第123話 血まみれの俺

 

 後輩ちゃんと桜先生の水着を見て、盛大に鼻血を噴き出し気絶した俺。


 目を覚ましたらそろそろ夕食を作らないといけない時間だった。


 心配する二人を視界に入れないようにして、両鼻にティッシュを詰め込み夕食を作った。


 今、夕食を三人で食べているけど、出血多量で現在頭がクラクラしております。


 絶対に顔が真っ青になってる。


 ちょっと立ち上がるだけで立ち眩みが起こるから気をつけなければ。


 黙々と黙って食べる俺を心配した後輩ちゃんが声をかけてきた。



「あの? 先輩? 唇まで青いですけど大丈夫ですか?」


「大丈夫大丈夫」


「本当に? 弟くん、ちゃんと私たちに顔を見せて?」


「大丈夫だから気にしないでくれ」


「むぅ! 妹ちゃん! 弟くんが冷たいわ! 心配してるのに!」


「そうです先輩! 折角心配しているのに失礼だと思います! 喋るときは相手の目を見てって教わらなかったんですか? いい加減に私たちをちゃんと見てください!」



 見ろって言われてもねぇ。二人を見れない理由があるんですよ。


 二人を見るとさっきの水着姿を思い出すという理由もあるんだけど、もっと大きな理由があるのです。


 今二人を見ることができない大きな大きな理由が。



「じゃあ、聞くけどさ………………なんで二人は水着エプロンなんだよ!?」



 そう。今俺の目の前にいる後輩ちゃんと桜先生は先ほどの水着の上にエプロンを着ただけなのだ。


 それも俺のエプロンを! まあ、料理ができない二人のエプロンなんかないから当然だけど。


 二人が自慢げに胸を張る気配がある。



「ふっふっふ! どやぁ!」


「どやどやぁ!」


「ドヤ顔するな! さっさと着替えろ!」



 しかし、後輩ちゃんと桜先生から即座に不満げな声が上がる。



「えぇー! 折角先輩が喜んでくれると思ったのに! 先輩! 今の私、結構自信があるんですけど! 見てくれないんですか?」



 俺も大変興味があるけど、今後輩ちゃんを見てしまったら本当に死んじゃう気がする。血が一滴残らず噴き出て死んじゃうと思う。



「これ、水着よりも露出少ないのよ。涼しくていいわね。今度から暑い日は部屋で水着を着ましょう!」


「さんせー!」


「反対だ! 絶対反対! 反対反対反対!」



 確かに暑い日は水着で過ごしたほうが涼しいっていうのはわかる。


 でも、俺の理性も精神も心臓も保たない。本当にどうにかなる。


 それに、水着エプロンは露出は減ったかもしれないが、背徳感と言うか、より扇情的に感じられるから今すぐやめて欲しい。



「ふむ。前に先輩を勝負下着で誘惑したときは鼻血を出さなかったのに、どうして今回は鼻血が出たんでしょうか? あの時は先輩の理性がぶっ飛んだのに…」


「いや、俺、さっきぶっ飛んだから鼻血を噴き出したんだけど…」


「でも、あの時みたいに襲わなかったじゃないですか! 何がいけなかったんだろう…?」



 後輩ちゃんが真剣に悩んでいるようだ。あんまり考えないで欲しいけど。


 俺には何となく理由がわかっている。


 思わずチラリと見てしまった先にいたのは水着エプロンの美女。


 おっと。鼻血が垂れてしまった。ティッシュティッシュ。



「弟くん。今、一瞬お姉ちゃんを見たわよね? もしかして、お姉ちゃん邪魔だった?」


「なるほど! 先輩の理性がぶっ飛んだときは二人きりでしたね。そして、私のおっぱいを見て鼻血を噴き出した時は、隣に楓ちゃんが寝ていました。ということは、二人きりになったら襲ってくれるんですね!」


「じゃあ、邪魔者は消えるわねー!」



 空気を読んで家から出て行こうとする桜先生。


 その姿、水着エプロンのまま外に出て行くつもりですかね?


 それに、まだ食事中ですよ。


 俺は食堂のおばちゃんと化す。



「姉さん。お残しは許しまへんで~!」


「な、懐かしい! わかりました! 寝るときだけ別にします」



 桜先生が椅子に戻り食事を再開させる。


 俺は姉さんの水着エプロンを見てしまったので、両鼻にティッシュを装着しております。


 あっ、ティッシュが真っ赤に染まっている。取り替えないと。



「くっ! 今夜か! 今夜念願の初夜なのか!? ど、どうしよう…心の準備が…。でも、やるんだ私! よしっ! やったるでー!」



 後輩ちゃんは一人でブツブツと何かを言っている。


 水着エプロンでブツブツと呟く後輩ちゃんは危ない人のようだ。


 おっと。後輩ちゃんを見てしまったから、またティッシュを取り替えないと。


 本当に襲い掛かりたくなるくらい可愛くてエロい。


 鼻血が止まらない!


 その後、一人はソワソワとし、もう一人は興味津々で弟と妹をチラチラと眺め、俺は何度か鼻血を噴き出しつつ、何とか食事を済ませた。



「「「ごちそうさまでした」」」



 食事を終え、お皿洗いなどを済ませる。


 その間、後輩ちゃんはずっとソワソワとして、桜先生は期待と興味で瞳が輝いていた。


 でも、何故か二人はずっと水着エプロンだった。そんなに気に入ったのか?


 明日の朝の準備やお風呂や寝る準備を整えていく。


 暑い夏だとシャワーで済ませることが多いけど、今日はゆっくりしたい気分なので湯船にお湯をためた。


 今日は俺が一番風呂らしい。何やらコソコソと喋っている後輩ちゃんと桜先生に声をかける。



「じゃあ、お先しまーす」


「「ごゆっくり~!」」



 俺は水着エプロンの二人を出来るだけ見ないようにしてさっさとお風呂に移動した。


 パパーッと脱いで身体を洗ったりしてお湯に浸かる。


 あぁ~。やっぱりお風呂っていいなぁ。癒される。


 今日はいろいろあった。


 実家から帰り、後輩ちゃんと桜先生の水着を見て、鼻血を噴き出し気絶した。


 今も血が足りなくて身体が怠い。



「あぁ~……極楽極楽…」



 俺がお湯の中でぐったりと脱力していると、突如浴室のドアが勢いよく開いた。



「なに年寄り臭いこと言っているんですか?」


「まあ、お風呂が極楽なのはわかるけれどね」



 入ってきたのは当然後輩ちゃんと桜先生。


 二人の顔に悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。


 裸ではなくて水着を着ているのが幸いだった。



「なぁっ!? ななななななななななんでっ!?」


「なんでって、プールに行ったときに先輩のお風呂に突撃してもいいと言質を取ったので、突撃しに来ました!」


「弟くん。背中、流してくれる?」


「お姉ちゃんズルーい! 先輩。わ、私の背中もお願いします。ま、前もしたいならどうぞ」



 恥ずかしそうに頬を染めた白いビキニ姿の後輩ちゃん。とても可愛い。


 桜先生は恥ずかしがる様子もなく身体にお湯をかけている。


 何故女性って濡れるだけで色気が増すんだろうな?


 そう思うのは俺だけだろうか? 全国の男性諸君! どう思いますか?



「……い……ぱい…先輩! 聞いてますか!?」


「はっ!? なんだ!?」


「もう! しっかりしてください!」



 お風呂の熱と興奮の熱で思わず思考がトリップしていたようだ。


 後輩ちゃんが話を聞いていなかった俺を揺さぶっている。


 角度的に後輩ちゃんを見上げ体勢になっている。


 前屈みになって胸が強調されている後輩ちゃん。



「大丈夫ですか? 先輩?」



 前屈みになったまま、セミロングの黒髪を耳にかける仕草をする後輩ちゃん。


 ドクンッと俺の心臓が飛び跳ねた。


 あまりにも可愛すぎて、俺の精神や理性や肉体が限界を迎えた。



「もうむり……ブハッ!?」


 ブシャーーーーーーッ!


「また先輩の鼻血が!? 先輩! しっかりしてください先輩! せんぱぁ~い!」



 後輩ちゃんの心配する声を聞きながら、俺の視界がブラックアウトする。


 最後に見たのは心配する白いビキニを着た後輩ちゃんと、頭を洗っていてあたふたしている黒いビキニ姿の桜先生と、俺の鼻血で真っ赤に染まったお湯だった。






 その後、気づいたのは次の日の早朝で、ベッドの上で後輩ちゃんと桜先生に抱きしめられていた。


 後輩ちゃん、桜先生。俺を助けてくれてありがとう。


 でも、なんで俺だけ裸なんだ!?


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