第40話 お留守番する私

 

 先輩がお出かけの準備をして私にあれこれ言ってくれる。


「後輩ちゃん、お昼は冷蔵庫に入れておいたから、レンジでチンしてね」


「はーい! たまには男同士で楽しんできてくださいね!」


 いつも私のお世話をしてくれる先輩には、たまにはゆっくり羽を伸ばしてもらいたい。先輩はなかなか友達と遊びに行かないから。私のせいじゃないよね? 今度聞いてみよう。

 私は先輩を玄関まで見送る。靴を履いた先輩が私のほうを振り向いた。そして、ぎゅっと抱きしめてくる。えっ? 何事!? 何で先輩は私を抱きしめてるの!?


「いってきます」


 私の耳元で先輩が甘く囁き、頬に柔らかい感触がした。先輩がキスしてきたのだ。

 先日、勢いで先輩に行ってきますのキスとお帰りのキスを義務付けた。先輩はそれから毎日キスしてくれる。

 嬉しい…超嬉しいけど、気絶しそうなほど恥ずかしい!

 私は恥ずかしさを押し殺し、先輩の頬にキスをした。


「い、いってらっしゃい」


 よし! 今日はキス出来た。いつも気絶しそうだったからキスをしたくてもできなかった。今日はやっとできた! 私、今絶対顔が真っ赤になってる。体が熱いもん。こうしてると夫婦みたい。恥ずかしいけど嬉しいなぁ。あぁ……でも先輩は今からお出かけするのか。ちょっと寂しいかも。

 先輩が腕を私に向けたけど、途中で止まった。一体何をしたかったのかな?

 ちょっと寂しそうな先輩が何やら決意に燃えてお出かけしてしまった。

 私は一人、静かな家でお留守番。ずっと先輩と一緒に居たから寂しさがこみ上げてくる。


「よし! 先輩がいないからゴロゴロして過ごそう!」


 まあ、先輩がいてもゴロゴロして過ごしてるんだけどね。私は本や漫画を持ってリビングに寝転がる。そして、読み始めた。本や漫画に飽きたらゲーム。ゲームに飽きたらまた読書。これのループ。

 あっという間にお昼になってしまった。私は冷蔵庫から先輩が作ってくれたお昼ご飯を取り出す。今日はチャーハンだ。野菜とかも入っていて美味しそう。

 おやっ? 何やらメモ書きが……。


「なんて書いてあるのかなぁ?」


『後輩ちゃんへ

 いつも美味しそうに食べてくれてありがとう。

 奥にプリンが入っているから食べてください。

                   颯より』


「………………おぉ」


 先輩……最初の一文を恥ずかしくて口では言えないからメモにしたな? もうヘタレ先輩ったら! 嬉しいじゃん! このメモは私の宝箱行き。大事にしまっておこう。

 チャーハンをレンジでチンしているうちにプリンを確認する。これは………先輩の手作り!? そういえば昨日何かを作っていたなぁ。プリンを作っていたのか。先輩ありがとうございます!

 先輩の手作りのチャーハンもプリンも私好みの味で、大変美味しくいただきました。

 お腹いっぱいになった私はまたゴロゴロする。ゴロゴロして読書、ゴロゴロしてゲーム。私はピタッと動きを止めて、静かな空間に呟く。


「………………飽きた」


 一時間もすると飽きてしまった。

 先輩がいない部屋は静かでとても寂しい。いつもは先輩がかまってくれるから退屈なんかしないんだけどなぁ。うぅ…先輩成分が足りなくなってきた。先輩成分を補給する方法は……。


「ハッ!? 今は先輩がいないじゃないか! 何で思いつかなかったんだろう!?」


 私はダッシュで先輩の寝室に向かう。


「ダーイブッ!」


 私と先輩の愛のベッドにダイブする。そして、ゴロゴロと転がり、先輩の枕に顔を埋める。はぁ……先輩の香りだ。落ち着く。なんで午前中からこうしなかったのだろう。もっと早くに気づけば先輩の香りをもっと堪能できたのに。惜しいことをした。

 私は先輩の枕にフガフガと顔を埋めて両足をパタパタさせる。最近は私も一緒に寝ているから私の匂いもベッドに混じっている。枕は別なので今だけは先輩だけの香りを堪能する。あんまり顔を押し付けすぎると私の香りも混ざっちゃうけど。

 先輩成分を補給したところで、私はベッドでゆっくりする。今から何をしようかなぁ。小説や漫画とかではここでエッチな本とか探すけど、先輩は持っていないから意味ないし。

 うぅ…暇だなぁ。寂しいなぁ…。先輩……せんぱぁ~い……。


「やっぱり先輩のベッドは気持ちいいなぁ………………ん? 先輩のベッド? 先輩のベッド!」


 そうだ! 最近一緒に寝てたから忘れてたけど、ここは先輩の寝室で私が寝ているのは先輩のベッドだ!


「まだ先輩は帰ってこないよね? ふふふ…今まで溜まりに溜まったストレスを発散しよう!」


 私はストレス発散の準備を始める。

 ふふふ…燃えてきた! 最近は全然してなかったし、今日は疲れ果てるまでストレス発散しよう!

 私はそう決意してストレス発散を始めた。

 ………

 ……

 …



























 …

 ……

 ………

 髪を撫でられている気がした。優しく撫でてくれるから気持ちいい。私の意識が夢の世界から浮上する。


「………んぅ~…」


 眩しくて声を上げたら、寝ぼけ眼に先輩が見えた。先輩が私の頭を撫でてくれたようだ。あれ~? でも、これって夢? それとも現実? どっちかわかんないや。


「ふぇ~? しぇんぱい?」


「葉月ただいま」


 あ~先輩だぁ~。先輩が私のおでこにキスしてくれた。わーい! もっとしてほしいけどその前に言わなきゃいけないことがある。


「おかえりなしゃい」


 先輩の手を取ってスリスリする。先輩だ! 先輩だ! 大好きな先輩だ!

 うぅ~寂しかったですぅ~。もう離してあげません! 私と一緒に居てもらいます!

 私が先輩をベッドの中に連れ込む。そして抱き枕にする。ふぁあ…落ち着きますぅ。でも、一日甘えられなかったから、まだまだ足りません! もっと、わたしにかまって! 可愛がって! たくさん甘やかして!

 私はまだ半分夢の世界に居ながら先輩に甘えまくった。

 完全に目を覚ました私は、寝ぼけた時の自分を思い出して、顔から火が出るくらい恥ずかしかったです。危うく気絶するところでした。






<おまけ>


 完全に目覚めた私はふと疑問に思う。あれ? 私はいつの間に寝てたんだろう?


「後輩ちゃん後輩ちゃん。服が盛大に乱れてるけど」


 ハッ! もしかして、私は先輩のベッドで性欲発散……じゃなかった! ストレス発散をして、疲れ果ててそのまま寝ちゃった!? ということは私はそのままの状態で寝ちゃった!? 服やベッドも濡らしたまま!?


「っ!? み、見ちゃダメです! 先輩出てけぇ~!」


 私は性欲……じゃなくて、ストレス発散に使っていた枕を先輩に投げつけ、部屋から追い出した。

 先輩が部屋からいなくなった後、私は証拠隠滅を行った。

 その夜は、とある理由で湿ってしまったベッドで先輩と一緒に二人で寝ました。幸いバレなかったようです。

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