第113話 市民プールと後輩ちゃん 合流

 

 俺は今プールサイドに寝転び、後輩ちゃんに膝枕してもらっている。

 体力を使い果たし、疲れて動きたくない。

 後輩ちゃんが聖女のように優しく微笑み、頭を撫でてくれる。とても心地いい。太ももも柔らかくて気持ちいい。ずっとこうしていたい。


「お疲れ様です、先輩」


「小学生は体力が無限だったことを忘れてた。年は取りたくないな」


「なに年寄り臭いこと言っているんですか。まだ十代後半でしょう? これから何十年も私と一緒に年を取ってください!」


「………それってプロポーズか?」


「………そ、それはお任せします。私からプロポーズしてもいいなら、プロポーズと受け取ってください」


 後輩ちゃんの顔が真っ赤になり、顔を逸らしながら恥ずかしそうに呟いた。ちょっと見惚れてしまったのは俺だけの秘密である。


「え、えっと、俺からするので待っててください」


「……はい、待ってます……でも、まず先に告白からですけどね。気長に待ってます」


 少し赤い顔でにっこりと笑う後輩ちゃん。でも目が笑っていない。ゆっくりと手が動き、むぎゅっと頬が抓られる。痛い痛い。ちょっと怒りを感じるのは気のせいだろうか? 痛いです後輩ちゃん。


「うふ……うふふふふ…」


 何か怖い。不気味に笑う後輩ちゃんが怖い。そしてまだ頬を抓られていて痛い。

 ヘタレて申し訳ございません!

 俺が後輩ちゃんから怒りの制裁を受けていと大声で俺たちを呼ぶ声がした。


「颯く~ん! 葉月ちゃ~ん!」


「あれは……」


「母さんだな………って、母さん!?」


 手を振りながら歩いてくる幼女。父さんと手を繋いでいる。この二人が夫婦だとは誰も思わないだろう。父と娘の親子にしか見えない。バレたら警察に通報されそうだな。父さん大丈夫か?


「二人ともお待たせ!」


 母さんと父さんが近づいてきて、幼女がブイサインしている。


「楓と裕也君はどこかな?」


「お二人なら流れるプールにいましたよ」


「葉月さんありがとう。ウチの息子のことも」


「膝枕なんてラブラブだねぇ」


 父さんと母さんから温かい目で見られる。後輩ちゃんも優しい瞳で俺の頭をナデナデしないでください。大変気持ちいいですが、親の前だと恥ずかしいです。

 って、恥ずかしがっている場合じゃなかった。俺は後輩ちゃんの太ももからガバっと起き上がる。


「母さん!? なんでスク水●●●!?」


「えへへ~! 可愛いでしょ!」


 母さんが着ていたのは旧式のスクール水着●●●●●●。幼女の母さんに似合ってはいるが、年齢的にダメだろ!? あんた高校生の子供が二人いる母親だろ!? そういうのは、寝室で父さんと二人っきりの時にやってくれ! 子供の気持ちを考えろ!


「父さん…通報していい?」


「颯? なんで父さんを通報するんだい?」


 キョトンとする父さん。父さんは常識のある人だと思っていたのに、残念だ。


「いや、どう見てもアウトだろ」


 俺の言葉に幼女の母さんがプンスカ怒る。


「なんでよ颯くん! 折角可愛いのを買ったのに…葉月ちゃんはどう思う?」


「とても可愛いと思います!」


「でしょでしょ!」


 後輩ちゃん。そこは俺の味方をして欲しかった。

 絶対俺が普通の常識人だ。おかしいのは俺以外の三人だ。俺はおかしくない! 絶対におかしくないのだ!


「あれ? お姉ちゃんはどうしたんですか?」


「美緒ちゃん? 美緒ちゃんならすぐに来るよ」


「姉さんは一人で大丈夫なのか? ナンパとかされない?」


「だいじょーぶだいじょーぶ! ほら来たよ!」


 母さんが指さす方向に一人の美人が近づいてきていた。黒いビキニを着たボンキュッボンのスタイル抜群の美女。歩くたびにその巨乳がたゆんたゆん揺れている。

 見る者全てを魅了する絶世の美女。男性も女性も年代問わず魅了させている。

 俺はナンパの心配をしていたが、母さんの言う通り心配はいらなかった。なぜなら、水着姿の桜先生を見た男性は全て倒れ込んでしまうからだ。立てなくなったのだ。いや、ある意味では立っているけど。

 股を押さえて倒れ伏す男性が続出し、恋人や伴侶の女性が冷たく踏みつぶしている。

 俺たちを見つけた桜先生がパァッと笑顔を輝かせて小走りで近づいてくる。

 たゆんたゆん揺れる胸。鼻血を噴き出し、股を押さえ内股になりながらトイレへ直行する男性が続出する。


「弟く~ん! 妹ちゃ~ん!」


「むがっ!?」


「もがっ!?」


「遅くなってごめんね~!」


 桜先生に抱きしめられた俺と後輩ちゃん。ムニムニとする柔らかい巨乳に顔を覆われ息ができない。気持ちいいけど死ぬほど苦しい。マジで助けて。死ぬ。死んじゃう!

 先生の胸の中で……じゃなくて、腕の中で俺の後輩ちゃんが空気を求めて暴れ出す。それに気づいた桜先生がようやく放してくれた。


「ぷはっ! く、苦しかったぁ」


「ぷはっ! 死ぬところでした」


「ご、ごめんね、二人とも」


 ぜーぜーと息を荒げる俺と後輩ちゃん。桜先生が申し訳なさそうに優しく背中を撫でてくれた。


「で? 姉さん、何だその水着は?」


「どう? 似合ってる?」


「似合ってる。似合いすぎだよ! 男を殺す気か!?」


 スタイル抜群の桜先生が黒いビキニなんて似合いすぎだ! 大人の色気がムンムンで、妖艶で、艶美で、男は皆理性が崩壊しちゃうから! 粉々に砕け散っちゃうから!


「えっ!? で、でも、弟くんも隆弘さんも生きてるわよ!?」


 桜先生の視線が、俺と父さんの間を行ったり来たりする。


「俺は見慣れてるから! それに、父さんはロリコンだから大丈夫なの!」


「僕はロリコンじゃない。風花さんしか興味がないんだ」


 ゴッチーン、と俺の頭に拳骨が落ちた。痛い!


「誰がロリやねん!」


 むに~ん、と左右の頬を引っ張られる。痛い痛い!


ふぉふぇんふぁふぁいごめんなさいふぉおふぁん父さんふぁあふぁん母さん


 母さんの小さい手が頬から離れた。あ~痛かった。


「行こっ! 隆弘くん! 颯くんは葉月ちゃんと美緒ちゃんに任せて、私たちも遊ぼうよ!」


「そうだね。美緒さん、葉月ちゃん、ウチの颯をよろしく頼むよ」


 そう言って、俺の両親は仲良く遊びに行った。うん、やっぱり親子にしか見えないな。


「され、お姉ちゃんも来たことですし、三人で遊びましょう!」


「おぉー! ………って、私も一緒でいいの? 二人のお邪魔じゃない? 私、影から二人のこと覗いていようか?」


 ストーカーか!? 教師だよね!? 大人だよね!? それでいいの!?


「私はもう十分先輩と遊びました! 私はお姉ちゃんと遊びたいの! それに、水着なら家でも着る予定だし」


「そうなの? じゃあ、その時はお姉ちゃんも一緒に水着になる!」


「なろなろ! 取り敢えず今は一緒に遊ぼー!」


「おぉー!」


 女性陣が盛り上がっております。俺、あんまり体力がないんだけど……あっ、はい。遊ぶんですね。わかりました。頑張ります。

 水着姿の後輩ちゃんと桜先生にニッコリと微笑まれた俺には逃げ道がありませんでした。

 こうなったら限界まで遊んでやる!

 …………理性は大丈夫かな? 心配だ。


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