第96話 義姉と義妹と私

 

 花火大会が終わった。私とお姉ちゃんと楓ちゃんは女子会&パジャマパーティをするために、先輩のお隣の部屋、つまり私の部屋へと移動した。


 夜に先輩と別々の部屋で寝るのは久しぶりだ。ちょっと寂しい。


 義姉のお姉ちゃんと将来の義妹の楓ちゃんと私。本当の姉妹のように仲良くワイワイと騒いでいる。


 もちろん、ご近所さんにはちゃんと配慮しているのでご安心を。


 三人で入ったお風呂は楽しかったです。楓ちゃんが暴走してキャッキャウフフになりました。私も持てるテクを全部使って反撃したけど。ついでにお姉ちゃんにも…。


 うふふ、私の勝利! ぶいっ!


 現在は皆パジャマを着てベッドにダイブしております。久しぶりのベッドだ。



「ふごふご……女子会&パジャマパーティを始めます……ふごふご」



 楓ちゃんがパーティの開始を宣言した。声はくぐもって聞こえづらい。


 それもそのはず、楓ちゃんはお姉ちゃんの巨乳に顔を埋めているのだ。あの窒息するほど柔らかくて良い香りがする巨大なおっぱいに! ………ちょっと羨ましい。



「楓ちゃん? 流石にそろそろ止めない?」


「お姉ちゃんは気にしないわよ?」


「お姉ちゃんの許可もでましたー。それに今じゃないと堪能できないじゃん! むほほぉ~! 柔らかなおっぱい。くびれた厭らしい腰回り。もっちりとしたお尻。素晴らしいですなぁ~! ふごふご」



 エロ親父と化した楓ちゃん。セクハラ……じゃなくて、もう逮捕されるレベルだよ。


 サワサワとテクニカルに撫でまわし、厭らしい手つきで揉みしだく。


 ふむ、なかなかやりますな。



「お母さんにはない圧倒的な母性。癒されますなぁ」


「あぁ~なるほど」



 楓ちゃんのお母様、私にとってはお義母様、を思い浮かべて深く納得する。



「えっ? どういう意味?」



 一人だけわからないお姉ちゃん。コテンと首をかしげている。


 そう言えば、どんな人か教えたことなかったなぁ。



「楓ちゃんのお母様は、その、何と言いますか……」


「葉月ちゃん、私がはっきりと言うよ! 私のお母さんは一言で言うと幼女です! 未だにランドセルが似合うロリっ子なのです!」


「えぇ~!」



 驚くよね。私も最初お義母様とお会いした時、先輩の妹さんだと思ったもん。若さをどうやって保っているんだろう。謎だ。今度聞いてみよ。



「まあ、会えばわかるよ。お盆に帰ってくるんでしょ?」


「えっ?」


「えっ? 違うの?」



 お姉ちゃんと楓ちゃんがお互いに驚いている。そして、同時に私を見ないで。私は何にも知らないから。私はお盆は実家に帰るから、帰る場所違うし。



「お姉ちゃんはもうお兄ちゃんと私のお姉ちゃんなんだからお家に来ていいよ? というか、お母さんも待ってるよ?」


「………流石先輩と楓ちゃんのお母様。謎だ」



 一切教えていないはずなのに、お姉ちゃんのことを把握しているお義母様。流石です。



「えっ? でも…」


「つべこべ言わなーい! YOU来ちゃいなよ! というわけで、決定です! あっ、どうする? お兄ちゃんと帰ってくる? それともサプライズする? 葉月ちゃんもお泊りする?」


「私は今回は実家に戻ります。偶には顔を出さないと」


「ほーい! う~ん、じゃあサプライズしよっか。そのほうが楽しいし! 葉月ちゃん、帰ってくる日にお姉ちゃんも案内してくれる? お兄ちゃんを驚かせないと」


「いいよー」



 先輩の驚く顔が目に浮かぶ。うん、可愛いな。写真の準備しておこう。


 あれ? 何故かお姉ちゃんの顔が強張っている。でも、とても嬉しそうだ。



「あはは…何か勝手に決まっていくわね……」



 まあ、楓ちゃんですし、こういうのは当たり前だよ。諦めて慣れましょう。


 ちなみに、楓ちゃんはお姉ちゃんの巨乳に顔を埋めたままだ。手が動いてセクハラしている。



「じゃあ詳細はメールするね。ふへへ……お盆の間もお姉ちゃんのこの豊満な身体を堪能できる! やったぜ! あっ! お盆にみんなでプール行こうよプール! このナイスバディなお姉ちゃんの水着姿が見たい! 夏だからいいよね?」


「私はいいけど。この間水着買ったし、一回は行こうと思ってたんだよね。お姉ちゃんも一緒に水着買いました」


「そうね! 弟くんに見せなきゃ!」



 楓ちゃんがお姉ちゃんの胸から顔を出す。顔を離したけど、両手で揉みしだいている。形が変わる巨大なおっぱい。ちょっと憧れる。



「………お姉ちゃんってお兄ちゃんのこと好き?」


「大好きよ」


「………それって恋愛的に?」



 楓ちゃんがチラッと私の顔を見る。そりゃあ心配になるのも当たり前だよね。


 お姉ちゃんはキョトンとして、それから穏やかに微笑み、ゆっくりと首を横に振る。



「いいえ。私は弟くんに恋はしていないわ。私が向けているのは家族愛。妹ちゃん二人に向けているのと同じものよ」


「あぁ~よかったぁ」



 楓ちゃんが心の底から安心している。でも、次の一言で私は固まった。



「お姉ちゃんがお兄ちゃんに恋してたら葉月ちゃんに殺されるところだったよ。あぁ~安心した」


「ちょっと待って! なにそれ!? 私、人を殺したりしないよ!」


「もしだよ、IFなんだけど、お兄ちゃんが浮気したら、葉月ちゃん包丁で刺すよね? お兄ちゃんも浮気相手も」


「……………………………………………………………………刺さないよ?」


「何そのなっがい間は! それに疑問形だし!」



 あはは~。何のことかなぁ。私には一切わかりませ~ん。


 先輩が浮気しなければいいんです! そしたら問題なし! 私が犯罪者になる必要もありません!


 おっと、思わず本音が。



「まあ、お兄ちゃんが浮気するはずないんだけどね。…………はっ!? 何やらユウくんがムカッとすること考えている気がする!?」



 突然楓ちゃんがお隣の先輩の部屋へと顔を向けた。でも、両手はお姉ちゃんの胸を揉んだままだ。ちょっと私にも変わって欲しい。



「ちょっと何訳が分からないことを言ってるの? …………はっ!? 先輩がムカッとすることを考えている気がする!? 具体的にはお姉ちゃんの胸のことを考えている気がする!」


「うん、弟くんはお姉ちゃんのおっぱいのことを考えている気がするわ。お姉ちゃんは嬉しいです!」



 くっ! 私もそれなりの大きさを持っているけど、お姉ちゃんには遠く及ばない。


 先輩は巨乳好きなのか!? 大きいおっぱいが好きなのかぁ~!?


 あっ、よかった。何やら私のことを一番に考えてくれている気がする。許してあげましょう。



「まだムカムカが止まらない。こうなったらユウくんにメールを送ってみよ。内容は『殺す♡』っと。送信! ポチっとな」


「うわー。裕也先輩ご愁傷様。私も先輩に送ってみようっと。『先輩は私のおっぱいをどう思ってます?』っと。送信! ポチっとな」


「おぉーいいね! お兄ちゃんは何て返してくるかなぁ。で、ユウくんからは返信無しっと。お仕置きレベルを一段階あーげよっ」



 ピロリン!、と先輩からすぐに返信が来る。私は楓ちゃんとお姉ちゃんと一緒に内容を見る。



「『超好みだけど』…………先輩……」


「くわぁー! お兄ちゃん大胆! よかったね葉月ちゃん!」


「きゃー! 弟くんったら! ………お姉ちゃんも聞いてみようっと」



 ヤバい。超嬉しいんだけど。


 そうですかそうですか。先輩は私のおっぱいが超好みですか。


 やったー! 今度揶揄ってあーげよ。『先輩の超好みのおっぱいで抱きしめてあげますよー!』とかどうかな? よし、これでいこう。



「ユウくんから返信が来ない。お仕置きレベル更に上がりまーす! んで、お姉ちゃんはお兄ちゃんになんて送ったの?」


「『じゃあお姉ちゃんのおっぱいは?』って送りました」


「おぉう。何とも答えづらい質問を。さて、お兄ちゃんは何て返してくるかなぁ。ちょっと間違えれば修羅場に突入します。私は修羅場を見てみたい気がします!」



 修羅場って……楓ちゃん、流石にそれはないと思うよ。多分だけど。でも、ちょっとでもあれだったら…………先輩覚悟してくださいね?



「妹ちゃん……何その笑顔。ちょっと怖いわよ。あっ! 返ってきた。『素晴らしいものをお持ちだと思います。姉さん、よく肩がこってるのを見るから、いつでも言ってくれ。マッサージするから。弟より』だって。弟くん……そう、気づいてたの」


「う~ん、私はオーケーです。許してあげましょう」


「チッ! 修羅場が回避された。面白くないなぁ」



 お姉ちゃんはスマホを握りしめて嬉しそうに先輩からの返信を見つめている。楓ちゃんは舌打ちをしたけど、顔は嬉しそうだ。


 ここで変な回答をしたら一番楓ちゃんが怒りそう。意外と楓ちゃんってブラコンだから、女性に優しくない先輩のことを一番に嫌うのだ。



「マッサージ…ねえ? もしかして、二人ともお兄ちゃんの性感マッサージ受けた?」


「性感マッサージって…」


「普通のマッサージなら受けたわよ」


「いや、確かに普通のマッサージだけど普通じゃないというか、流石にアレは普通じゃないでしょ」



 お姉ちゃんと私は楓ちゃんから視線を逸らす。


 週一でお世話になっているとは言いづらい。確かに普通のマッサージなのに、効果は全然普通じゃない。楓ちゃんの言う通り性感マッサージだ。


 確かに疲労も癒されるけど、性欲も癒される。


 ただのマッサージだよ。普通のマッサージなんだけど、アレはいろいろとヤバい。自分でゴニョゴニョとマッサージするよりも効く。依存性がある。


 私としては週二、いや週三でもいいかな。



「その様子を見ると二人とも施術を受けたみたいだね。おめでとう。そして、ようこそ、お兄ちゃんに堕ちし快楽の世界へ」



 若干厨二臭いけど否定できない。楓ちゃんのニヤニヤが、ニマニマに変わる。物凄く楽しそうだ。



「おっと! 良いところでユウくんからの謝罪メール! うわぁ…言い訳と謝罪がたっくさん。お仕置きレベルを更に二段階上げよう! さってと、なんて返信しようかなぁ~」



 楽しそうな楓ちゃん。私とお姉ちゃんも一緒になって返信内容を考える。


 ワイワイガヤガヤ、キャッキャウフフと盛り上がりながら女子会&パジャマパーティが進んでいく。私たち三姉妹の賑やかな夜。


 愚痴も言ったし、生々しいこともたくさんお喋りした。とても楽しかったです。


 こうして、楽しい夜はあっという間に過ぎていった。

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