第132話 遊園地デートと先輩 その8
恐怖のミラーハウスから出てきた私たち。
先輩はガタガタと震えて私にしがみつき、顔を真っ青にしている。
「こわい………こわいよぉ…………もういやぁ………」
残念ながら今からが本番です。さぁ! パラダイスタイムの幕開けだー!
私はルンルン気分で幼児退行している先輩を引っ張ってお化け屋敷へと向かう。
「先輩。どのお化け屋敷に行きたいですか?」
「………行きたくない」
「ふむふむ。夜の学校をテーマにしたお化け屋敷ですね! では、早速逝きましょう!」
「嫌だ! 俺は何も言ってない! それに、なんか字がおかしくなかったか!? いやぁぁあああああああああああああああ! 誰か助けてぇぇええええええええええ!」
泣き叫ぶ先輩ったら可愛いですねぇ。もっとイジメてあげたくなっちゃう。
もっと私のために泣いて、叫んで、絶望して、震えて、幼児退行して、抱きついて来てください。私がたっぷりと甘やかして可愛がって愛でてあげますから!
時々、ほんの極まれに、私も先輩を驚かしちゃいますけど、些細なことですよね!
くふっ。あぁ~もう我慢できない。
では、お化け屋敷に入りましょう!
私はガタガタと震えて腕にしがみついている先輩を引き連れ、係員さんにちょっと引かれながらお化け屋敷の中に入った。
お決まりように勝手に閉まる背後のドア。
先輩がビクッと飛び上がり、私の身体で顔を隠す。
『ようこそ!』
後ろから声がした。
ドアの脇に静かに立っていたのは緻密なところまで再現された老人のロボット。瞳を赤く光らせ、いい感じに髭がカールしている。
胸元には『校長』と書かれたネームプレートがあった。
「校長先生は今日も絶好調ですね!」
『アハハハハハハ!』
無表情で笑い声を上げるロボット校長先生。私もつられて笑い始める。
やっぱり絶好調だ。ちなみに私も絶好調。だって、隣で先輩が泣きそうなんだもん!
「ひぇ~~~~~~~~~!」
あぁ~可愛い。もう先輩が可愛すぎて私がおかしくなりそう。
ウルウルと瞳を潤ませて、私から離れないようにむぎゅっと腕を掴んでいる先輩。いつもかっこいい先輩がこんなに可愛いなんて神か!? 先輩は神なんですか!?
いや、私の王子様だった。
「危ない……このままだと思考がおかしくなりそう。それに、ずっと突っ立って先輩を眺めていそう。さっさと進んでいきますか! さあ先輩! レッツゴー!」
「いやぁぁあああああああああああああああ!」
まずは、教室。制服を着たマネキンが椅子に座っている。
何故か中央の椅子だけがポツーンと空いている。
黒板にふわっと文字が浮かんできた。
「真ん中の椅子に座れ、だそうです。では、先輩どうぞ!」
「なんでボク!? 葉月お姉ちゃんが座ってよ!」
「ぐっはぁっ!?」
幼児退行した先輩。私の胸がズズズズズッキューンとマシンガンで撃ち抜かれた。
何この可愛い生き物! 私、逆らえない。
「じゃ、じゃあ、座りますね」
椅子を引いて席に座った、その途端、マネキンが一斉に私のほうを見た。
全て無表情。おぉ。これはなかなかいいですなぁ!
先輩は目を瞑る暇がなかったようだ。ばっちり見てしまい、目を見開いて固まっている。
ジジッと雑音が響き、黒板に映像が映った。
真っ赤に充血した片目だけがじっと映る。そして、私たちを見つめている。
「ひぃぃいいいいいいいいいいいいいい!」
「あははははは! あの黒板、電子画面なんですね! よくできてますねぇ。じゃあ、次に行きましょうか!」
私は先輩を引き連れて教室を出ようとした。
その瞬間、ドアに一番近くに座っていたマネキンが大声を上げて立ち上がった。
『うぁわあああああああああ!』
「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
「あははははは! マネキンじゃなかったんですね! お疲れ様でーす!」
どうやら人間だったらしい。無表情で手を振ってくれたので、手を振り返して私たちは教室を後にした。
私はシクシクと泣いている先輩を引き連れて、夜の学校をどんどん探索する。
音楽室ではピアノをはじめとする楽器が勝手に鳴り始める。
「ひゃぁぁあああああああああああああああああああああああああ!」
「うふふふふ!」
美術室では、肖像画とデッサン用の石膏像が動いて見つめてくる。
「ひょぇぇえええええええええええええええええええええええええ!」
「くふふふふっ!」
理科室では人体模型と骨格標本がカタカタと動いている。
「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
「相変わらず可愛い悲鳴ですね! あっ! 人体模型さんは人間なんですね! お勤めご苦労様でーす!」
パソコン室では画面が一斉に電源が入り、女性の姿が浮かび上がる。
『コッチニオイデ』
「ぴぎゃぁぁああああああああああああああああああああああああああ!」
「ふむ。ネットの世界に行くのでしょうか? もしかして、彼女はAIなんでしょうか?」
職員室では痩せこけた青白い顔の教師たちが、何かに憑りつかれたように仕事をしている。
「ひゃぅぅぅうううううううううううううううううううううううううう!」
「うわぁー。教師って超ブラックなんですかねぇ? 公務員だから残業代出ないんですよぉ。お姉ちゃん大丈夫かなぁ? 帰ったら聞いておこう。あっ!? まさか入り口にいた校長先生は一人だけ帰ろうとしていたんじゃ! 校長先生最低ですね」
長い廊下を歩いていると、目の前から無表情で全力疾走してくるセーラー服を着た女子生徒が、私たちの真横を一陣の風になって走り去っていく。
「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
「ふむ。あの金メダリストのボルト選手のような走り方……やりますね。彼女、東京オリンピックで金メダルを狙えるのではないでしょうか? 頑張ってください!」
私が走り去った女性にエールを送っていると、私の腕にしがみついた先輩がガタガタと震えながら抗議してきた。
「後輩ちゃん…さっきから一体何なんだよ!」
「なにって、笑い疲れたので思ったことを述べようかなと。うるさかったですか? うるさいのなら黙りますけど」
「………………そのままでいいです。後輩ちゃんが黙ったらそれはそれで怖いです」
ですよね! ホラーは喋ったり大声を出したほうが怖くないんです!
静寂って逆に怖くてドキドキしますよねぇ。
まあ、私は場合は別のことを考えていないと、超可愛い先輩を襲いたくなるから喋っているんですけど!
「先輩? ちょっと腕が痺れてきたので、反対の腕に掴まるか、別の体勢にしてくれませんか?」
「ごめん後輩ちゃん!」
申し訳なさそうに体勢を変えてくる。
私は後ろからギュッと抱きしめられた。
私は先輩に抱きしめられながら、二人でよちよちと歩かなければならないらしい。
ギュッとされて温かくて気持ちよくて安心していい香りがして、これはこれでいいけど、私から先輩の顔が見れないじゃん! なんという事だ! 私の楽しみが…!
だから、私は先輩を驚かすことで不満をぶつける。
「わぁっ!?」
「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
「あんっ♡」
恐怖した先輩が私の両胸をむぎゅッと揉みしだいた。
思わず漏れ出る私の喘ぎ声。自分でも驚くほど女の声だった。
私ってこんな声が出るんだなぁ………………あっ、先輩の性感マッサージでいつも喘いでた。
恐怖で震える先輩は無意識に私のおっぱいをモミモミと揉み続ける。
「あんっ…せん…ぱい………ひゃんっ♡」
「こ、後輩ちゃんごめん!」
先輩が焦った様子で胸から手を離した。
ちょっと残念。折角気持ちよかったのに。
いつもなら恥ずかしがる私なのだが、今日の私は違う!
可愛い先輩を愛でてテンションが上がっている私は超イケイケモードなのだ!
「先輩……もっと触ってくれませんか?」
「っ!?」
「私、我慢ができなくて…」
「ダ、ダメだ後輩ちゃん! 家に帰るまで我慢してくれ!」
ですよねー。まあ、欲望と葛藤している先輩を見ることができたので良しとしますか。
今夜楽しみにしていますね、先輩♡
パチリと可愛らしくウィンクすると、先輩は私に見惚れて固まってしまう。
本当に可愛いですね。
「今日の夜のためにさっさと脱出しますか! レッツゴーですよ、先輩!」
「お、おぅ」
こうして、私は先輩に後ろから抱きしめられながら、よちよちと歩いてお化け屋敷の出口を目指すのであった。
『オォォォオオオオオオオオオオオオオオ!』
「ひゃぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
「あんっ、ひゃっ、せんぱいっ、だ、だめっ、ひゃんっ♡」
出口にたどり着くまでに、何度も胸を揉まれ、先輩の恐怖の悲鳴の影で私は小さく喘いでいたとさ。
気持ちよかったです。
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