第14話 告白と後輩ちゃん
「好きだ! 俺と付き合ってくれ!」
放課後に入ったばかりの教室に声が響く。
ほとんど全員のクラスメイト達がキャーキャーと歓声を上げたり、ヒューヒューと揶揄っている。
女子はキラキラとした眼差しを向け、男子は睨みつけたり殺気を向けたりしている。
クラス全員がハラハラドキドキして見守っている。
俺もハラハラドキドキしながら後輩ちゃんの様子を待つ。
「ごめんなさい」
後輩ちゃんが冷たい声で頭を下げた。
ですよね~。後輩ちゃんは付き合わないよね。
俺はホッとしてお隣の後輩ちゃんを見た。
そう。後輩ちゃんに告白したのは俺ではない。今回後輩ちゃんに告白したのは確かサッカー部の三年生だったと思う。ずっとレギュラーで女子から人気が高い先輩だ。
まさか断られるとは思っていなかったのか、サッカー部の先輩の顔が変な顔のまま固まっている。
「付き合うつもりはありません」
後輩ちゃんがバッサリとぶった斬る。後輩ちゃんの顔が無表情だ。
あ~イライラしてそう。そう言えば、朝から女の子の日が来たから辛いってぶっちゃけてたな。今日はちょっと重くて辛いらしい。
帰りに甘いものでも買って帰ろうかな。プリンとかどうだろう。
「り、理由を聞いてもいいかな?」
強張った顔でサッカー部の先輩が聞いた。
あ~あ、踏み込んじゃいますか。大人しく引けばいいのに。
後輩ちゃんのイライラが溜まっていくのがわかる。ただでさえ男性は苦手なのに。
「お伝えしましたよ。付き合うつもりがないからです」
「れ、恋愛に興味がないってことかな? それなら俺と試しに付き合っても…」
「何を言っているんですか? 恋愛には興味ありますよ。でも、あなたと付き合うつもりは全くありません」
「な、ならお友達からとかはどう? 徐々に仲良くできたらなぁって……」
あ~あ。後輩ちゃんが不機嫌マックスになった。早く逃げたほうがいいぞ。
表情とか全く変化ないけど俺にはわかる。今の後輩ちゃんはめちゃくちゃ不機嫌だ。
この後、後輩ちゃんをなだめるのは俺なんだぞ。ご機嫌取り大変なんだからな!
さっさと帰る準備をしよう。
「私は仲良くなるつもりはありませんから」
「で、でも……」
「それに私には好きな人がいますから。その人としか付き合うつもりはありません」
サッカー部の先輩とクラスの男子たちの顔が強張り、クラスの女子たちから歓声が上がる。
俺のほうに視線が集まるのはなぜだろう? 俺は彼らの視線を無視する。
後輩ちゃんがチラッと俺のほうを見た。うわー嫌な予感がする。
「ではお話は以上ということで」
目の前のサッカー部の先輩を気にせずに、後輩ちゃんが無表情で帰りの準備を始めた。サッカー部の先輩は何やら後輩ちゃんに話しかけているが全部無視されている。
残念。後輩ちゃんに嫌われたな。ご愁傷様です。
後輩ちゃんが帰りの準備を終わらせた。
俺の直感が反応した。警報が鳴っている。
今まで無表情だった後輩ちゃんが輝く笑顔を俺に向ける。
「先輩、お待たせしました。一緒に帰りましょう! 今日の晩御飯は何ですか?」
一斉に俺に視線が集まる。女子たちからはキラキラした瞳で、男子たちからは嫉妬と殺意と憎悪。ブツブツと呪詛を吐いている者もいる。
俺の嫌な予感は当たった。俺を巻き込むつもりだな。
後輩ちゃんがとてもいい笑顔を俺に向けている。
「な、なんのことだい?」
めっちゃ棒読みになった。
「またまたぁ~! 毎日一緒にご飯を食べているじゃないですかぁ!」
うわーもうやめてくれ! 周りの視線が痛いから!
後輩ちゃんはとても楽しそうだ。俺を弄ってそんなに楽しいか!?
「今日はカレーですか? それとも昨日と同じ肉じゃが?」
「わかった! わかったよ! 今日はカレーだ」
「やったぁ!」
後輩ちゃんが喜んでいる。後輩ちゃんはカレーが好きだからな。今日はちょっと頑張って作るか。
「ふ、二人はどういう関係なんだい? もしかして好きな相手って…」
あれ? サッカー部の先輩はまだいたのか。気づかなかった。さっさと部活に行けばいいのに。そろそろ部活が始まるんじゃないか?
「ご想像にお任せします。まあ、一緒にご飯を食べるくらい仲はいいですね」
後輩ちゃん…どんどん爆弾を落とさないでくれ。周りには沢山人がいるんだぞ。
あぁ…俺、明日には死んでるかも。俺の平穏な高校生活が…。
「この間も先輩といろいろしてたらゴムが切れちゃって、買い直さないといけないんですよね」
周りが騒めく。『いろいろ!? ゴム…ゴムってまさかっ!?』『あいつ殺す!』『もしかして……キャー!』という声が聞こえてくる。
俺はダラダラと冷や汗を流す。後輩ちゃんの言葉は間違ってはいないが、なぜわざと誤解を招く発言をする!
「髪ゴムな! 髪ゴムだからな! 後輩ちゃんと買い物デートしてる時に切れたやつだろ! あっ…」
俺は必死に言い訳するが、焦っていたため余計な言葉も言ってしまった。
後輩ちゃんがニヤニヤと笑っている。
周りから『デート!? デートだと!?』という声が上がり、キャーという女子の歓声が上がる。
「あぁもう! さっさと帰るぞ後輩ちゃん!」
「はーい! あ・な・た♡」
「止めろ後輩ちゃん!」
「ふふふ。先輩…今ドキッとしましたね? 顔が赤いですよ」
「う、うるさい! 言っておくけど後輩ちゃんの顔も赤いからな!」
「な、なんのことですかー?」
後輩ちゃんが棒読み口調で答えた。
まったく後輩ちゃんは何かあれば俺を揶揄ってくるんだから。
俺たちは固まっているサッカー部の先輩を置き去りにして、騒ぎ立てるクラスメイト達も無視してクラスを出た。
あぁ…明日は大変そうだな。殺されないといいなぁ。休みたいなぁ。
「そうだ。帰りにプリンでも買って帰ろうかと思うんだけど」
「プリンですかっ!? いいですね! 何にしましょう? 普通の? カスタードプリン? 焼きプリンもいいですねぇ」
「俺と半分こするか?」
「します! 二つの味を食べれるんで! あっ、またあ~んしてあげましょうか?」
何という提案をしてくるんだ! 後輩ちゃんは悪魔だな。いや、小悪魔だ。小悪魔のささやきが魅力的過ぎる。
「………………………………お願いします」
「ふふふ。了解です」
後輩ちゃんが嬉しそうに笑った。お年頃の俺は小悪魔の誘惑に負けてしまった。
しょうがないだろ! 俺も男なんだから! 美少女の後輩ちゃんのあ~んだぞ!
それにしても後輩ちゃんの機嫌が元に戻っていてよかった。少しでもイライラがなくなったならいいかな。
俺たちは帰り道にプリンを買って帰った。そして、あ~んしながら食べました。とても美味しかったです。
次の日はクラスメイト達に尋問された。精神的に疲れた俺は後輩ちゃんに癒してもらいました。後輩ちゃんの頭なでなでは気持ちよかったです。
俺は三倍長く後輩ちゃんの頭とお腹を撫でました。後輩ちゃんの頭とお腹は撫でていてとても気持ちよかったです。
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