第166話 乱入者たちと後輩ちゃん

 

 混浴の露天風呂に水着を着て入っている俺と後輩ちゃん。


 後輩ちゃんが身体的にも精神的にも、のぼせそうになったため、一旦離れて身体を冷やしていた。


 俺は一人湯船に浸かっている。さっきまで冷やしていたけど、ちょっと冷えすぎたからまた温まっている。


 白い水着姿の後輩ちゃんはまだ湯船の縁に座り、膝下だけ白濁した温泉に浸けて、時折チャプチャプさせている。


 ビキニから覗く真っ白で程よい肉付きの太ももが俺には眩しすぎる。でも、目が惹きつけられてしまう。


 後輩ちゃんの腰回りも、お腹も、胸も、肩も、首も、顔も、髪も、全てが俺には刺激が強すぎるのだが、一切目が離せない。俺もお年頃の男なのだ。


 ここが旅館ではなく家だったら、即押し倒している。


 両足で温泉のお湯をチャプチャプさせている後輩ちゃんは、セミロングの黒髪を耳にかけながら問いかけてきた。



「せ~んぱい!」


「………なんだ?」



 俺はライトアップされた幻想的な空間に浮かび上がる女神に見惚れながら、何とか返事をすることができた。


 後輩ちゃんは悪戯っぽく微笑んだ。



「ただ呼んでみただけです!」


「………そうか」



 クスクス笑う後輩ちゃん。俺はまた見惚れてしまう。もう何度目かわからない。


 ボーっと見つめながら、こういう恋人っぽいやり取りもいいものだ、と気恥ずかしくなりながら思った。



「おぉ! そうです!」



 ポンッと手を打って、何やら思いついた後輩ちゃんは、スクっと立ち上がり、浴槽を背もたれにしていた俺の背後に移動する。


 何をするのかなぁっと思っていると、再び湯船の縁に腰掛け、白くて綺麗な脚を俺の両肩に乗せてきた。


 俺の後頭部から後輩ちゃんの太ももに挟まれる。後輩ちゃんは湯船の縁に座り、俺はその一段下の湯船の中に浸かっているけど、まあ、座っている肩車みたいなやつ?


 肉付きの良いスベスベもちもちふわふわの後輩ちゃんの太ももが俺の理性を削り取っていくぅぅぅぅうううううう!



「こ、後輩ちゃん!?」



 俺は後輩ちゃんの太ももに挟まれて首から上を動かすことができない。とても気持ちいいけど……。



「いやー、ノリと勢いでやってみましたけど、結構恥ずかしいですねぇ。先輩がちょっとでも頭を動かすと、私のイケナイところに刺激が……」


「やめぇい! 下ネタは止めろ!」


「えぇー! 私はえっちな女の子なのです!」


「得意げに言うな!」


「………先輩はえっちな女の子はお嫌いですか?」



 頭の上からあざとい声が聞こえた。


 体勢が違えば、絶対に瞳を潤ませて上目遣いで質問してきたことが簡単に想像できる。


 くっ! ここは何て答えればいいんだ! 真実か!? それとも嘘か!?



「………………大変お好きです」



 くっ! 俺の馬鹿! 真実を言うなんて! でも、しょうがない! だって好きなんだから!



「なら問題ありませんね!」



 後輩ちゃんは引くことも嫌悪することもなく、楽しげに俺の髪を指でクルクルと弄っている。


 うぅ…なんか負けた気がする。嘘を言ったらそれはそれで揶揄ってくるだろうし、本当のことを言ったんだけど、何故か負けた気がする。


 うぅ…後輩ちゃんの太ももやふくらはぎが気持ちいいよぉ……。敗北感が漂う心が癒されるよぉ…。



「先輩が自然ナチュラルに私の脚を撫でています。先輩のえっち!」


「はっ!? つい癖で!?」



 無意識に俺はスベスベの後輩ちゃんの脚をナデナデしていた。いつも後輩ちゃんの頭やお腹を撫でていたのが癖になって、ついつい脚も撫でていたようだ。癖って恐ろしい!


 でも、大変気持ちよかったです! ありがとうございます!



「あ、いや、別に止めなくてもいいですよ。先輩に撫でられるのは、恥ずかしいですけど落ち着くので」


「そうか? じゃあ、お言葉に甘えて」



 本人からの許可も出たので、後輩ちゃんの太ももやふくらはぎをナデナデしていく。


 俺も年頃の男なのだ! 男子高校生なのだ! そういう欲もあるのだ!


 後輩ちゃんは俺の髪の毛をクルクル弄って、俺は後輩ちゃんの脚を撫でるという不思議な時間が過ぎていく。


 まあ、これも俺たちのスキンシップの一つだ。お互いに触れ合う時間が好きなのだ。


 後輩ちゃんが太ももで俺の頭をむぎゅむぎゅと挟んで楽しみ始めたところ、何やら女湯のほうが騒がしくなった。大勢の話し声が聞こえてくる。


 俺たちが固まっていると、ガラガラと扉が開き、水着姿の女性たちが大勢入ってきた。



「失礼しまーす! お邪魔虫でーす!」


「もしかして、ヤッてる? ヤッちゃってる!?」


「おぉっ! 物凄いほどイチャイチャしておりますなぁ。混ざりに来ましたぜ!」



 水着姿の女性たちは俺たちのクラスの女子だった。俺と後輩ちゃんはポカーンと口を開けて固まるだけだ。



「二人が仲良く部屋からいなくなったので、覗きに来ましたー! ついでに、混浴露天風呂のほうにも入りたかったし」


「ごめんね。弟くん、妹ちゃん。一応止めたのよ、お姉ちゃんは」



 最後に、黒いビキニを着た桜先生が入ってきた。


 全員裸ではなくて、水着姿なのは安心した。


 一気に騒がしくなる混浴露天風呂。女性陣はライトアップされた露天風呂に魅入っている。



「うわぁ…ここで告白されたとかロマンティック…」


「いいなぁいいなぁ! 羨ましいなぁ」



 温泉に浸かりながら、口々に羨望の声を上げている。


 ここで、後輩ちゃんが我に返った。俺の頭を跳び箱みたいに手をついて、そのまま立ち上がる。


 俺の目の前に後輩ちゃんのプリッとしたお尻が……。白いビキニが少し食い込んでいる。実にエロい。


 ヤ、ヤバい。鼻血が出そう。


 立ち上がった後輩ちゃんが乱入者たちに怒る。



「ちょっと! なんで入ってきたの! 折角先輩と二人っきりだったのに!」



 仁王立ちしてプンスカ怒る後輩ちゃん。でも、怒られている女子たちは、顔を引きつらせ、今はそれどころではない。



「う、うわぁ…何あの女神」


「ライトアップされた幻想的な背景に絶妙にマッチしてる…」


「さらに、夜空に星と月が輝いてるし」


「ヤバい。女の私でも欲情してきた」



 うんうん。わかるよぉ~。わかるよ、その気持ち! 今の後輩ちゃんは絵画以上に美しいからな。



「美緒ちゃんセンセー! 葉月の隣に立って!」


「んっ? はいはーい!」



 話聞いてるの!?、と叫ぶ後輩ちゃんの隣に、黒いビキニ姿の絶世の美女が並び立つ。


 美少女の後輩ちゃんと美女の桜先生が合わさると、美しさが更に跳ね上がる。


 こんなに美しい光景がこの世界にあったなんて……。もう、俺、死んでもいいかもしれない。



「先輩も何か言ってくださいよ!」


「あぁー、やっぱり出て行ったほうがいいわよね、弟くん?」



 黒いビキニを着た美女と白いビキニを着た美少女が振り返る。


 あまりの驚きに、ザバーッと湯船から立ち上がってしまった。



「………綺麗だ」


「っ!? 不意打ちは卑怯ですってば!」


「あらあら! 弟くんったらもう! …………あらっ?」



 桜先生がとある一点を面白そうに見つめる。女子たちも気づいて、ある一点を見つめる。



「………………おぉ! デカッ!」



 皆が見つめる先は………俺? 正確には俺の下半身? あっ!



「きゃぁぁぁああああああああああああああああああ!」



 俺は悲鳴を上げて白く濁った湯船の中にしゃがみ込む。


 み、見られた? 女子たちにバッチリ見られた? 水着は着ていたけど、ああなっているのを見られてしまった!?


 し、死にたい。誰か殺してくれぇぇええええええ!



「まあ、女のあたしたちでさえムラムラするんだから、颯が興奮するのは仕方ないよねぇ」


「そうそう! 大丈夫大丈夫! プールの授業の時バッチリ見たから!」


「でも、あんな風になってるのは見たことないんだけど。ちょっと興味が……」


「どう? 私と一発ヤッちゃう? 初めてだから優しくしてね?」



 その慰めの視線が物凄く心に突き刺さる。


 というか、プールの授業で見たってどういうこと!? くっ、思い出そうとすると何故か酷い頭痛が……。


 プルプルと震えて、限界を超えた後輩ちゃんがクワァッと目を見開く。



「こらぁぁああああ! 私の彼氏を誘惑するなぁぁぁぁああああ! そして、二人っきりの時間を邪魔するなぁぁぁあああああ!」



 後輩ちゃんが女子たちに飛び掛かっていく。



「おっと! 正妻様のお怒りだぁー!」


「鎮めろ鎮めろー!」



 女子たちは逃げることなく後輩ちゃんを迎え撃ち、水着美少女たちが入り乱れる。


 ふむふむ。これはこれで悪くない。後輩ちゃんも楽しそうだから、しばらく放っておこう。


 水かけ合戦から、胸やお尻の揉み合いになり、最終的には水着奪取合戦が始まった。



「ちょっと! 人数的に不利なんですけど! 圧倒的不利なんですけど! あっ! ダメっ! 脱げるから! 本当に脱げちゃうから!」



 後輩ちゃんが数名の女子たちに胸を揉まれ、抱きつかれ、水着を脱がされそうになっている。


 桜先生は早々に脱がされ、今は全裸状態である。


 まあ、家で全裸になることが多くなっているから、多少は慣れた。お願いだからお風呂の前後は脱衣所で服を脱ぎ着してほしい。


 エロ親父と化した女子たちが後輩ちゃんに群がっている。



「よいではないか~! よいではないか~! それっ!」


「きゃっ!?」



 胸を揉んでいた女子の一人が、後輩ちゃんの隙を見つけて水着を跳ね上げる。


 ポロリしてしまう後輩ちゃん。


 白いビキニで隠されていた後輩ちゃんの綺麗な美乳が……。



「旦那! やってやりましたぜ!」



 キラーンと歯を輝かせてサムズアップする女子たち一同。後輩ちゃんは抱きつかれた女子たちによって、胸を隠すことも湯船にしゃがむことすらできない。


 俺は良いものを見せてくれた女子たちにサムズアップを返す。そして……。



「ぶふぉっ!?」



 鼻から盛大に鮮血をまき散らした。鼻血の勢いのまま後方へと倒れ込んで、ゆっくりとお湯の中に沈んでいく。



「あぁ! 先輩鼻血! 鼻血が!? しっかりしてください! せんぱぁ~い!」



 消えていく意識の中で最後に見たのは、美乳を揺らして心配そうに駆け寄ってくる後輩ちゃんの姿だった。



















<おまけ>



「もう! みんなのせいで先輩が気絶しちゃったじゃん! こんなに大量出血もしてるし! 取り敢えず、お湯から引き上げたけど大丈夫かな?」


「まさか鼻血を噴き出して気絶するとは……ごめんね」


「もういいです! まあ、私も楽しかったし………………って、そこっ! 先輩の水着に手をかけて何をしているの!?」


「あっ、バレちゃった!」


「い、いやー、性欲……じゃなくて知的好奇心が疼いちゃって。こうなってると痛くないのかなぁって」


「弟くんのって、やっぱりすごいわよねぇ」


「あれっ? 美緒ちゃん先生は颯くんのコレをご存じで?」


「そりゃ、お姉ちゃんですから! 妹ちゃんといろいろと……」


「「「きゃー!」」」


「というわけで、颯の颯をオープン!」


「ちょっと! 人の彼氏に何を………………おぉっ!」


「「「…………おぉっ!」」」





 ということがあったとかなかったとか………。


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