第97話 朝の裸体と後輩ちゃん

 

 朝。俺はベッドで目が覚める。お隣に後輩ちゃんの温もりがない。最近一緒に寝ている桜先生の姿もない。久しぶりに一人で目が覚めた。ちょっと寂しい。

 欠伸をしながら着替えて顔を洗いに行く。

 リビングには裕也が寝ていた。昨日、裕也は寝落ちしたのだ。移動させるのも面倒くさかったので、そのままタオルケットを掛けたのだ。これが女性陣だったらお姫様抱っこしてベッドへと運んだけど、裕也は別にどうでもいい。タオルケットをかけただけありがたいと思え。

 洗面所で冷水で顔を洗うとシャキッと目が覚めた。


「よしっ! 姉さんを起こすか!」


 まずは電話でモーニングコール。10回電話しても反応なし。次の作戦へ移行します。

 次は後輩ちゃんの家のインターホンを連打。二分経っても応答なし。次の作戦へ移行します。

 合鍵で家に侵入。チェーンがかかっていない。女性しかいないのに不用心だな。後でお説教しておこう。

 寝室に入ると、まず目につくのが床に散乱した衣服。下着も落ちているようだ。まあ、いつのものことだから許そう。

 次に目に入ったのはベッドの上の女性陣。後輩ちゃんと桜先生と楓が仲良くくっついて寝ていた。先生が真ん中で、後輩ちゃんと楓が抱きつくような形だ。本当の姉妹のよう。写真をパシャリと撮ったのは俺だけの秘密。

 取り敢えず、起こすのは桜先生だけだから、軽く揺すって起こしてみる。


「姉さん。朝だぞ。仕事だぞ!」


「う~ん……今日は休む~」


「ダメです! 起きなさい!」


「ふぁ~い」


 目を擦りながら桜先生がゆっくりと起き上がった。シーツが身体から滑り落ち、露わになる豊満な裸体。巨大だけど見るからに張りがある先生の胸。桜先生は何も着ていなかった。


「なぁっ!? ななななななななななななななななんで裸!?」


「う~ん? なんでだっけ? 取り敢えず洋服洋服」


 後輩ちゃんと楓のハグから抜け出した桜先生がベッドから降りる。混乱していた俺の目に飛び込んでくる先生の裸体。さっきはシーツで隠されていた下半身も丸見えだ。


「えーっと…下着はどこだったかしら?」


 俺に背を向けてかがまないでください。いけないところまで丸見えですから。

 混乱していた俺は目を瞑るということを思いつかないでいた。俺も男なので視線が吸い寄せられてしまっている。

 何とか先生から視線を逸らすとベッドの上にいる二人に気づいた。シーツが捲れて胸のギリギリのところまで見えてしまっている。見るからに二人も何も着ていない。裸だ。後輩ちゃんの身体…………ゴクリ。


「下着あった!」


 桜先生が脱ぎ散らかした服の中から下着を見つけたようだ。手に取った下着を俺の目の前でつけ始める。


「う~ん………にゃんの声?」


 後輩ちゃんが目を覚ましてしまった。ムクっと起き上がった後輩ちゃん。シーツが落ちて上半身が露わになっている。初めて見る後輩ちゃんの裸体。俺の脳がオーバーヒートを起こす。

 ぼんやりとした後輩ちゃんと視線が合う。いつもなら朝が弱い後輩ちゃんなのに、こういう時だけ目覚めがいい。


「はっ!? 先輩の夜這いならぬ朝這い!? くっ! 覚悟を決めろ私! 前回みたいな失態はしないぞ! 頑張れ私! ヤルぞ私!」


 何やら後輩ちゃんが気合を入れているけど、俺には届かない。後輩ちゃんの裸体に魅入ってしまって、もう訳が分からない。形のいい胸。ピンクのポッチも腰のくびれも美の女神のごとく美しい。血が集まっていく。


「あら? 妹ちゃんおはよー。じゃあごゆっくり~」


 下着をつけ、ジャージに着替えた桜先生が寝室から出て行った。


「お姉ちゃんおはよー。ごゆっくりしま~す」


 反射的に答えた後輩ちゃん。再び気合を入れ直す。


「よしっ! えーっと…先輩? ど、どうぞ…」


 後輩ちゃんが両手を広げて待っている。未だに自分が裸ということに気づいていない。プルンとお胸が揺れている。


「………………後輩ちゃん」


「……は、はい」


「………………俺、もう無理」


 ブシャーーーーーーーーーーーーッ!


「先輩!? 鼻血!?」


 限界が来た俺は鼻から盛大に血を噴き出した。勢いよく噴き出す真っ赤な鮮血。後輩ちゃんの裸体が眩しすぎました。神様、ありがとうございます。


「うわぁぁぁああ! ど、どうしましょう!? ティッシュは!?」


 後輩ちゃんがベッドから降りようとするが俺は必死で止める。今、後輩ちゃんの下半身まで見たら俺は死ぬ。昇天して天国に逝ってしまう。


「後輩ちゃんベッドから出るな!?」


「ど、どうしてですか!? 先輩が鼻血を噴き出しているのに!?」


「下見ろ! バカ!」


「バカ!? まあ、いいです。それにしても下ですか…………………戦闘態勢が整っているようですよ?」


 いや、俺じゃなくて自分の下を見ようよ。確かに、服の上からわかるくらい興奮してるけどさ。お願いだから自分の格好に気づいてよ。もうどうにかなりそうだ。


「いい加減自分の格好に気づけ!」


「へっ? ………………ぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああ!」


 キョトンとして自分の身体を見下ろした後輩ちゃん。徐々に理解していって、両手で胸を隠すと絶叫した。爆発的に真っ赤になる後輩ちゃん。

 白い肌がピンクに染まって、両手で胸を隠している後輩ちゃんは、恥ずかしさで目も潤んでいる。とても色っぽい。扇情的な光景だ。恥ずかしがる上半身裸の美の女神の姿は、水素爆弾並みの破壊力があった。俺、死んでもいいかも。


「えっ? 私、裸見られた? 先輩におっぱい見られた…?」


 更に真っ赤になる後輩ちゃん。限界を迎えた後輩ちゃんは、ポフンと蒸気を上げて目を回してしまった。


「あぅ………」 


 パタンッ!


「うぎゃっ!?」


 久しぶりに気絶した後輩ちゃんは、寝ていた楓のお腹に突撃した。お腹に衝撃があった楓が飛び起きる。


「なに!? なにごと!? なにが起こったの!?」


 楓がキョロキョロと見渡して、鼻血を噴き出す俺と視線が合った。ちなみに、楓の胸もポロリしている。


「ふぇっ!? お兄ちゃんの朝這い? まさか私の隣で葉月ちゃんとおっぱじめようとした? それで興奮して鼻血出したの?」


「………誤解だ。後から説明するから、取り敢えず、気絶した後輩ちゃんを任せていいか?」


「…………あぁ~。お兄ちゃんは葉月ちゃんの裸を見てそうなって、葉月ちゃんはお兄ちゃんに見られたからこうなったのね。なるほど。納得した」


 こういう時だけ頭の回転がいい。すぐに状況を判断して正解を導き出した。


「ナイス私! 昨夜キャッキャウフフしてみんなで裸で寝た甲斐があった! これでちょっとは進展したかな?」


「楓……ありがとう」


 ニヤニヤ笑ってサムズアップしている楓にお礼を言う。ついでにサムズアップを返した。未だに強烈な映像が頭から離れない。俺には刺激が強かった。でも、素晴らしかった。


「どういたしまして。お兄ちゃんはその鼻血をどうかしたら? 出血多量で死んじゃうかもよ? それとも、葉月ちゃんの裸をもっと見る?」


「………………………………………鼻血をどうにかして、朝食を作ります」


「ほ~い。ボーっとしてるみたいだから包丁には気をつけてね」


 気絶している後輩ちゃんを楓に任せて俺は寝室から出た。


「きゃー! 弟くん鼻血!」


 桜先生が何やら慌てている。でも、俺はボーっとしたまま何もできない。

 後輩ちゃんの上半身の裸体は凄かった。

 あの強烈な光景が頭の中をグルグルグルグルと無限ループで再生される。


 神様、仏様、楓様! 素晴らしい光景をありがとうございました。

 桃源郷ってあるんですね。

 俺は一生あの光景を忘れません!


 俺がハッと我に返ったのは、しばらくしてからのことだった。



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