第186話 恐怖の夜と先輩
今日は皆ご飯の前にお風呂に入った。理由はどこかのかっこいい彼氏にマッサージされたから。
あのマッサージはヤバい。気持ちよすぎ。
先輩に見せられない顔になりながら先輩にマッサージを受けた。
疲れも性欲も解消されたけど、汗だくになってしまったからお風呂に入らざるを得なくなったのだ。
現在はご飯も食べ終わり、後は歯を磨くだけでいつでも寝ることができる。
台風はまだ居座っており、暗くなった外をビュービュー風が吹いている。風が強い。
暇だ。暇すぎる。寝るのはちょっと早い。こういう時は、先輩を弄ろう!
「風が強い日の夜………」
「後輩ちゃん? 突然どうした?」
先輩が訝しげな顔をして問いかけてきたけど、私は無視します!
「少年少女たち数名は、薄暗い洋館に閉じ込められた……」
「えっ………な、なななななな何を言っているのかなっ!? 後輩ちゃん!?」
勘のいい先輩は即座にビクッと身体を震わせ、顔を青ざめている。
怯える先輩が可愛い。
想像力が豊かですねぇ。まあ、ご想像通り怪談話ですけど。
「少年と少女たちは懐中電灯を手に、洋館の中を探索し始める。ボロボロに朽ち果てた建物。明らかに壊されたドア。散乱した調度品。乾いた血溜まりの跡……」
「うわぁぁあああああ! うわぁぁあああああ! 怪談嫌だぁああああああ! 後輩ちゃんやめろぉぉぉおおおおお!」
「先輩シャラップ! お姉ちゃんやっちゃって!」
「はーい!」
お姉ちゃんが先輩を慣れた手つきで縛りあげる。もちろん口には猿轡。
バタバタと暴れる先輩。残念ながらもう逃げられない。
「全員は見失わないように番号を取りながら歩いて行く。しかし、途中で一人多いことに気づく…」
「ふぅー! ふぅー! うぅぅぅううううううううううううう!」
「先輩シャラァップ!」
「弟くん黙って! 良いところじゃない!」
縛られた先輩は私とお姉ちゃんにペチペチとお尻を叩かれる。
おぉ! 先輩のお尻……。
おっと。今は先輩のお尻より怪談話だ。
私は先輩のお尻を撫でながら続きを話す。
「全員が立ち止まって確認する。しかし、数はちゃんと合っている。誰かが悪戯で言っているのだと結論付けた。少年少女は探索を続ける。元の場所に戻ってきた彼ら。でも、最後尾を歩いていた少年がいない。直前の番号はちゃんと言っていたのに……」
先輩は今にも気絶しそう。顔は青を通り越し白い。目も白目だ。
「先輩大丈夫ですかぁー?」
私の声にもビクゥッと身体を震わせ、ガクガクと首を横に振っている。
えぇー。ここからが本番なのに……と言っても全てアドリブです。
「懐中電灯が消える。そして、すぐに明かりがつく。懐中電灯の明かりの先には、いなくなった少年が天井から逆さづりにされて死んでいた……」
「っ!?」
想像しなければいいのに……。先輩は想像してしまってビクビクしている。
怖がっている先輩が可愛い。超可愛い。癖になっちゃう。
「怯える少年少女たち。しかし、懐中電灯の明かりが消えるたび、彼らは為す術なく一人一人消えていく。そして、再び現れた時には死んでいた。眼球のないぽっかり空いた穴から血を流す少女。手足が変な方向に曲がって首が折れている少年。お腹を切り裂かれ内臓を抜き取られた少女……」
「うぅ~~~~! うぅ~~~~! うぅ~~~~!」
「とうとう少年は一人になった。周りには、少年少女の死体だけ。手に持っていた懐中電灯の明かりがチカチカッと瞬いて消える……」
おっ? 今、本当に部屋の中の明かりが点滅して、一瞬だけ消えた。
おぉ! 雰囲気出る! ナイスタイミング!
先輩は………泣き出しちゃった。可愛い。もっと泣いて!
「真っ暗になって周りが見えなくなる。少年の意識も次第に暗くなっていった…」
「どうなったのどうなったの?」
お姉ちゃんは興味津々。先輩は戦々恐々。もはや大号泣。
「チュンチュンチュン。小鳥の囀る声で少年は目が覚めた。寝ていたのはボロボロに朽ち果てた洋館の床。開いたドアから朝日が昇っている。ガバっと跳ね起きた少年。辺りを見渡すが、死体はない。死体があった痕跡すらない。しかし、少年は一人ぼっち」
夢オチなの、と物足りなさそうなお姉ちゃんに、私はニヤッと笑う。
話は続きがあるのだ。と言っても、アドリブだから今考えたんだけど。
「でも、床に落ちている懐中電灯は人数分ある。あれは現実だったと悟った少年は、悲鳴を上げながら洋館を飛び出して行った。恐怖で悲鳴を上げ続ける。わき目も振らず逃げ出す少年の口元は吊り上がって、狂気の笑みが張り付いていた………おしまい」
「おぉ! モヤモヤで終わる怪談話! これはこれでアリ!」
「いやぁ~アドリブにしては良かったでしょ?」
「えっ!? 今のアドリブだったの、妹ちゃん!」
「そうだよー。先輩! どうでしたか!?」
私は縛られた先輩を見る。先輩は瞳からポロポロと涙を流していた。
嗚咽を漏らし、大号泣。本当に怖かったようだ。特に、ちょうどいいタイミングで部屋の明かりが点滅したところが。
縛られた先輩を解放してあげると、私にむぎゅ~っと抱きつき、グリグリと顔を押し付ける。
「ご、ごわがっだよぉ~!」
「あ~怖かったでちゅかぁ~。よしよし~。私がついていますからねぇ~」
可愛らしく号泣する先輩の頭をナデナデする。幼児退行した先輩は可愛い。私が怖い話をして虐めた張本人だと言うのに私に縋りついてくる。
自分で虐めて自分で慰める。ふっふっふ。完璧な計画!
少し落ち着いた先輩が私から離れる。残念。もっと先輩を可愛がりたかったのに。
涙で瞳をウルウルさせている先輩は私の中の母性本能とSの心を刺激する。あぁ…可愛がりたい。もっと虐めたい。甘やかして可愛い顔を見たい。
突然、部屋の中が真っ暗になった。停電だ。
「きゃぁぁああああああああああああああああああ!」
先輩が可愛らしい悲鳴を上げて私に抱きついてくる。ガクガクブルブルと震えている。
今ちょうど、明かりが真っ暗になる怪談話をしたばかりだもんね。そりゃ怖いか。
先輩は私のおっぱいに顔を埋め、グリグリと押し付けている。両手は私のお尻をモミモミと……。
あっ………暗闇でそんなにおっぱいやお尻を刺激されたら………変な気分になっちゃう!
先輩って怖がると無意識にスケベモードに入るんだよねぇ。
先輩! もっとして!
「あれっ? お姉ちゃんは?」
お姉ちゃんの気配がない。どこにいるんだろう? まだ目が慣れていないから全く見えない。
先輩も心配になったようだ。私のおっぱいから顔を離し、恐る恐る暗闇を探している。
「ここにいるわよ~」
お姉ちゃんの声がした途端、暗闇の中にボワァッと浮かび上がる白い顔。幽霊のようだ。
「ぴぎゃぁぁぁああああああああああああああああ!」
スマホのライトで浮かび上がったお姉ちゃんの顔に驚いた先輩は、再び私のおっぱいに顔を埋め、ガクガクブルブルと震えながら大号泣をするのであった。
ちなみに、停電の原因は、配電施設近くの電線が倒木によって切れたためだったらしい。
復旧に何時間もかかり、その間先輩は一切私から離れようとはしなかった。
幼児退行してどこにでもトコトコとついて来る先輩は、とてもとても可愛かったです。
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怪談は本当にアドリブで考えたので超テキトーです! by作者
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