第93話 花火大会と後輩ちゃん その7

 

 やっと…やっと俺はお好み焼きを食べ始めることができた。作っても作っても、俺の分まで誰かが食べてるし、焼きそばも焼きトウモロコシも食べることができなかったのだ。あぁ…お好み焼き美味しい。


「「「「じ~~~~~~~~~!」」」」


 四人の視線が集まる。視線で、早く早く、と急かしてくる。

 はいはい。俺はゆっくり食べさせてもらえないんですね。今からタコ焼きを作る準備しますから!

 せっせと準備して妹の楓に目で合図を送る。楓が立ちあがって宣言する。


「では改めて、タコ焼きロシアンルーレットを開催しま~す! ドンドンパフパフ~!」


 わぁー、と裕也と後輩ちゃんと桜先生が拍手して盛り上がっている。俺もお好み焼きをモグモグしながら拍手する。美味うまっ! 俺が作ったお好み焼き美味うまっ!

 裕也が持ってきたたこ焼き器に生地を流し込んで…はい、お任せします。


「では、好きな具を入れまっしょい! 私はわっさび~♪」


「じゃあ俺は酸っぱい梅干し!」


「先輩! 私はからしとチーズで!」


「弟くん! タコとイカとエビをお願い!」


 後輩ちゃんと桜先生は触れるとポイズンクッキングのスキルが発動するので俺にお願いしてくる。お任せを! 俺は誰も入れなかったハバネロで。もちろん狙いは裕也。

 生地を更に上からかけて、少し焼いたらクルックルッと。


「おぉ~! 先輩上手ですねぇ」


 後輩ちゃんが感動している。ちょっと嬉しい。どやぁ!


「私もあとでやる!」


「俺も俺も!」


「私は……したいけどしません。食べる専門です!」


「お姉ちゃんも!」


 取り敢えず最初は俺にお任せらしいので、タコ焼きを綺麗にボール状にして完成。このままだとどれがどの味かわかるので、お皿に移してシャッフルしてわからなくする。みんなで一つタコ焼きを選んでフーフーッと熱を覚ます。


「ではみんな! せーのっ!」


「「「「「いただきまーす! ………………………熱っ!?」」」」」


 外側は冷えていたから口に入れると、火傷するくらい熱々の中身が飛び出てきた。全員涙目になる。

 そして、約一名は口を押さえてのたうち回っている。熱々のハバネロが飛び出たイケメン君、ざまあみろ!


「おっ! 俺は姉さんの海鮮タコ焼きだ。美味しいな」


「本当? よかったわぁ。私は梅干し! これは意外とありね」


「私は自分のが回ってきました。からしチーズ。これもありです」


「ぐおぉ~! 鼻がぁ! 鼻につ~んときたぁぁああああああああああ!」


「っ!?!?!??!??!??!!?!?!?!?!??!?」


 のたうち回るバカップル。ドンマイとしか言いようがないな。これぞロシアンルーレットという感じだ。見ている分にはとても楽しい。

 わさびの辛さが抜けた楓が涙目で宣言する。


「だ、第二回いっちゃいましょう! 私はカカオ99%チョコレート」


「私は~りんご!」


「俺は唐辛子!」


「お姉ちゃんはラー油!」


「フゥーフゥーフゥー! 颯めぇ! 俺はハバネロだぁ! 颯が食べろ!」


 一人恨みを込めてハバネロを入れてるけど、確率は五分の一だからな。俺が食べるとは限らないぞ。

 手際よくクルックルッと丸くして完成。今回もいい出来だ。またシャッフルして選んでいく。裕也は真っ先に選んだ。俺は最後に選ぶ。残り物には福があるからな。


「「「「「いただきまーす! ………………………熱っ!?」」」」」


 学ばない俺たち。全員涙目になって口の中を火傷する。

 約一名、自分の入れたハバネロでのたうち回っている。裕也君、南無阿弥陀仏。


「うわっ苦っ!? これって楓のチョコレートか!? まあ、甘くないだけマシかな」


「私は美緒お姉ちゃんのラー油! 美味しいですな!」


「このシャキシャキした食感はりんごね。ちょっと小さいから味がしないわ。食べた感触としてはいいけど」


「っ!?!?!??!??!??!!?!?!?!?!??!?」


「…………あぅあぅっ」


 死にそうな裕也は放っておいて、今にも泣きだしそうな後輩ちゃん。俺が入れた唐辛子だったようだ。熱くて辛くて口を開けたまま固まっている。乙女のプライドとして吐き出したくないようだ。あぁ、大きな瞳からポロポロと涙が零れ落ちてきた。猛烈に罪悪感が襲ってくる。後輩ちゃんごめん!


「後輩ちゃん吐き出してもいいぞ。牛乳あるから。唐辛子には牛乳がいいらしいから」


「…………あぅあぅ」


 首をフルフルと横に振る後輩ちゃん。意地でも吐き出すつもりはないらしい。かと言って食べることもできないらしい。俺は対応に困る。

 後輩ちゃんがいきなり俺にキスしてきた。固まっている俺の口を強引に開け、唐辛子タコ焼きが口移しされる。今回のキスはタコ焼きとソースの味とマヨネーズと唐辛子の味がしました。辛っ!?

 後輩ちゃんがごくごくと牛乳を飲み干す。


「ふぅ~! 辛かったです! あっ、先輩も牛乳どうぞ!」


 ごっくんと唐辛子タコ焼きを飲み込んで、後輩ちゃんから受け取った牛乳をごくごくと飲み干す。本当に唐辛子には牛乳が効くんだな。ハバネロには効かないらしいけど。辛さが強すぎるのか?


「プハァ~! って後輩ちゃん!? 何するんだ!?」


「何って口移し? 今更考えると恥ずかしいですね。さっきまで口の中が辛くて辛くて余裕がなかったんです! 先輩が入れた唐辛子ですので、先輩にも責任を取ってもらおうと思いました。でも、正直どうでしたか? 私に口移しされて嬉しかったですかぁ?」


「………………嬉しかったです」


「ふふふっ……正直でよろしい!」


 俺と後輩ちゃんは隣で見つめ合う。あぁもう、後輩ちゃんの口の端にソースが付いてる。ソースが付いてる後輩ちゃんもとても可愛いなぁ。

 後輩ちゃんの口を拭っていると、楽しそうな声が聞こえた。


「「うふふ! 仲がいいですなぁ」」


 しまった。すっかり忘れていたけど、ここには俺と後輩ちゃんの他にも人がいるんだった。全てを見ていた楓と桜先生がニヤニヤ笑っている。俺と後輩ちゃんは顔が真っ赤だ。恥ずかしい。

 裕也? あいつは口の中が辛くて床で喘いでいる。放っておこう。


「よっしゃー! もっとやろうぜー! お兄ちゃんよろしく!」


「任された!」


 俺はどんどんタコ焼きを焼いていく。途中楓も楽しそうにタコ焼きを作っていた。不格好だったけどとても美味しかった。

 美味しいタコ焼きから、ちょっと不味いタコ焼きもあってとても楽しかった。

 ハバネロタコ焼き? それは何故か裕也が全部食べてた。あいつも運がないな。ご愁傷様。

 またタコ焼きロシアンルーレットをしたいなぁ。

 こうして、楽しかった夕食が終わった。

 もうすぐ花火の時間だ。












「何故俺だけハバネロが入っているんだぁあああ! こうなったら全部ハバネロにしてやる!」


「「「「それはダメ!」」」」


「………はい。ごめんなさい」




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(実際に体験していませんので、味は保証できません。全て妄想です。ご了承ください。by作者)

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