第128話 遊園地デートと後輩ちゃん その4 観覧車キス 二回目

 

 観覧車に乗っている俺と後輩ちゃん。観覧車がとうとう頂上付近に近づいてきた。


 真っ赤な顔の後輩ちゃんが俺の腕に掴まって、前方の何かを見て思わず声を出した。



「………おぉ!」


「んっ? どうした? ………おぉ!」



 後輩ちゃんの視線の先を見ると、隣のゴンドラの中が丸見えになっていた。


 大学生らしき男女のカップルの濃厚なキスシーン。思わず凝視してしまう。


 相手を食べているのではないかと思うくらい、お互いの口に吸い付いている。


 は、激しい。外国のドラマや映画のように生々しいキスシーン。すごいな。勉強になります。


 俺と後輩ちゃんは、顔を真っ赤にして口をポカーンと開けながら、隣のゴンドラのキスシーンを眺めていた。


 ふと気になって、俺たちは同時に振り返る。すると、やはり後ろのゴンドラでも繰り広げられているカップルの愛の口付け。全て丸見えだ。



「………先輩? 私たちもしますか?」



 後輩ちゃんの中で、期待と羞恥がせめぎ合っている気がするのだが、気のせいだろうか? 両隣のカップルに触発されたか?



「………止めておきます」


「そうですか」



 まあ、俺もちょっとキスしようかなぁって思ったけど止めておいた。見られたら恥ずかしいし。


 顔を真っ赤にして、安堵や落胆を入り混じらせた複雑な表情の後輩ちゃんが自らのバックをゴソゴソと漁り始めた。


 青狸のロボットのように後輩ちゃんがドヤ顔で取り出したのは、普通の伊達メガネだった。


 スチャッとメガネをかけて、フレームをクイっとする。



「超絶可愛い後輩ちゃん、メガネっ娘モードです!」



 メガネをかけた後輩ちゃんのドヤ顔。可愛い。超可愛い。超絶可愛いんですけど!? なにこの可愛い生き物!? お持ち帰りしていい?



「ご感想は?」


「………超可愛いです」


「そ、そうですか。ちょっと恥ずかしいです」



 メガネをかけた後輩ちゃんが恥ずかしそうに照れている。なにこの可愛い生き物? もう持って帰っていいよね?



「でも、なんで急にメガネっ娘になったんだ?」


「折角人を見下ろせる場所に来たのですから、あのアニメ映画の大佐に成りきろうかと思いまして。まあ、先輩にメガネっ娘モードを見せびらかしたかったというのもありますが」



 後半が主な理由なんだろうけど、後輩ちゃんが恥ずかしそうなのでこれ以上は追及しない。でも、グッジョブです!


 さて、後輩ちゃんが言った”あの大佐”とは、天空に浮かんだ城に出てきた大佐かな? メガネと言うか、サングラスをかけてたし。


 後輩ちゃんが外を眺め、人を馬鹿にした嘲笑を始める。演技力凄いな。



「フハハハハ! バルス!」


「後輩ちゃんちがーう! セリフが違うよ! 大佐はそのセリフ言ってないから!」



 まさかの後輩ちゃんのボケ。俺のツッコミが炸裂した。


 ノリノリの後輩ちゃんは指を鉄砲の形にして俺の心臓に向ける。



「三分間待ってやる! バキューン♡」


「ぐはっ!」



 後輩ちゃんの可愛いウィンクと同時に、俺の心臓ハートが撃ち抜かれた。


 いや、弾を当てちゃダメでしょ。このタイミングで言うセリフでもないし。三分も待ってないし。待ってたの0.3秒くらいだったよね?


 ノリノリの後輩ちゃんは止まらない。



「目がぁぁー! 目がぁぁぁぁぁぁぁー!」


「有名だけど違う! この状況で言うセリフじゃない!」



 後輩ちゃんが目を押さえて暴れたので、俺たちの乗ったゴンドラが揺れている。ちょっと怖いな。


 ノリノリだった後輩ちゃんが、仕方がないですねぇ、と肩をすくめている。



「先輩の要望を聞いてあげましょう。いきますね。フハハハハ! 見ろ! 人がゴミだ!」


「そうそう………んっ? 葉月大佐? アニメの大佐は”人がゴミのようだ”とは言ったけど、”人がゴミだ”とは断言していないのですが?」


「私のオリジナルです! どやぁ!」


「可愛いドヤ顔だな! でも、流石に断言するのは止めたほうがいいかと…」


「はーい! まあ、先輩の反応を楽しんでただけですからね。ナイスツッコミでした!」



 後輩ちゃんのサムズアップ。輝く笑顔が美しい。後輩ちゃんが楽しめたようで何よりです。俺も楽しむことができました。まさか後輩ちゃんがボケるとは思っていませんでしたよ…。


 俺たちの乗ったゴンドラは、いつの間にか頂上を通りすぎ、下りに入っている。


 メガネっ娘モードの後輩ちゃんがネコのように俺の腕にすり寄ってきた。いつもと違う後輩ちゃんに緊張してしまう。


 何故メガネ一つでこんなに印象が変わるのだろう?


 俺が緊張しているのに気づいたのか、後輩ちゃんがニヤニヤと笑い始める。



「あれ~? せんぱぁ~い? なに緊張しているんですかぁ~? もしかして、メガネっ娘の私がそんなに可愛いんですかぁ~? ほれほれぇ~! メガネっ娘の超絶可愛い後輩ちゃんの笑顔ですぞぉ~! ニパァー!」



 くっ! なんて眩しい笑顔なんだ! 可愛すぎて視線を逸らすことができない!


 ちょっと可愛すぎて無理! これはもう、襲うしかない! 我慢できない!


 俺は後輩ちゃんの身体をちょっと荒々しく抱きしめた。



「ふぇ、ふぇっ!?」


「全部可愛い葉月が悪いんだ」


「は、はいっ!?」



 声を裏返して、驚いている後輩ちゃん。何が起こっているのか理解していないようだ。


 俺は一気に畳みかける。



「後輩ちゃん。二度目のキスはどれがいい? 濃厚なキス? 激しいキス? ディープ・キス? それとも、フレンチ・キス?」


「ぜ、全部同じじゃないですかっ!? せ、先輩? どうしちゃったんですか? 顔がかっこいいです。いつも以上に顔が超絶かっこいいですぅ~!」


「全部可愛い後輩ちゃんが悪いんだ。ごめん。今ちょっと抑えられない。受け止めて」


「はいっ? んぅっ!? ん~~~~~~~~~~~~~~~っ♡」



 後輩ちゃんへの愛しさが限界を超えた俺は、問答無用で後輩ちゃんにキスをした。


 二度目の観覧車キスは濃厚で激しいディープなキス。大人のキスだ。


 舌が絡み合う淫猥な音が狭いゴンドラの中に響いている。


 後輩ちゃんは俺にされるがままだ。一切抵抗しない。抵抗する素振りも気配もない。


 キスをすれば後輩ちゃんもおずおずとだが応えてくれる。



「しぇ、しぇんぱい……らめぇれすぅ~♡」



 観覧車から降りる頃には、後輩ちゃんはキスでトロットロに蕩けていましたとさ。


 後悔も反省もしていない! 全て可愛い後輩ちゃんが悪い!




 ………すいません。全部俺のせいですよね。後輩ちゃんごめんなさい。


 観覧車キスとメガネっ娘モード、実に最高でした!


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