第122話 ビキニと後輩ちゃん

 

 俺はベッドの上でシーツに包まり、一人シクシクと泣いていた。



「グスッ…痴女に…痴女二人に襲われた……シクシク……」


「失礼な! 私は処女です! ヴァージンです! 生娘です!」


「お姉ちゃんだって処女よ! 三十歳で未経験よ! 魔法使いじゃなくて魔女よ! ぐすんっ」


「お姉ちゃんが地雷を踏んじゃった! だ、大丈夫! 先輩が責任取ってくれるから!」



 シーツから顔を出すと、シクシクと泣いている桜先生を後輩ちゃんが慰めていた。


 先生を抱きしめながら後輩ちゃんが俺をキッと睨む。



「先輩! 私とお姉ちゃんの責任取ってください!」


「そーだそーだ! 私の心を傷物にした弟くん! 責任取りなさい!」


「姉さんは泣いているんじゃなかったのかよ」



 やっぱり泣き真似だったらしい。涙の跡も一切ない。


 後輩ちゃんに頭を撫でられながら元気よくヤジを飛ばしている。


 全く、後輩ちゃんと桜先生は仲が良すぎ。二対一は卑怯だと思います。



「どちらかと言うと、襲われた俺の責任を取ってほしい……あっ」



 ヤバい、と思った瞬間にはもう遅かった。


 ちゃんと俺の言葉を聞いていた後輩ちゃんと桜先生の瞳がキランッと光る。



「この超絶可愛い後輩ちゃんが責任を取ってあげましょう!」


「この絶世美女であるお姉ちゃんも弟くんの責任を取ってあげる!」


「「だから、安心して♡」」



 や、やられた。責任を取られてしまった。もう逃げられない。


 言質を取った後輩ちゃんと桜先生は、いえーい、と嬉しそうにハイタッチしている。


 後輩ちゃんは責任取るつもりだったけど、桜先生はどうすればいいんだ?


 見た目は絶世の美女だけど、中身はポンコツだし、家事能力皆無だし、本人も最近は男に興味なくしているし……本当にどうしよ。


 こういう時は………考えるの止めよう。現実逃避だ現実逃避。


 未来の俺よ! 頼んだ! 俺は未来の自分に全てを託す! 頑張れ俺!



「先輩。賢者モード終わりました?」


「賢者モード言うなっ! 後輩ちゃん。だんだんエロくなってないか?」


「私は元からエロかったですよ? エロくて可愛い後輩ちゃんなのです! 女の子にも性欲ありますし、それに最近私の中の女を刺激される出来事があったので、欲求がちょっと……。まあ、今日、先輩の裸や筋肉をお触りしてだいぶん解消されましたけど」


「弟くんってマッチョよねぇ。お姉ちゃん筋肉フェチじゃなかったんだけど、弟くんの身体を見たら涎が出てくるんだけど。それに、プールの弟くんって何!? あれ、本当に危なかったのだけど!」


「あれは滅多に出さない先輩の本気モード。いや、あれが普通なんだけど、先輩は目立つのが嫌いと言うか、疲れるそうなのでいつも抑えているの」


「あれは危険ね」


「うんうん。危険だね」



 女性二人が頷き合っている。意見が一致したらしい。


 そんなに危険なのか? そんなに怖かった?


 このままずっと抑えておこう。あれって精神的に疲れるし。



「あっ! プールで思い出した。先輩! 私のビキニ姿みたいですか? 見たいですよね? 見たいんですね? じゃあ、着替えてきますねー!」


「折角ならお姉ちゃんもまた水着着る! 新しく買ったのに一回だけじゃもったいないし」



 楽しそうにドタバタと寝室を出て行く後輩ちゃんと桜先生。


 俺は一人静かな寝室に残される。



「俺、何も答えていないんだけど……」



 俺の呟きは誰にも届くことなく静かに消えていった。


 まあいっか。着てくれるのなら楽しみに待っていよう。


 俺もお年頃の男だから!


 桜先生と後輩ちゃんという絶世の美女と超絶可愛い美少女の水着姿には大変興味がある。


 興味がなかったら男とは言えない!


 しばらく時間もかかるだろうし、脱がされた服でも着ようかな。


 俺はベッドから抜け出し、放り投げられた服や下着を手に取る。


 汗で冷たい。新しいのに替えるか。


 タンスから新しい服を取り出そうとした瞬間、ドアがバタンッと勢いよく開かれた。



「ジャジャジャジャーン! どうですか、先輩? 結構自信があるんです!」


「どうどう? 弟くん? お姉ちゃん綺麗?」



 目の前に美の女神が二人も降臨した。


 桜先生はプールに着ていたのと同じ黒いビキニ姿。


 零れそうな巨乳の谷間がすごい。あの巨乳なのにほっそい腰回り。そして、ちょっと大きめの形の良いお尻。


 プールの時には着ていなかった透け透けの白いパレオを腰に巻き付けている。


 白いパレオ越しに見える白い太ももと黒色の水着。ゴクリ。


 後輩ちゃんは白色のビキニを着ていた。シンプルなデザインなのに、後輩ちゃんの可愛さをより際立たせている。


 いや、シンプルだからこそ後輩ちゃんの可愛さが際立っている。


 平均よりも大きな胸が強調され、谷間がエロい。


 腰に巻き付けられた黒色のパレオ。透けて見える白い太ももと白の水着。


 鼻血が噴き出そう。


 黒のビキニに白のパレオを巻き付けた桜先生と、逆に白のビキニに黒のパレオを巻き付けた後輩ちゃん。とてもいい。良すぎる。素晴らしい!


 透けて見えると何故ここまでエロく感じるのだろう。


 神様。ありがとう。後輩ちゃんと桜先生の水着を見ることができて俺は幸せです。



「先輩! 感想は………………おぉ。聞くまでもないようですね」


「男の人ってわかりやすいわね。おっきい」



 二人の視線がちょっと下を向いている。そこにあるのはアレしてるアレ。



「って、見るな!」


「先輩が裸なのが悪いんです!」


「そーだそーだ!」


「脱がせたのは二人だろ! 服着るから目を瞑れ!」


「「はーい!」」



 手で目を隠す後輩ちゃんと桜先生。指の隙間からバッチリと覗いている。


 俺は二人を追い出したかったが、自分が裸なので近づけない。


 俺は諦めてササッと着替えを済ませた。二人にバッチリ見られたけど。


 服を着た俺はベッドの上に座り込む。そして、水着姿の二人を見た。



「二人とも似合ってるよ。滅茶苦茶綺麗だ」


「あ、ありがとうございます」


「こ、これは照れるわね」



 今更ながら顔を真っ赤にする二人。


 首や肩までほのかにピンク色になって、より扇情的な光景になる。


 俺の心臓が危ない。理性よ! 頑張ってくれ!



「後輩ちゃん。俺の前でビキニを着れるようになったんだな。前はお腹を見せるだけで気絶しそうになっていたのに」


「ふっふーん! 私だって成長しているのです! こ、これくらい楽勝ですよ!」


「………顔真っ赤になったぞ。指摘されて急に恥ずかしくなったのか?」


「う、うるさいです! 先輩だって顔真っ赤じゃないですか! どうです? 襲いたくなりましたか?」



 後輩ちゃんが真っ赤の顔のまま俺を揶揄ってくる。


 水着でセクシーポーズをするおまけつき。


 それも見た桜先生もポーズを始める。


 美女と美少女のセクシーポーズ。破壊力はAN602を超える。


 例えがよくわからない? コードネーム『イワン』は? それとも、ツァーリ・ボンバはどう?


 衝撃波が地球を三周したと言われる人類史上最大の水素爆弾って言えばわかるか。


 二人の水着姿が眩しすぎて、俺、おかしくなりそう。



「ふふふっ。先輩にしか見せない私の姿です。見放題で触り放題ですよ」


「弟くん? お姉ちゃんと妹ちゃんの身体を自由にしていいのよ?」


「く、来るな! それ以上近づいたら俺は……」


「どうなるんですか?」


「ふふふっ。襲いたくなる?」


「お、俺は…………うっ!」


 ブシャーーーーーーッ!


「先輩! 鼻血が!」


「きゃー!? ティッシュ! ティッシュはどこ!? あぁっ! さっき使い切っちゃったんだった!」



 噴水のごとく俺の両鼻から噴き出す真っ赤な鮮血。


 噴き出した鼻血がベッドを真っ赤に染めていく。


 後輩ちゃんと桜先生が慌てふためき、ティッシュを探し、俺を助けようと近寄ってくる。


 バインバイン揺れる胸。超至近距離の二人の身体。


 鼻血の噴き出る勢いはさらに激しくなる。



「先輩! 大丈夫ですか先輩!」


「弟くん! しっかりして!」



 二人の慌てる姿をぼんやりと見ながら、出血多量で俺の意識は遠のいていった。


 わが生涯に一片の悔いなし。ガクリ。


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