第200話 仲直りと後輩ちゃん

 

祝! 200話! いつもありがとうございます!

=================================


「後輩ちゃんの頑固者!」


「先輩のわからずや!」


「「ふ~んだっ!」」



 家に帰っても俺と後輩ちゃんの喧嘩は続いている。


 お互いに座って正面から抱きつき、相手の肩に顎を乗せている。


 後輩ちゃんは俺の身体に腕と足を絡みつかせて抱きついている。


 甘い香りと温もりと柔らかさが心地良い。


 心が癒されながらもムスッとした表情は崩さない。



「どうして認めないんだ!?」


「どうしてわからないんですかっ!?」


「「ふ~んだっ!」」



 俺たちは抱きしめ合いながら口喧嘩をする。


 その様子を、オロオロとお風呂の準備をした桜先生が見守っている。


 俺たちの喧嘩にどうすればいいのかわからないらしい。心配でお風呂にも入れないようだ。



「あ、あの~? 二人とも、仲直りしない?」


「後輩ちゃんが認めたらな!」


「先輩が認めたら!」


「「ふ~んだっ!」」



 抱きしめ合い、お互いの頬に自分の頬をスリスリと擦り付けながら喧嘩をする。


 あわわ…と桜先生が困惑している。そして、おずおずと申し出てきた。



「あの~、ねっ? 二人とも好きじゃなくて愛してるってことでいいんじゃない?」


「俺のほうが後輩ちゃんのことを愛してる!」


「私のほうが先輩のことを愛しているんです!」


「あっ? なんだって?」


「はぁっ? なんですって?」


「「あ゛っ?」」



 俺たちは鼻と鼻を擦り付けながら超至近距離で睨み合う。


 普段なら恥ずかしくて言えない言葉も、今は喧嘩腰で怒りに身を任せているから言うことができる。


 余計に激しくなった俺たちの喧嘩に、桜先生が、あわわ、とあたふたしている。



「姉さんはお風呂に入っていいよ」


「そうだよ。お姉ちゃんごゆっくり~!」


「で、でも、お姉ちゃんがいなくなっても大丈夫? 包丁を持ち出さない? 刀傷沙汰にならない? 思わずブスっと刺したりしない? 大丈夫よね妹ちゃん?」


「大丈夫だよ! ………………たぶん」


「後輩ちゃんはそんなことしないぞ! ………………たぶん」


「その『たぶん』が怖いのよ!」



 俺たちのブラックジョークは桜先生に伝わらなかったようだ。顔を真っ青にしている。


 俺と後輩ちゃんは桜先生に微笑みかける。



「冗談だから!」


「そうだぞ! 後輩ちゃんなんか、俺が本気出して一睨みすれば崩れ落ちるから!」


「あっ。それもそうね! 心配して損しちゃった! じゃあ、お姉ちゃんは安心してお風呂入ってきまーす!」



 本当に安心した桜先生は、鼻歌を歌いながらルンルンと浴室へと向かっていった。


 あれっ? これで納得しちゃうの? これで安心しちゃうの? 桜先生の中の後輩ちゃんって…。


 後輩ちゃんは納得いかなさそうな顔で不貞腐れている。



「確かにその通りになりますけど、なんか釈然としません」


「まあまあ! 落ち着いて」


「うがぁー! 落ち着いてなんかいられませんよー! 私のほうが先輩のこと好きなのにー!」



 むぎゅーっと足まで使って抱きしめてくる後輩ちゃん。顔をスリスリするおまけつき。


 とても可愛らしくて嬉しいけれど、俺のほうが好きだぞ! それだけは譲れない!


 お互いに抱きしめ合いながら無言の時間が続く。時折、お風呂場から桜先生の楽しげな鼻歌が聞こえてくる。


 しばらくして、俺は後輩ちゃんの耳元で囁く。




「後輩ちゃん。流石にそろそろ仲直りしないか?」


「ほう? 先輩が折れてくれるんですね!」


「やっぱりなしで」



 俺たちは再び無言の時間を過ごす。


 しばらくして、今度は後輩ちゃんが俺の耳元で囁いてきた。



「先輩。そろそろ和解をしませんか?」


「ほう? 後輩ちゃんが負けを認めるんだな?」


「やっぱりなしで」



 俺たちは無言の時間を過ごす。こうなったら意地の張り合いだ!


 むむむ~と俺が唸ると、後輩ちゃんも、むぅ~~と可愛らしく唸る。


 俺が後輩ちゃんの頭を優しく撫でると、俺の首筋にスリスリと顔を擦り付けてくる。


 またしばらく経った頃、後輩ちゃんが突如大声を出した。



「あぁもう! こうなったらはっきり白黒つけましょう! 先に相手をダウンさせた方が勝ち! どうですか?」



 肩に顎を乗せていた後輩ちゃんの顔が、ひょいっと目の前に現れた。


 そのまま超至近距離で見つめ合う。


 ふむふむ。このままだと平行線だ。先に相手をダウンさせた方が勝ち。わかりやすくて良いじゃないか!



「いいだろう。勝負は何でもありの一回勝負。スタート!」


「ふっふっふ! 今までの気絶していた私を嘗めないでください! 女のプライドをかけた一戦です! 今日の私は一味違いますよ!」


「そうか。じゃあ、味わってみる」


「んぅっ!?」



 俺は超至近距離で不敵に微笑む後輩ちゃんの綺麗な唇にキスをした。


 驚きで目を見開く後輩ちゃんを楽しんで、優しいキスで愛しい彼女をゆっくりじっくり味わっていく。


 長い時間、後輩ちゃんの味を堪能して、ゆっくりと唇を離す。



「ふむ。いつもより甘かったかな。ごちそうさまでした」


「せ、せせせせ先輩!? 突然何を!?」



 顔を真っ赤にして瞳を潤ませている後輩ちゃん。突然のことで頭が追い付いていないらしい。今にも気絶しそうだ。


 これは案外簡単に勝負がつくかも。後輩ちゃんに不敵に微笑み返した。



「何ってキス。一味違うって言ってたから味わってみた」


「物理的な意味じゃなくて~あぁもう! 頑張れ私! 先輩をトロトロに蕩けさせるのだぁ~! 楓流淫魔のキス!」



 楓流って何だ!? 淫魔のキスって何だ!?


 そう思った時には後輩ちゃんにキスをされていた。いつもとは違う濃厚で激しいキス。後輩ちゃんが積極的に舌を絡めてくる。


 いつもは恥ずかしがる後輩ちゃんが、俺の頭にもしっかりと腕を回して離さないようにし、唾液を混じり合わせ、激しい水の音を響かせながらキスしてくる。


 お互いに口の周りは唾液でべとべと。でも、悪くない。


 むしろ、俺負けそう! ヤバい! 積極的な後輩ちゃんに負けそう!



「ぷはぁっ!? ど、どうですかっ!? やってやりましたよ!」



 本当にギリギリのところで後輩ちゃんが離れてくれた。後五秒キスされていたら負けていただろう。本当にギリギリだった。


 後輩ちゃんの顔は真っ赤。耳や首まで真っ赤。自爆覚悟の本気の攻撃だったらしい。


 そうかそうか。じゃあ、俺も本気を出しますか!


 いつも抑えている気配を全力で解放し、瞳に力を込める!



「ひゃあっ!? こ、この距離はダメですからぁっ!? 本気モードはダメですからぁぁああああ!?」



 後輩ちゃんがプルプルと震え始める。瞳は熱っぽく潤み、甘い吐息を熱く荒げ始める。


 効果抜群。後輩ちゃんのHPは残りわずかだ。


 超至近距離で後輩ちゃんの綺麗な瞳の奥を見つめる。ビクッと身体を震わせた。



「負けを認めるか?」



 優しく囁く。トロ~ンと陶酔した表情の後輩ちゃんがゆっくりと頷き………かけて目をギュッと瞑って止まった。



「くっ! 危ないところでした。思わず負けを認めるところでした。でも、今日の私は一味違うのです! んぅっ! んふぅっ! あむぅっ! って先輩! 言葉の途中でキスしないでください!」


「だって一味違うって言うから」



 後輩ちゃんがペチペチと背中を叩いてくる。


 一味違う後輩ちゃんは甘かったです。



「くっ! こうなったらとっておきを使うしかありません! うぅ…本当は別の機会にお披露目したかったんですけど仕方がありません!」



 目を一瞬瞑った後輩ちゃんが心を落ち着かせ、一回だけ深呼吸してゆっくりと瞼を開いた。


 その瞬間、俺は心を奪われた。一気に理性が砕け散る。


 美少女だった後輩ちゃん。でも、今は大人の魅力を感じる。


 妖艶で輝く微笑み。男を惑わす美しさ。ムンムンの色気。大人の余裕。あらゆる人が見惚れる美の女神。


 普段は出来るだけ普通を装っている後輩ちゃんの美貌を全開にしている。



「お母さんたちから教わった、女の魅力を最大限に発揮させる方法です。先輩を堕とすためだけの私の本気モード。先輩だけの私です。どうですか?」



 美しい笑みを浮かべる後輩ちゃん。後輩ちゃんの甘い言葉が脳を、身体を、心を、俺という存在を溶かしていく。


 俺は見惚れてしまって何も反応することができない。


 効果は抜群だ。俺のHPは残り1。


 後輩ちゃんはクスっと微笑んだ。



「じゃあ、私の勝ちですね?」



 俺はゆっくりと頷きかけて………………止まった。



「くっ! 危ない危ない。危うく負けを認めるところだった」


「ちっ! 流石理性の化け物! 完全には堕としきれませんでしたか! あの勝負下着を着ていれば…!」


「そうだな。今後輩ちゃんが下着姿だったら、俺は今頃襲い掛かっていたな」



 今も危なかった。本当に危なかった。理性が戻ったのはお風呂で鼻歌を歌う桜先生の声が聞こえたからだ。それがなかったら本当に押し倒していた。


 本気モードの俺は本気モードの後輩ちゃんと超至近距離で見つめ合う。



「決着をつけよう」


「はい。お互いにこれが最後の攻撃です」



 俺は覚悟を決める。後輩ちゃんも覚悟を決めた。



「葉月。愛してる」


「先輩。私も愛しています」


「「いざ勝負!」」



 本気モードの俺たち二人は、先に相手をダウンさせてこの勝負にケリをつけるため、お互いの唇に貪りつくのだった。









 勝負結果がどうなったかだって?


 それは俺と後輩ちゃんだけの秘密。


 俺と後輩ちゃんは無事に仲直りをすることができ、仲直りのキスをするのだった。



























<おまけ>


「ねえ弟くん、妹ちゃん。どうして息を荒げて、疲れきって、仲良く抱き合って、床に倒れているの? もしかして事後? ヤッたの?」


「「ヤッてない! 仲直りのキスをしただけ!」」


「えぇー! つまんないのー! でも、やっと仲直りしたのね! よかった!」




====================================

というわけで、第200話をお読みいただきありがとうございました!

100話からあっという間でしたね。一応三カ月ほど前なんですが…。

この様子だと、軽く300話を超えそうです。

これからイベントが盛りだくさんですから!


終わるのは嫌だ! という読者の皆様の声を多くいただき、出来るだけ引き延ばそうと思います。

こういうデート、イチャイチャが読みたい!とご連絡いただければ、書く可能性があります。

例えば、動物園デート、水族館デート、などです。

大雑把な案を頂ければ、こちらで考えますので。

ただし、ストーリーに合致していなかった場合は、本編終了後のおまけ編で書こうと思います。

読者の皆様の案が一つでも来れば、最低でも一話分長くなりますよ!

感想欄でもいいですし、近況ノートのほうでもいいです。


改めて、本作品をお読みいただき本当にありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

                      2020.1.11 作者:クローン人間

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る