第137話 盗撮魔と後輩ちゃん
夕食が終わってゆっくりまったりした時間。
左右から後輩ちゃんと桜先生がもたれかかって、俺を挟んでお喋りをしている。
二人の温もりと柔らかさと甘い香りを感じてしまい、イケナイ気分になってくる。
俺も年頃の男だ。美女と美少女に挟まれたら変な気分になるのは仕方がない。うん、仕方がないことなのだ!
でも、今は色欲よりも羞恥心のほうが強い。
何故なら、後輩ちゃんと桜先生が俺の恥ずかしい写真を見て盛り上がっているからだ!
「きゃー! 弟くん可愛いー!」
「でしょでしょ! お化けにびっくりした先輩の驚いたこの顔! はぁ…可愛い…。他にも叫ぶ先輩に泣き出す先輩、幼児化した先輩など、様々な先輩を通り揃えておりやす! どうだい? そこのお姉ちゃん。安くしときやすぜ!」
時代劇に出てくる軽薄そうな店員みたいな変な口調で、ニヤニヤした後輩ちゃんが桜先生に写真を見せる。
桜先生も後輩ちゃんの妙なノリに乗る。横柄な態度で述べた。
「全部頂こう。金ならある!」
「毎度あり!」
二人は楽しそうに俺の恥ずかしい写真を見て、笑ったり歓声を上げ続ける。
今のは一体何だったのだろうか? まあ、時々訳の分からないノリがあるからそういうものなのかなぁ?
ワイワイキャッキャしながら喋り合う美女と美少女。
間に挟まれた俺は物凄く恥ずかしい。
「あの~? 二人で盛り上がるなら俺いらないよね?」
「いります!」
「いるの!」
「なんで!? 必要ないよね!? お化け屋敷の話をされて、俺、滅茶苦茶恥ずかしいだけなんだけど!?」
「だからです!」
「恥ずかしがる弟くんも愛でているの!」
「逃がしません!」
左右からより一層むぎゅっと抱きしめられる俺。
二人の胸の感触が気持ちいい………じゃなくて! 二人とも俺を揶揄っているだけなのか!? そんなに恥ずかしがる俺を見たいのか!?
二人から逃げようと暴れるが、二人は益々抱きついてきて際どくなってきたから俺は泣く泣く抵抗するのを諦めた。
どっちか片方だけなら何とかなるけど、二対一は卑怯だと思う。
また朝みたいに本気を出そうかなぁ。
俺の心を読んだ後輩ちゃんが笑顔で脅してくる。
「うふふ。先輩? 本気を出そうなんて思っていませんよね? 朝からあれだけお説教したのに足りませんでしたか? 余程お説教されたいみたいですね? 次、先輩が本気を出したら、どうなっても知りませんよ」
「弟くん、流石にアレはダメだと思うの。いや、時々はいいと思うのよ。でも、アレを頻繁にされたら私たちの身が持たないわ」
「俺、何もしてないんだけど。普段抑えている存在感を出しただけなんだけどなぁ……」
「「それが駄目なの!」」
「……はい。ごめんなさい」
今朝は二人がビックンビックンして気絶してしまったからなぁ。
そんなに俺って怖いかなぁ? 二人も気絶したし、本気を出すのは止めておこう。
俺がシュンっとなって一人反省していると、後輩ちゃんと桜先生が何やら小声でコソコソ話をしていた。
「(先輩のあの能力は女を刺激しすぎます! 刺激されすぎて、今抱きしめられているだけでもキュンキュンしちゃうんですけど! 今すぐ気絶しそうなんですけど!? しばらく先輩を襲えなさそう)」
「(それはわかるわ。弟くんのあのオーラはヤバいわね)」
「(うん、ヤバいね。あの即堕ちオーラは卑怯すぎる! まあ、アレはアレで気持ちいいけど…)」
二人は一体何を話しているんだろうか? 二人の顔が真っ赤で、どこか気持ちよさそうで、切なそうで、嬉しそうで、物足りなさそうな表情をしている。
何かを思い出すようにトロ~ンと陶酔した熱っぽい瞳の二人。かなりエロい。
「二人とも? 何を話し合ってるんだ?」
「「別に何も!」」
ふむ。俺が混ざってはいけない話かな? 詳しく聞くのは止めておこう。
後輩ちゃんと桜先生は顔を真っ赤にして、少し挙動不審になりながら話を最初の話題に戻す。
「と、取り敢えず、先輩はそこで大人しく私たちを抱きしめていてください! 私たちは隠し撮りした先輩の盗撮写真で盛り上がっていますので!」
「わかったよ…………って、盗撮写真だと!?」
「あっ…!」
しまった、という顔をする後輩ちゃん。
もしやとは思っていたけど、やっぱり盗撮写真か!
まあ、俺が知らない写真ばかりだったから、ほぼ盗撮だとは思ってたけど!
「この超絶可愛い盗撮魔ちゃんめ!」
「ふっふ~んだ! ええそうですよ! 私は先輩専属の超絶可愛い盗撮魔ちゃんですよーだ!」
開き直った後輩ちゃんは、ドヤ顔でポヨンと平均より大きな胸を張っている。
俺専属の盗撮魔ってどういう事なんだろうな。まあ、後輩ちゃんだから許すけど。
くっ! こうなったら俺も対抗するしかないな!
目には目を歯には歯を。盗撮には盗撮を!
「ふっふっふ。これを見たまえ!」
俺はある動画を後輩ちゃんと桜先生に見せる。
桜先生は、きゃー、と大歓声を上げ、後輩ちゃんは驚きで口をパクパクしている。
「な、なんで観覧車キスの動画があるんですかぁー!?」
「動画を録ったまま忘れていて、ずっと録画していたのだ!」
「この盗撮魔! 恥ずかしいから止めてください! そして、私にその動画を送ってください!」
「はいはい……って、あれ? 俺のスマホは?」
いつの間にか、手の中のスマホが消えていた。
キョロキョロと探すと、俺のスマホは桜先生の手の中にあった。
一体いつの間に……?
「きゃー! キスしてる! 良い雰囲気でキスしてる! きゃー! 何この大人のキス! すごーい! 濃厚~! きゃー!」
大興奮の桜先生。目がキラッキラ輝いている。
鼻血が出そうで心配になってくる。
あっ、鼻から真っ赤な血が一筋垂れた。
「姉さん鼻血鼻血!」
「おっと。つい興奮してしまって……」
鼻にティッシュを詰め込んで、食い入るように動画を見続ける桜先生。
動画の中では俺と後輩ちゃんが濃厚なキスを続けている。
流石に恥ずかしい。
何故俺はこの動画を見せてしまったのだろう。後悔が押し寄せてくる。
「ふっふっふ。お姉ちゃん、それくらいで鼻血を出していたらダメだよ! この写真を見るのだ!」
得意げに後輩ちゃんが桜先生に写真を見せる。
俺も見たいのに見せてくれない。
盗撮魔ちゃんが撮影した俺の盗撮写真であろう写真を見た桜先生の時が止まってしまう。
「こ、これは……弟くんのシャワーシーン!?」
「モザイクなしの無修正版です!」
「後輩ちゃん!? 流石にそれはダメだろ!」
「大丈夫ですよ! 上半身だけですので!」
見せてくれた写真は、確かに俺のシャワーシーンで、上半身しか写っていなかった。
なら安心安心………………って、ちがーう! ダメだろうが! というか、いつ撮ったんだ!?
「妹ちゃん……グッジョブ! ブホッ!」
サムズアップした桜先生の鼻から大量の血液が噴き出した。
うん、まあ、ポンコツ残念教師だし、驚くことはない。
俺は冷静に桜先生にティッシュを手渡す。
後輩ちゃんはニヤニヤしたまま画面をスライドさせる。
「まだまだありやすが、お姉ちゃん、どうしやすか?」
「全部貰うわ!」
「毎度あり!」
また後輩ちゃんが変なノリになった。
桜先生は目を血走らせて、鼻から血を噴き出していてちょっと怖い。
釘を刺しておかないと、二人とも暴走しそうだな。
「二人とも、盗撮するのも写真を貰うのもほどほどにしておけよ。もちろん、俺以外には絶対するな! 普通に犯罪だからな!」
「「はーい! 先輩 (弟くん)以外興味ありませーん!」」
まったく! 返事だけはいいんだから。
その後しばらく、二人は俺の盗撮写真で盛り上がっていた。
「そこのお姉ちゃん、先輩のシャワーシーンではこういう写真もありやすぜ?」
「貰うわ!」
「毎度あり!」
「………ねえ、妹ちゃん? さっきからそのキャラどうしたの?」
「さあ? ただの気分。特に意味はありません!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます