第185話 お尻と後輩ちゃん

 

「もう! 急に先輩のSっ気を前面に出さないでくださいよ! 初めてでびっくりしました! ゾクゾクしちゃいました! 私たちも心の準備は必要です! 必要なのです!」



 後輩ちゃんがブツブツと呟いて、不満を表すためにペチペチと叩いている…………桜先生のお尻を。


 桜先生はお尻を叩かれてビックンビックン痙攣している。


 声も出せないくらい快感で悶えている。


 まあ、正確には俺が普通のマッサージをしている桜先生を後輩ちゃんがお尻をペチペチしているのだ。


 俺が後輩ちゃんに『ひじゃまくら』、桜先生に『ひざまくりゃ』をした後、マッサージをされて癒されたい、とのご要望があり、桜先生から先にマッサージを始めた。


 うつ伏せになった桜先生の素足をモミモミし始めた途端、ビックンビックン痙攣する桜先生。


 うん、いつものことだ。俺がマッサージではいつもの光景だ。


 ………………………何故だっ!?


 と、取り敢えず、マッサージを続ける俺。快感でビックンビックン痙攣する桜先生。暇な後輩ちゃん。


 だから、後輩ちゃんはブツブツと文句を言いながら桜先生のお尻を叩いている。


 なんで後輩ちゃんは桜先生のお尻を叩いているんだろう?



「ヘタレな先輩はずっとヘタレててくださいよ!」


「じゃあ、ずっとヘタレます」


「なんでですか! もっとガツガツしてくださいよ!」



 えぇー。俺、どうすればいいの? ヘタレ? ガツガツ? ヘタレガツガツ?


 ペチペチと叩いていた後輩ちゃんは、今度は桜先生のお尻を優しく撫で始める。


 慣れた手つきでテクニカルに8の字を描きながら撫で始める。緩急もつける高度な技術テクだ。


 桜先生はもっとビクビクビクビク痙攣する。



「くっ! 先輩はSっ気を持っていたとは……。本気の先輩から何となく感じていましたけど! わかっていましたけど!」


「嫌だったか?」


「どこがですか!? 超絶かっこよかったですよ! 私の中のMっ気と女が刺激されてゾクゾクしたじゃないですか! …………って、何言わせてんですか、このヘタレ!」



 えぇー。後輩ちゃんが自爆しただけだよな? 今のは俺に酷くない?


 俺は不満げに思いながらも桜先生の身体をモミモミする。


 危ないくらいビクビクしている桜先生。俺からは顔が見えないが、絶対に見てはいけない顔になっているだろう。


 なんか枕に涎のシミができ始めているし………それ、俺の枕なんだけど。



「ですが、悩みますね。Sの先輩かMの先輩か。本当の私はちょっとMなので、Sの先輩に乱暴にされるのも………でも、Mの先輩を揶揄うのも捨てがたい……先輩! 私はどうしたらいいですか!?」


「後輩ちゃん、取り敢えず、その話題から離れようか」


「えぇー! 非常に非っ常に大切なことですよ!」


「じゃあ、今すぐSになってやろうか?」



 ちょっとSっ気を出してみる。


 ビックゥッと身体を震わせて、肌をピンクに染める後輩ちゃん。


 今にも気絶しそうだ。後輩ちゃんには刺激が強すぎるらしい。


 いつもの俺に戻ると、後輩ちゃんは、ふぅ、と息を吐いて八つ当たりを開始する…………桜先生のお尻に。



「だぁ~かぁ~らぁ~! 不意打ちは卑怯だって言ってるでしょうがぁー! 私をどんだけキュンキュンさせて、ゾクゾクさせて惚れさせるつもりですかぁー! 私の心臓が持ちませんってばぁー!」



 後輩ちゃんが不満?を桜先生のお尻にぶつける。ペチペチ、ナデナデ、ペチペチと途中テクニカルに撫でながら、丁度いい力加減で叩いている。


 桜先生は新たな扉を開かないよね? それだけが心配なんだけど。


 俺は揉むたびにビックンビックン痙攣している桜先生を問答無用でモミモミする。



「俺は後輩ちゃんをどこまでも惚れさせるつもりなんだけどなぁ」


「うぅ~~~~! 付き合い始めてから、先輩が言葉責めをしてきます…」


「嫌か?」


「嫌なわけないじゃないですか…。でも、でも! 心臓が……私の心臓が…」


「何回でも葉月の心臓を撃ち抜いてやるぞ。葉月の可愛い顔を見たいからな」



 Sっ気を出してニヤリと笑ってみる。


 でも、心の中では、何このセリフ、と恥ずかしがっております。


 俺、ヤバいんだけど。超絶痛い奴なんだけど。


 痛い俺は後輩ちゃんに突き刺さったようだ。



「あぁぁあああああああああ! もぉぉおおおお~~~~~~~~! 先輩のばかぁぁああああああああ! あほぉぉおおおおおおおお! ヘタレぇぇぇえええええええ!」



 後輩ちゃんが壊れた。桜先生のお尻に顔を押し付け、グリグリとしながら叫んでいる。


 なんか後輩ちゃんのテンションが壊れている。台風だからかな? 低気圧だからかな?


 これはこれで可愛いので、もっと身悶えてください。


 後輩ちゃんが顔をグリグリするたびに、桜先生はビックンビックン痙攣している。


 俺は気にせずモミモミする。



「可愛い可愛い超絶可愛い俺の彼女さんや?」



 ピクッと震えた後輩ちゃんが、桜先生のお尻にグリグリと押し付けていた顔をちょこっと出した。


 頬を赤く染めて、綺麗な瞳を潤ませてムッとしている。



「なんですか、超絶ヘタレでかっこいい私の彼氏さん?」


「そろそろ姉さんのマッサージが終わるのですが、彼女さんはどうなさいますか?」


「………お願いします、先輩の性感マッサージ」



 俺がしているのは普通のマッサージであって、決して性感マッサージではない!


 いそいそと桜先生の横にうつ伏せになった後輩ちゃん。


 俺は桜先生のマッサージを終わって、後輩ちゃんの足の裏からマッサージを始める。


 途端に、ビックンビックン痙攣し始める後輩ちゃんの身体。


 お隣に寝転んで、快感で痙攣し続けている桜先生と同じ状態になるまでにそう時間はかからなかった。


 やっぱり俺のマッサージって異常だよなぁ。普通のマッサージなのに……普通のマッサージにぃ~!


 声も上げられず、気持ちよさそうに横になっている後輩ちゃんを、俺は遠い目をしながら技術を総動員させてマッサージするのだった。


 マッサージが終わり、復活した二人は性欲……じゃなくて疲労がたまった筋肉が解されたのか、お肌が艶々と潤っていた。

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