第190話 八つ当たりと後輩ちゃん


明けましておめでとうございます! 

今年もよろしくお願いします!

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 いつも通り夕食を作り終えた。そろそろ桜先生が帰り着くと連絡あったので、夕食はそれまでお預けだ。


 出来るだけみんなで一緒にご飯を食べるのがこの家の暗黙のルールだ。


 やっぱりみんなで食べたほうが美味しいよね。


 というわけで、夕食まで少し時間がある。


 リビングではいつも通り後輩ちゃんがコロコロしていた。暇そうな表情をして転がっている。


 転がっていた後輩ちゃんは、うつ伏せでピタッと止まり、ぐてぇ~っと怠そうに身体を脱力させる。



「ぐへぇ~」



 後輩ちゃんの口から、何とも言えない低いため息のようなものが漏れ出した。


 チラッと顔を上げ、佇んでいる俺の脚が目に入ったのだろう。


 クルッと仰向けになり、下から俺を見上げる。



「どうしたんですか、先輩?」


「転がる後輩ちゃんを愛でていた」


「そうですか。先輩かも~ん!」



 仰向けの後輩ちゃんがバッと両手を広げた。


 俺は四つん這いになって、寝転がる後輩ちゃんの上に覆いかぶさる。


 寝転んでセミロングの髪が広がっている後輩ちゃんが俺の首に両手を巻き付けてくる。



「先輩。夕食前に私を食べちゃいます?」


「非常に魅力的な提案ですけど、そろそろ姉さんが帰ってくるので食べません」


「ちっ!」



 コラコラ! 舌打ちは止めなさい舌打ちは。可愛いけれども!


 後輩ちゃんの頬を優しく撫でる。後輩ちゃんはくすぐったそうにしながらも、手に顔を擦り付けてくる。子猫みたいだ。


 頬を赤らめた後輩ちゃんと見つめ合う。後輩ちゃんが静かに目を閉じた。


 ゆっくりと顔を近づけていき、二人の息が混じり合う。


 唇と唇が触れ合う……かと思われた瞬間、俺は急に顔を離し、後輩ちゃんの腰のあたりに軽く座った。


 キスされると覚悟していた後輩ちゃんが、不満そうに目を開けた。


 ムスッと頬を膨らませた後輩ちゃんがジト目を向けてくる。



「先輩……」


「まぁまぁ、待つのだ後輩ちゃん。俺は後輩ちゃんにキスよりもまずしなければならないことを思い出しただけだ」


「………なんですか? キスよりも大切なことじゃなかったら怒りますよ?」



 うっ! 不味い。キスのほうが大切だったかもしれない。


 負けるな俺! 俺はこの思いを後輩ちゃんにぶつけないといけないのだ!



「今日、文化祭の出し物の話し合いで、幽霊の男装女装コスプレをしたお化け屋敷喫茶に決まったよな?」


「はぁ…それがどうかしましたか?」


「俺は猛烈に怒っている! 最悪なものに決まりやがって! よって後輩ちゃんをこちょこちょの刑に処す!」


「理不尽な! 完全な八つ当たりじゃないですか! 私は提案しただけで、多数決で決まりましたよね!?」


「そうだ! 八つ当たりだ! 後輩ちゃんは俺によく言っているだろう? 欲に忠実になれって。俺は今猛烈に後輩ちゃんをこちょこちょしたい! だからします!」


「ひ、酷いです! あっ! 先輩に乗られてて逃げられない!? あっ! 先輩、手をワキワキさせないでください! だ、だめぇええええええええ!」



 ふっふっふ! くらえ! 容赦ない全力のくすぐり攻撃!



「あはははは! だ、だめですぅぅうううううう! あははは! いーひっひっひっひ! くひひひひっ! キャハハハハ! あっあっあぁ~~~~! お、おなかがぁあ! ひひひひひっ!」


「それそれぇ~! 後輩ちゃんはここが弱かったな! ここも! もっとだもっと!」


「ぐふふふふっ! あぁんっ! だめですぅぅうううううう! キヒヒヒヒ! あっあっ息が息ができないから! あはははは! ひーひっひっひっひ!」



 後輩ちゃんが顔を真っ赤にして涙目になりながら身を捩って笑い続ける。


 楽しくなった俺は容赦なくくすぐり続ける。


 あっちをこちょこちょ。こっちをこちょこちょ。あんなところもこちょこちょ。こんなところもこちょこちょ。全身こちょこちょ。


 馬乗りになっていた後輩ちゃんから降りてもくすぐる。逃げることができるはずなのに、後輩ちゃんはその場にとどまってくすぐられている。


 ほうほう。俺にもっとこちょこちょされたいのだな? やってやりましょう!



「おなかがっ! おなかが痛ぁ~い! きゃははははは! あ~はっはっは! うふふふふふっ! ひーひっひっひっひ!」



 俺が満足する頃には、後輩ちゃんは呼吸困難でピクピク痙攣しておりました。


 うむ。後悔も反省も一切ない。ただただ達成感と征服感があるだけだ。


 よくやった俺! 日頃揶揄われている仕返しをすることができた!


 ふぅ~! スッキリした! 時々後輩ちゃんをくすぐってストレス発散をすることにしよう!


 でも、日頃のストレスはまだ溜まっている。ちょっと発散不足だ。


 一仕事終わって額を拭っていると、ドアがバタンと開かれ、桜先生が帰ってきた。


 ナイスタイミング!



「たっだいまー! 弟くん! 妹ちゃん! お姉ちゃんが帰って……きた………わ……よ?」



 バーンと登場した桜先生は、一仕事終わって疲れきった俺と、床でピクピク痙攣して倒れ伏す後輩ちゃんを見て固まる。


 俺と後輩ちゃんを何度も交互に見つめ、結論を出す。



「もしかして………事後? お姉ちゃんやっちゃった? これから第二回戦? それともピロートークだったりする?」


「いやいや。日頃の欲求を解放しただけだから」


「や、やっぱり!? もしかしてこれからだった? 前戯が終わったところだった!? 二人ともごめんなさい!」



 バッと頭を下げて部屋を出て行こうとする桜先生。


 俺はガシッとその手を掴んだ。



「お、弟くん? どうしたの?」


「俺、まだちょっと足りないんだよね。姉さんも強制参加で」


「ふぇ、ふぇぇええええええ!? いいの? 混ざっちゃっていいの!?」


「いいよいいよ!」


「で、でも、お姉ちゃんお風呂入ってない!」


「気にしなくていいよ。すぐに汗だくになるし。後輩ちゃんみたいに」



 汗をダラダラとかいて、必死で呼吸をしている後輩ちゃんをじっと見る。


 桜先生はゴクリと唾を飲み込んだ。



「で、では弟くん。どうぞ……」


「では遠慮なく」



 俺は全力のくすぐり攻撃を開始する。



「あはぁんっ! な、なにするの弟くぅん♡ あはぁ~ん! だめっ! そこはだめなのぉぉぉおおおおおお! うふふふふふふふ!」



 何故か声が物凄くエロい。艶やか。大人の色気ムンムンだ。


 容赦なくくすぐり攻撃を続ける。



「何って、ただのこちょこちょだけど」


「こ、こちょこちょ!? えっちなことじゃないの!? あっそこっ、お姉ちゃんそこ弱いの! だめぇええええ!」


「自己申告ありがとうございます。それそれぇ~!」


「あふぅんっ♡ そこはらめだってばぁああああああ! お姉ちゃん脇弱いのぉおおお! 首筋も! わき腹も! 腰骨も弱いのよぉぉおおおおおお! うふふふふふふふ!」



 自己申告を本当にありがとう。桜先生は弱点ばっかりだな。ありがたく攻めさせていただきます。


 脇をこちょこちょ。首筋をこちょこちょ。わき腹をこちょこちょ。腰骨をこちょこちょ。


 ビクビクとエロく痙攣して笑う桜先生。とても官能的だ。流石大人の女性。



「あっあっ♡ そこはらめぇぇええええええ! 弟くんのばかぁああああああああああ! うふふふふふふふ♡ ふふふふふふ♡」



 桜先生もすぐに後輩ちゃんの横でビクビクと痙攣し始めた。


 呼吸困難で床に倒れ伏す美女と美少女。


 肌には汗が浮かび、ピンク色に火照っている。ちょっとエロい。


 完全にストレス発散をすることができた。


 後悔も反省もしていない。達成感と征服感のみが存在する。


 やってやったぞ俺は! 欲望に忠実になってやった! 俺はヘタレじゃない!


 二人が起き上がるまでの間、俺は心地良い疲労感と達成感と征服感に酔いしれるのだった。


















<おまけ>


 寝る直前の寝室。俺は後輩ちゃんと桜先生にベッドに押し倒された。



「せんぱぁ~い♡ さっきはよくもくすぐってくれましたねぇ♡」


「弟くぅ~ん♡ こちょこちょしてきたということは、される覚悟もあるのよね♡」


「えっ? あのっ? えーっと……」


「うふふ♡ 先輩。覚悟、出来てますよね?」


「出来てるわよね?」


「出来ていません!」


「そうですか……でも」


「そうなのね……でも」


「「問答無用!」」


「うわぁああああああああああああああああああ!」



 俺は美女と美少女にこちょこちょされて襲われました。


 二対一は卑怯だと思います………バタリッ! ピクピクッピクピクッ!


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