるさかったけど。


 女子たちが一斉に元に戻った。エロ親父と化す。



「女性の胸に対する颯の想いを具体的に述べよ!」


「嫌だ! 俺は意見を押し付けるんじゃなくて、尊重し合うほうがいいと思うぞ。というか、大声でそんな言い争いをするのを止めろ」


「まあ、颯くんがそう言うなら…」


「はーい。大声では止めまーす」


「なになに? 女の子がこういう話をしてて幻滅した? 幻想が砕け散っちゃった?」


「女の子がいつも綺麗な部屋で可愛い洋服を着て、ゴミを出さないとか思ってる? トイレも行かないとか思っちゃってる?」


「ウチらはどこかのアイドルかよ!」



 女子たちがケラケラと笑い出す。本当に仲が良さそう。


 ねえ? ここは共学の高校だよ? 男子がいるんだよ? なんで女子校のノリ?


 でも、俺はそんな女子たちに言わなければならないことがある。



「えっ? 女子って家では薄い服やジャージや下着姿や全裸で歩き回って、物は散らかすわ、ゴロゴロぐ~たらするわ、かまってちゃんになるわ、堂々とエロ本を読んで盛り上がるわ……そんなこと普通だろ?」



 女子たちの驚愕の視線が後輩ちゃんに向けられる。



「葉月……あんた家ではそんななの?」


「気持ちはわかるけど…全裸とかエロ本とかないわぁ。流石にないわぁ」


「一日中パジャマとかはあるけど」


「えっ? おかしくなくない? あたしもそんなんだけど」


「「「えっ?」」」



 後輩ちゃんと同じ種類の女子がいて、一斉に注目を集める。


 男子たちは、それはそれであり、と深く頷いている。


 全て暴露された後輩ちゃんは、ぷくーっと頬を膨らませて俺の身体をポコポコ叩く。



「先輩のばかぁ~! 実家ではしないもん! 先輩と住んでる時だけだもん!」


「物を散らかしてゴロゴロぐ~たらするのは?」


「それは…実家でもしますけど、薄着だったり、かまってちゃんになったり、エロ本を読んだりするのは先輩の前でしかしません!」



 いやいや。せめてエロ本はこそっと読みましょうよ。堂々と読んで桜先生と盛り上がるのは止めません?



「もしかして、美緒ちゃん先生も?」


「そだよ~」


「普段はクールだけど、意外とポンコツだよね~」


「うん。残念。とても残念」


「「「でも、そこがいい!」」」



 夏のクラス会で桜先生のポンコツっぷりを理解した女子たちが盛り上がっている。



「あの大きなおっぱいに顔を埋めたい…」


「いやいや! お尻を揉みたいだろ!」


「あのくびれた腰回りを撫でる! これに決まり!」


「首筋に噛みつく!」


「「「それは……ありだな!」」」



 なしだよ! 絶対になし………いや待てよ。意外と…って、ダメだダメだ! 女子たちに洗脳されるな、俺! 理性を保て、俺! 俺は常識人だ!


 俺は冷静になるため、抱きつてきた後輩ちゃんのお腹をフニフニする。


 あぁ…とても気持ちいい。癒される。


 俺だったら桜先生のお腹をフニフニするなぁ……って、何を考えているんだ俺は!?


 慌てて首を振って、邪な考えを吹き飛ばす。その傍らで、女子たちが熱く語り合っている。


 こうして、休み時間の間ずっと女子たちは下ネタトークで盛り上がるのだった。




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 全ては作者の妄想です!

 け、決して、物は散らかして、ゴロゴロぐ~たらして、一日中パジャマで過ごして、昼寝をする、という人物が家族にいるわけではありませんので!

 い、いませんからぁ! 心当たりはありませんからぁ!



 何を言いたいかといいますと、作者は馬鹿です。ごめんなさい!

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