第112話 市民プールと後輩ちゃん ポロリイベント

 

<颯視点>


 流れるプールがカップルでいっぱいになったので避難した俺たち。浮き輪を返却するために貸し出し所に行ったら、丁度残念そうに出て来たカップルがいた。どうやら浮き輪がすべて貸し出されていたらしい。俺たちはそのカップルに浮き輪を渡し、感謝された。

 これから二人でイチャイチャするのか。頑張ってくれ。

 貸し出し所から離れ、俺の腕に抱きついている後輩ちゃんが下から覗き込むように見つめてきた。水着姿の後輩ちゃんの上目遣い。とても可愛い。


「先輩? 今から何します? 泳ぎます? 物陰に行きます? イチャイチャします?」


「………後輩ちゃん? 物陰に行って何をするつもりかい?」


「もう。言わせないでくださいよ。先輩のえっち!」


 おぉぅ。恥ずかしそうに目を伏せる後輩ちゃん。可愛い。でも、口元が悪戯っぽく緩んでいるのを俺は見逃さない。絶対揶揄って遊んでやがる! 反撃の仕方は思いつかないから無視するか。


「さて、何をしようかな」


「チッ! スルーされましたか。楽しくないです」


 悪い顔をして舌打ちをする後輩ちゃん。可愛いんだからそんな顔しないの。まあ、その顔も可愛いけど。

 おっ、反撃方法見っけ! 俺は立ち止まり、後輩ちゃんを顎クイして至近距離で見つめる。後輩ちゃんの綺麗な瞳に吸い込まれそうだ。


「舌打ちなんかするなよ葉月。そんな顔も可愛いけど、俺は笑顔の葉月が見たいな」


 うわ、めっちゃ恥ずかしい! 何この俺。穴があったら今すぐ入りたいんですけど! やるんじゃなかった!

 後輩ちゃんの顔がポフンと真っ赤になり、スッと顔を背けた。


「………慣れないことをしないほうがいいですよ。先輩のお顔が真っ赤っかです」


「後輩ちゃんの顔も赤いけど?」


「………うるさいです」


 ボソッと呟く後輩ちゃん。俺の自爆攻撃は上手くいったようだ。でも、もう二度としたくない。


「わー! あのお兄ちゃんとお姉ちゃんがチューしそうだぁ!」


「こらっ! 見ないフリしなさい!」


 近くを通りかかった小さな子連れの母親が子供を引っ張っていった。

 俺と後輩ちゃんの間に気まずい沈黙が流れる。滅茶苦茶恥ずかしい。ここは家じゃなくて衆人環視のある市民プールだった。ちょっと自重しようっと。


「取り敢えず、どっか行こうか」


「そ、そうですね」


 俺と後輩ちゃんは顔を真っ赤にしたままプールサイドを歩くことにした。



<葉月視点>


 先輩の腕におっぱいを押し付けながらプールサイドを歩く。

 ようやく顔の熱が引いてきた。突然かっこいいセリフを言われたら、キュンどころじゃなくてドッキューンと胸を撃ち抜かれるじゃないですか! 私、思わず押し倒したくなったじゃないですか! 本当にもう! 不意打ちは止めて欲しいです!

 心の中で叫びながら先輩の筋肉質の腕に抱きつく。手は恋人つなぎ。腕におっぱいを押し付ける。

 いつも家では普通にしていることだけど、流石に人目があるところは恥ずかしい。でも、今日の日のためにずっと前から覚悟を決めていたのだ。

 頑張れ私! まだまだ先輩とプールで遊ぶんだ! 倒れるな私!

 一分ごとに自分を奮い立たせる。そうじゃないと気絶しそう!


「なあ、後輩ちゃん。子供用プールに行かないか?」


 先輩が話しかけてきた。子供用プール? 私たちには膝くらいしか深さはないけど。一体何をするんだろう? 女の子でも探すのかな? 先輩ってロリコン?


「プールサイドに腰掛けて、脚でピチャピチャしながらお喋りしないか?」


「そうですね。そうしましょう!」


 良かった。先輩がロリコンじゃなくて。

 それにしても、ふむ。座ってお喋りですか。先輩の手を太ももで挟んであげたらどんな反応するのかな? ちょっと楽しみだ。やってみよう。

 先輩と子供用プールに行ったら、遊んでいた小学生低学年くらいの男の子三人が近づいてきた。


「なあ、兄ちゃん! 彼女のお姉ちゃんって超可愛いな!」


「どこであったんだ? ナンパか?」


「いや、弱みを握って無理やり迫ったのかもしれないぜ!」


 おぉぅ。今どきの小学生ってどんな知識を持っているんだろう?

 その小学生三人に先輩が近づいて、視線を合わせガシガシと頭を撫でる。先輩は子供好きなのだ。


「無理やりなんてしてないぞ! このお姉ちゃんは妹に紹介されたんだ」


 まあ、間違いではない。私が楓ちゃんに紹介を頼んでナンパしたけど。


「妹の友達に手を出すなんて最低だな!」


「「サイテー!」」


 おぉぅ。最近の小学生って辛辣だな。

 頭を撫でていた先輩の手が止まった。そして、スッと私の隣に来ると、腰に手を回され、グッと抱き寄せられる。超至近距離にある先輩の顔。私の全身を包み込まれる先輩の筋肉質の身体。

 あわわわ! だから不意打ちは卑怯だって!


「ふふんっ! 何とでも言え少年たちよ! 俺はこの人と出会えて、そして一緒に居られて幸せだぞ!」


 だから不意打ちは卑怯だって言ってるでしょうが! あぁ、もう、心も身体もズッキューンズッキューンしちゃう。


「兄ちゃん羨ましいぞ!」


「フツメンのくせに!」


「成敗してやる!」


 うりゃーっと先輩に飛び掛かる少年たち。先輩は私から離れて少年たちを迎え撃つ。そして、三方向からポカポカと叩かれ始めた。先輩が私を見て苦笑いしている。

 先輩の正面と左右に並んだ少年たちが頷き合う。


「ひっさ~つっ!」


「ズボン下ろし!」


「水着ば~じょん!」


 左右の少年が先輩の水着の紐を引っ張って解き、正面にいた少年が勢いよく先輩の水着を引きずり下ろす。手慣れた早業だった。

 ストーンッと下ろされた先輩の水着。ポロリする先輩のアレ。


「おぉ!」


 正面から見た私は思わず声を上げてしまった。ふむ、いつ見てもすごい!


「きゃぁあああああああああああああ!」


 水着を下ろされたことに気づいた先輩が可愛らしい悲鳴を上げてしゃがみ込んだ。そして、わたわたと水着を着始める。


「デカ! 兄ちゃんのデカいな!」


「俺の父ちゃんよりもデカかったぜ!」


「ビックサ~イズ! パオ~ン!」


 うんうん、大きいよね。先輩のって大きいよね! 私、大丈夫かな?


「兄ちゃんのは聖剣エクスカリバーだな!」


「いや、あの禍々しさと凶悪さは魔剣グラムだぜ!」


「いや、神槍グングニルだって!」


 いや、先輩のは如意棒だと思うよ。絶対如意棒がいいと思う。いろいろと知ってる私が言うんだもん。絶対如意棒だって!

 まあ、先輩のが如意棒かどうかは置いといて、私は少年たちに言わなければならないことがある。


「ねえ、キミたち?」


 私は小学生三人に声をかけた。ビクッと身体を震わせて、恐る恐る伺い見る少年三人。大丈夫。私は怒る気ないから。


「よくやった!」


 ニコっと笑ってサムズアップすると、少年たちも白い歯を輝かせてニカっと笑い、サムズアップを返してくれた。

 流石ヒロイン属性を持っている先輩。水着のポロリイベントまでこなすとは思っていませんでした。

 よくやった少年たちよ! 先輩のポロリを見れて私は大変満足です! ありがとうございます!

 まあ、見ようと思えば家でいくらでも見れるけどね。

 水着を着た先輩が顔を真っ赤にしながら立ち上がった。そして、引きつった笑みを浮かべる。


「さて、ガキンチョ共? 覚悟はいいか?」


「に、逃げろ!」


「逃がさん!」


 うきゃーっと楽しそうに逃げていく小学生三人を先輩が追いかけ始める。でも、少年も先輩もプールサイドは走らないというルールを守っているのが可愛い。四人とも早足だ。

 小学生たちは子供用プールに入ると先輩に水をかけ始めた。先輩も負けじと水をかけ返す。バシャバシャと遊び始めた。

 私は子供用プールのプールサイドに座って脚を水にチャプチャプさせながら、遊んでいる先輩を眺める。少年たちと遊ぶ先輩は子供っぽくてとても可愛い。とてもとても可愛い。


「はぁ…先輩可愛い…食べちゃいたいくらい……いや、いっそのこと食べちゃおうかな? ど~しよ~かなぁ~?」


 三人に飛び掛かられてわざと水に倒れ込む先輩。水面にプハッと顔を出し、再び水をかけられる。

 先輩って小さい子の面倒見がいい。はぁ…先輩の子供が欲しいなぁ。ちょっと身体の疼きが止まらないんだけどどうしよう? 先輩を襲っちゃおうかなぁ?


「ねえ、そこのカワイ子ちゃん。俺たちと遊ばない?」


「俺たちお金持ってるし、一緒に泳ごうぜ!」


 何やら大学生くらいの髪を似合わない金髪に染めたチャラ男たちが来た。ナンパか。面倒くさい。折角先輩を愛でているのに邪魔をしないで欲しい。私は一分一秒でも先輩を眺めていたいの!


「はぁ? 邪魔。今すぐ消えて」


「ひぃっ!? す、すんませんした」


 ものすっごく不機嫌な声で、ハイライトの消えた瞳で睨みつけたら一瞬で男たちが逃げていった。

 よし、これで心置きなく先輩を眺めることができる!

 はぅ! 先輩ってかっこいいなぁ! 可愛いなぁ! 食べちゃいたいなぁ!

 左右の腕に少年二人をぶら下げ、残る一人に正面から相撲みたいに押されている先輩が私に視線を向けた。


「後輩ちゃん! 助けてくれ!」


 ほうほう。先輩からのSOSですか。仕方がないから手助けをしてあげましょう!

 警戒した少年三人が先輩から離れて私を取り囲む。


「むむ! 姉ちゃんもやんのか!」


「オレたちは容赦しないぞ!」


「おっぱいやお尻を揉んでやる!」


「おっとキミたち? 私の身体はあの人のモノだからそれは禁止ね! それに、キミたちはわかるよね?」


 ウィンクしたら少年たちは理解してくれたようだ。スッと道を開けてくれる。

 私は笑顔の先輩に近づいていった。そして、先輩の目の前で立ち止まり、ニコッと笑う。


「先輩のお望みの超絶可愛い私の笑顔ですよ~!」


「んっ? 可愛いけど、それがどうかしたのか?」


「こういうことです!」


 私は先輩の首に手を回して抱きつくと、そのまま押し倒した。油断しきった先輩はなすすべもなく、私諸共背後に倒れていく。

 ふっふっふ。私は先輩の味方ではなく、少年たちの味方でした! 折角ポロリをしてくれたんだもん。加勢するなら少年たちだよね。

 バッシャーンッ!と大きな水しぶきを上げて倒れ込む私たち。水がクッションになったから衝撃はほとんどない。子供用プールだから二人で倒れ込むとすぐに底についてしまう。

 びっくりして慌てている先輩。とても可愛い。

 私は、水の中で先輩をギュッと抱きしめ、そのまま先輩の唇にキスをした。私と先輩の水中キス。

 キスに驚いた先輩は身体を固くするけど、すぐに脱力して私を抱きしめてくれた。

 水の中のキスは息が続かないのでほんのわずかな時間だった。私たちはぷはっと水面に顔を出す。


「こ、後輩ちゃん!?」


 残念ながら、私には先輩に言葉を返す時間はない。即座に先輩から離れなければ!

 私が離れると同時に小学生三人から盛大な水飛沫をかけられる先輩。思いっきり顔にかかっている。

 私も参加しよ~っと! バシャバシャバシャ!


「な、なにっ!? 後輩ちゃんもガキンチョ勢力だと!?」


「ふっふっふ。私はこの少年たちとポロリ同盟を組んだのです! さあ先輩! 覚悟してください!」


「姉ちゃん! 兄ちゃんを一緒にやっちゃうぞ!」


「デカチン兄ちゃんを倒せ!」


「エクスカリバー兄ちゃん! あれ? グラム兄ちゃんだっけ? それともグングニル兄ちゃんだっけ?」


「如意棒だよ」


「おお! 如意棒兄ちゃんだな! 性欲魔人如意棒兄ちゃん、覚悟しろ!」


「ちょっ! やめっ! 四対一は卑怯だぞ! や、やめろ~!」


 先輩の楽しそうな悲鳴が上がる。

 こうして、勇者三人と性女…じゃなくて聖女の私によって、性欲魔人如意棒先輩は倒されましたとさ。

 とても楽しかったです。


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