第117話 お疲れモードの後輩ちゃん
「あぁープリンアラモード美味しかったです~」
お隣を歩く後輩ちゃんが幸せそうな顔でお腹を撫でている。
プールから帰ってきた俺たちは、後輩ちゃんや桜先生、楓と裕也のバカップルに詰め寄られおやつタイムになったのだ。結局、みんなにプリンアラモードを作りました。自分で作ったから自画自賛みたいだけど、とても美味しかったです。
後輩ちゃんがギュッと抱きついてきた。
「また食べたいです! 先輩! また作ってくださいね!」
「今食べたばかりだろ?」
「ふっふっふ。女の子の小さなお腹には甘いものは無限に入っていくのです!」
腰に手を当てドヤ顔をする後輩ちゃん。とても可愛い。
「その分、体重が増えていくけど?」
「大丈夫です。私は体質的におっぱいにいっちゃうので。お姉ちゃんみたいにバイーンってなりましょうか? あっ! 先輩は今の私のおっぱいが超絶好みでしたねぇ~。ほらほら! 先輩の超絶好みのおっぱいですよぉ~! 先輩の大好きなおっぱいですよぉ~! 触ります?」
ニヤニヤと笑いながら胸を持ち上げ揶揄ってくる後輩ちゃん。イラッとするほど可愛い。超絶好みの後輩ちゃんの胸を触りたくなったけど、紳士の俺は鍛えられた理性を総動員し我慢する。
「触らん!」
「そうなんですかー? まあ、今日のプールでたっくさん押し付けてあげましたからね。満足しましたか? それとも、ムラムラしてます? 欲求不満です? 私、頑張りましょうか?」
「頑張らなくていい!」
「そうですか。いつでも言ってくださいねー。私、頑張りますから!」
「だから、頑張らなくていいって言ってるから!」
両手を握り、可愛らしく頑張るポーズをしている後輩ちゃんに心を惹かれたけど、鋼を通り越し、ダイヤモンド並みに硬くなった理性で欲望を抑える。
そうこうしているうちに、俺の部屋の前に着いた。後輩ちゃんが自分の部屋のように慣れた手つきでドアを開けて勝手に中に入っていく。中学の頃から俺の部屋に無断で入り浸っていたからなぁ。最初の一カ月くらいはとても恥ずかしそうして、挙動不審だったのが懐かしいなぁ。
「先輩のベッドだ! ダーイブッ!」
後輩ちゃんが俺のベッドにポフンとダイブした。そして、枕に顔を擦り付け、スリスリしたり、クンクン匂いを嗅いでいる。そして、嬉しそうに脚をパタパタとさせている。とても可愛い。
「あれっ? 先輩、どうしたんですか? 懐かしむように遠くを見つめて」
「いや、後輩ちゃんが俺の隣に引っ越してきたばかりの頃を思い出してなぁ。俺が帰っていないと思って、俺のベッドにダイブしていた時のことを」
「あぁ~ありましたねぇ。あの時パンツ見られちゃって『目には目を歯には歯を、パンツにはパンツを』ということで先輩のパンツを見たんでした。黒のボクサーパンツ…」
「それは忘れろ!」
「無理です無理です! パンツ越しだとはいえ、初めて見たんですから、記憶にバッチリ残っています! その後に気絶しちゃいましたけど」
あの頃の後輩ちゃんは純真だったなぁ。今では俺の服を無理やり引きはがして、あんなことやこんなことを…。どうしてこんな風になっちゃったんだろう。
「あっ、後輩ちゃん。今さらだけど、スカートが捲れて下着が見えてるよ」
そう。後輩ちゃんがダイブした時からスカートが捲れてピンク色の下着が丸見えになっているのだ。後輩ちゃんの綺麗な太ももと形の良いお尻も全開になっている。非常に眼福です。ありがとうございます。
「せんぱーい。スカート直してくださーい」
「はいはい……………って何で俺に任せる!? 自分で直せよ!」
「もう先輩が直してくれたじゃありませんか。それとも、ハンムラビ法典に従って『パンツにはパンツ』を実行しましょうか?」
「………結構です」
「そうですか。残念です」
後輩ちゃんの残念そうな声。でも、今の会話中一切後輩ちゃんは俺のほうを見なかった。目を合わせなかった。枕で隠した顔。ちょっと見える横顔と、可愛らしい耳は真っ赤になっている。恥ずかしかったのだろう。
「後輩ちゃん。耳が真っ赤だぞ」
「………………う、うるさいです。ヘタレ先輩のばか!」
くぐもった声でぼそりと呟いた。後輩ちゃんが両足をパタパタさせる。
俺は後輩ちゃんが寝転ぶベッドに腰掛けた。そして、後輩ちゃんの背中を優しく撫でる。ビクッとした後輩ちゃんはすぐにリラックスして脱力する。
「後輩ちゃん? 自分の部屋で自分のベッドのようにしてるけど、俺の部屋とベッドだからね?」
枕で隠していた後輩ちゃんの顔が出て来た。そして、キランと輝くドヤ顔で告げる。
「先輩。『先輩のモノは私のモノ、私のモノは私のモノ』なのです!」
「ジャイアニズム…だと!? 後輩ちゃんは剛田ちゃんだったのか!?」
それを聞いた後輩ちゃんが愕然とする。
「なん…だと!? 提唱者が他にいたんですか!? 私が最初に言ったんじゃないんですか!?」
「ジャイアニズムは有名だぞ!」
「ガーンッ! 知らなかった……なーんてね! 冗談ですけど」
ケラケラと笑う後輩ちゃん。なんか目がとろ~んとしている。瞬きがゆっくりだ。眠そうだ。プールの後はとても疲れて眠くなるので、後輩ちゃんにも睡魔が襲ってきたのだろう。
「ちなみに、さっきの言葉の後には『私の身体は先輩のモノ』というのが付け加えられます」
後輩ちゃんが眠そうな瞳でパチンと可愛らしくウィンクした。そして、眠そうにゴシゴシと目を擦り始める。眠そうな後輩ちゃんはちょっと幼くなるのが可愛い。
俺は後輩ちゃんの隣に寝転んだ。
「ほよっ?」
後輩ちゃんがうつ伏せから横を向いて、ベッドの上で俺と向き合う。後輩ちゃんの目がしょぼしょぼしている。
俺は後輩ちゃんの身体を抱きしめた。後輩ちゃんのしなやかで柔らかい身体。後輩ちゃんの甘い香り。心地良い体温。一気に疲れが押し寄せて眠くなる。
「眠いんだろ?」
「あはは…先輩のベッドに寝たら一気に眠くなりました」
「俺もだ。後輩ちゃんの身体は俺のモノなんだろ? じゃあ、自由に抱きしめて、抱き枕にしても問題ないよな?」
「問題ないですね。でも、抱き枕になるのは先輩のほうです」
後輩ちゃんもぎゅっと抱きしめてきた。気に入ったのか、脚も絡めてくる。
俺たちはお互いを抱きしめ、抱き枕にする。
お互いのぬくもり、お互いの香り、お互いの身体の感触を楽しみながら、リラックスして睡魔に身をゆだねていく。
俺はぼんやりとした意識の中、後輩ちゃんの唇にチュッとキスをした。後輩ちゃんもぼんやりと気持ちよさそうにチュッとキスを返してくる。
「葉月おやすみ」
「先輩おやすみなさい」
俺たちはお互いを抱きしめながら、同時に夢の世界に旅立っていった。
<おまけ>
バタンと部屋のドアが開いた。
「弟くん! 妹ちゃん! ちょっといい? ってあれっ?」
桜先生はベッドの上で抱きしめ合いながら、気持ちよさそうに寝ている弟と妹を発見する。幸せそうな寝顔だ。
「これは起こしちゃダメね…すごく気持ちよさそう。写真撮っとこ」
パシャパシャと小さなシャッター音が部屋に響いた。二人は起きる気配はない。
「うん。綺麗に撮れた。弟くん、妹ちゃん、おやすみなさい」
二人の姉は、幸せそうな二人を起こさないように、静かに静かに部屋を出てドアを閉めた。
颯と葉月は気づかない。
数時間後、起きてきた二人に、家族全員からニヤニヤ顔で出迎えられ、現像された写真を手渡されて赤面したのはまた別のお話し。
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