第86話 食材の購入と後輩ちゃん

 

 桜先生の部屋着を何とか購入した俺たち。その後、下着や水着も買いたいということで、後輩ちゃんと桜先生に腕を掴まれ連れていかれそうになった。何とか逃れることができたけど。

 お店の外で待っていると、ホクホク笑顔の二人が袋を下げて出てきた。気に入ったものがあったらしい。


「せんぱぁーい! お待たせしました!」


「ごめんね、弟くん」


 美人と美少女が近寄ってきて、周りから物凄い嫉妬と殺意の嵐が吹き荒れる。出てきたお店がランジェリーショップ。それに気づいた男性たちが血の涙を流し始める。

 ランジェリーショップから出て来た可愛い女性が笑顔で男性に近寄って行ったら俺もムカッとしそうだな。男性諸君、気持ちはわかるぞ。だから俺を睨まないでくれ。


「選ぶのに時間がかかっちゃった」


「お姉ちゃんってすごい大人っぽいものを選ぶんだもん。流石の私も驚きました。まあ、お姉ちゃんの下着は見たことあったけど、本当にお店で買うんだねぇ。というか、お店にあるんだねぇ」


「だって、胸とお尻がちょっと大きいから……でも、妹ちゃんだって持ってるじゃん!」


「わーっわーっ! しーっだよ、しーっ! 先輩には……前に言ったけど、詳しいことは内緒なの!」


 後輩ちゃんが桜先生の口を塞いでいる。仲いいですなぁ。いろいろと興味はあるけれど、この人が多いところでそんな話をしないでくれるかな? 幸い誰にも聞こえていないみたいだけど、俺の胃が持ちそうにないです。あぁ~胃が痛い。


「先輩! いろいろと忘れてください。そして、楽しみにしててください」


「了解。さてお二人さん。少し早いけどお昼を食べようか」


「「はーい!」」


 うむ、良い返事。俺たちは周りの人の視線を集めながら移動した。

 レストランで食事をした後、買い物を続ける。買わないといけないのは明日のための食材。明日は花火大会があるけど、家から見えるので家でパーティをする。楓と裕也も来るらしいので、食材はいつもよりちょっと多く買う。


「後輩ちゃん、メモを渡すからよろしく。俺は籠に入れるから」


「了解です!」


「お姉ちゃんは?」


「後輩ちゃんのお手伝いをお願いします。メモに抜けがあったら教えて」


「はーい!」


 俺たち三人は買い物を始める。花火大会ということで屋台の料理が中心だ。焼きそば、お好み焼き、たこ焼きなどなど。炭水化物だらけにならないように、野菜たっぷりにしようと思う。もちろんお肉も入れる。偶には豪華にするか。

 キャベツ、にんじん、もやし、ジャガイモ、鶏肉、豚肉、牛肉、魚介類などなど、焼きそば用の麺やお好み焼き粉を籠に入れる。


「結構買うのね」


「自分の好きなものを入れてお好み焼きとか作ってもらおうかと」


「………………先輩。私はオーダーするだけですからね。絶対作りませんからね」


「……………お姉ちゃんも」


「わかってます! 二人は絶対に料理しないでください。食べる専門です」


 料理中にちょっと触るだけで発生する錬金術。先生の料理は見たことないけれど、ポイズンクッキングをする後輩ちゃんと同じスキルを持っているらしいから、絶対に料理はさせない。料理をさせたら良くて病院送り、悪くてあの世逝きだ。絶対に阻止しなければ。

 安心した後輩ちゃんと桜先生は仲良くメモを読み上げる。


「お菓子やジュースは楓ちゃんたちが持って来るらしいので、残りの材料は……卵、鰹節、青のり、紅ショウガ、チーズ、からし、ワサビ、唐辛子、ハバネロ、チョコレート」


「フルーツを入れても面白いんじゃない?」


「お姉ちゃんそれいい!」


「ちょっと待て! 途中からおかしなことになってるぞ!」


 楽しそうに盛り上がっている後輩ちゃんと桜先生を止める。途中から書いた覚えがない材料が混ざっている。一体何をするつもりだ!?


「えっ? タコ焼きロシアンルーレットをするんですよね?」


「しない!」


「「えぇー!」」


 なんで二人は残念そうなんだ!? 食べ物で遊ぶんじゃない!

 俺が毅然とした態度を取っていると、二人がコソコソと話し合い、俺に視線を向ける。胸を強調させながら、手を合わせる。そして、瞳を潤ませ上目遣い。俺は二人をボーっと見つめてしまう。


「先輩……」


「弟くん……」


「「お願い♡」」


「うぐっ!」


 か、可愛すぎる。女の武器を最大限に使ったおねだり。俺の心臓ハートが撃ち抜かれた。

 周りにも被害が及び、夫婦やカップルできていた男性たちが、後輩ちゃんと桜先生に胸を撃ち抜かれて倒れ込んでいる。目がハートマークだ。その男性たちをパートナーの女性が踏みつけている。壮絶な光景だ。

 皆さん、ウチの二人が失礼しました。


「………………わかった。どうなっても知らないからな」


「「やったー!」」


 俺は結局折れてしまった。二人は、イエェイ、とハイタッチしている。二人が楽しそうだから仕方がないか。お祭りだし、ちょっとは目を瞑ろう。ただし、自己責任です。ハバネロに当たっても文句を言わないでください。

 ありがとう、と嬉しそうな後輩ちゃんと桜先生は両側から抱きついてくる。柔らかくて甘い香りがしてとても嬉しいのですが、公共の場ということを忘れていませんか? 周りの男性たちが悔しそう。そして、パートナーの女性から殴られている。修羅場だ。


「さて、買い物を続けるぞ」


 俺は修羅場を見ないふりをして、二人を買い物へと誘う。周りに興味がない後輩ちゃんと桜先生は惨状に気づいていない。嬉しそうに俺についてくる。

 読み上げられた材料を籠に入れながら、俺はふと思い出した。


「………アップルパイ食べるか?」


「「食べる!」」


 目を輝かせる後輩ちゃんと桜先生。数日前に約束していたから、今日は丁度いいだろう。買って帰るか。

 そう考えていたら、後輩ちゃんがスススッと俺の前に来て、再びおねだりポーズをする。後輩ちゃんの可愛さに囚われて動けない。


「私、先輩の手作りが食べたいです」


「お姉ちゃんも!」


 桜先生までおねだりポーズをしてきた。もともと後輩ちゃんに弱いのに、桜先生までおねだりされたら断れないじゃないか!

 二人が追い打ちをかけてくる。


「手作りをしてくれたら、何でも言うことをききます」


「お姉ちゃんも何でも命令していいわよ」


「よし! 乗った!」


 美人と美少女が何でも言うことをきいてくれるのだ。この機会を逃すわけにはいかない。俺も男だ。仕方がない仕方がない。何を命令しようかなぁ。よく考えなければ。

 こうして、手作りのアップルパイを作ることが決定し、二人への命令権を獲得して、俺たち三人のお買い物が終了した。


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