第12話 ぶっちゃける後輩ちゃん
日曜日の今日、俺はリビングに寝転んで小説を読んでいた。そして、後輩ちゃんは俺のお腹を枕にして漫画を読んでいた。
後輩ちゃんは俺を枕にするのが好きらしい。よくお腹や背中や太ももを枕にしている。
「ふふふ。先輩のお腹がくるくる言ってます」
「そうなのか? 自分ではわからないな」
「そうなんですか? 私のお腹の音を聞いてみます?」
「………………聞く」
俺は欲望を抑えられなかった。
だって後輩ちゃんのお腹だぞ! 触れるなら触りたい!
まあ、普通に触ったとしても後輩ちゃんは許してくれるだろうけど。
俺は寝転んだままの後輩ちゃんのお腹に耳をつけた。
後輩ちゃんのお腹はふにふにして気持ちいい。
決して太っているわけではない。太ってはいないけど気持ちいいのだ。それにとてもいい香りがする。
おぉ、いかんいかん。後輩ちゃんのお腹の音だったな。
「ふむ……ぼこぼこ言ってるな。あっ今ぐぅ~って言った!」
「今のは自分でもわかりましたね。何かこうしてるとお腹にいる赤ちゃんの音を聞いているみたいですね」
「そうだな。俺が父親で後輩ちゃんが母親。で、俺たちの子供………」
うわっ。自分で口出したらめちゃくちゃ恥ずかしい。絶対顔真っ赤になってる。体が熱い。
チラッと後輩ちゃんを見ると、後輩ちゃんもめちゃくちゃ恥ずかしがっていた。目はせわしなく動き、挙動不審になっている。
俺たちの間に気まずい雰囲気が流れる。
「も、もういいですよね! 先輩! 私の枕になってください!」
「お、おう!」
俺たちは再びさっきと同じ格好になった。とても気まずかったけれど、お互い小説や漫画を読み始めたら次第に落ち着いていった。
漫画を読みながら後輩ちゃんがぼそりと呟く。
「今日は日曜日でしたよね?」
「ん? そうだが?」
今日は日曜日。明日から学校だ。
あ~行きたくない。ズル休みしたいけれど、後輩ちゃんも一緒だから休めないんだよなぁ。あぁ……行きたくないなぁ。
俺がブルーな気持ちになっていると後輩ちゃんがブツブツと呟いている。
「今日は日曜日………えっと何日だっけ? えっと………………あぁっ!」
後輩ちゃんが突然大声を上げて跳ね起きた。
俺は後輩ちゃんの声にびっくりした。
「あぁ! 今日は! ヤバい!」
そして後輩ちゃんは走って俺の家のトイレに向かう。
「あぁ! ここ私の家じゃなかった!」
後輩ちゃんがトイレから飛び出し、家の鍵を握りしめて俺の家から慌てて出て行った。
俺は何が起こったのか全く分からない。
ポカーンと固まっていると、すぐに後輩ちゃんが俺の家に戻ってきた。
何やら安心している。
「いやー危なかったです。焦りましたぁ。あっ先輩、焦ったら喉乾きました。お茶ください!」
「お、おう。ちょっと待っててな」
俺は自分が一旦冷静になるために後輩ちゃんと自分のお茶を準備する。
俺はお茶を準備し、飲みながら後輩ちゃんに質問した。
「慌ててどうしたんだ? びっくりしたぞ」
「まぁぶっちゃけると、月経です。生理です。女の子の日です。予定は数日後ですが」
「ぶふぅー!」
俺は後輩ちゃんのぶっちゃけにお茶を盛大に吹き出した。
ゲホッゲホッ! く、苦しい。
でも、何とか後輩ちゃんにかかることはなかった。
「あぁ! 先輩何やってるんですか! タオルタオル!」
後輩ちゃんが持って来てくれたタオルで吹き出したお茶を綺麗に拭いた。そして、後輩ちゃんがお茶を注いでくれた。
「あ、ありがと後輩ちゃん」
「どういたしまして。で? どうして吹き出したんですか?」
「いや! 後輩ちゃんがぶっちゃけるからだろ!?」
「いや別に恥ずかしいことじゃないですよ。全くエロくありませんし」
「エロくはないかもしれないけど、恥ずかしくないのか!?」
「全然。相手は先輩ですし。それに女の子は月に一回来るんですよ。めちゃくちゃ大変なんですから! ちょっと間違えれば血だらけですよ! 何回失敗したと思うんですか!? めっちゃ大変なんですから! それにお腹は痛いわ、頭痛いわ、身体怠いわ、貧血になるわ、イライラするわ、落ち込むわ、不意打ちで来るわ、その他いろいろ大変なんですからぁああああああああああ!」
後輩ちゃんの目が本気だ。俺は無意識に正座している。後輩ちゃんの勢いは治まらない。
「もう慣れましたけど! 慣れましたけどっ! 酷いときなんか何もしたくないんですから! 学校でも大変なんです! 匂いも気になっちゃいますし………。女の子は大変です。それなのに…それなのに………男共は呑気にへらへらしやがって……! この辛さを男の人にも味わわせてやりたいです!」
拳を握りしめて目を燃やしている後輩ちゃん。後輩ちゃんが怒りに燃えている。
「男を代表して謝罪します! 申し訳ございませんでしたぁぁあああああああああ!」
俺は土下座して謝る。俺たち男は後輩ちゃんたち女性の辛さや気持ちを分かってあげられない。話では聞けるけど、実際に体験することは出来ないからその辛さがわからない。
「先輩、頭を上げてください。別に先輩を悪く言ったわけではありませんから。少なくとも先輩は理解しようとしてくれますし、私はそれだけで充分です」
「そうか? これから辛かったりしたら遠慮なく言ってくれ。何か手伝えることがあったら何でもするから!」
「わかりました。その時は遠慮なく言います。というわけで先輩、一緒にお買い物に行きましょう!」
「は?」
俺はどういうわけなのか理解できない。ボカーンと後輩ちゃんを見ると、怒りは治まりニコニコ笑顔の後輩ちゃんがいた。
「どういうわけだ?」
「詳しく説明すると、引っ越しのドタバタや新学期のドタバタですっかり忘れていたので、生理用品が残り少なくなっています。だから買いに行きましょう!」
「俺も?」
「そうです、先輩もです!」
「まぁ、午後から買い物に行く予定だったし、その時に買うか」
「はい! お買い物デートです!」
「デートなのか?」
「そうです。デートなのです!」
「デート……デートなのかぁ。よし! お買い物デートに行くか!」
「はい!」
嬉しそうな後輩ちゃん。
こうして俺たちは午後からお買い物デートに行くことになった。
まぁ、もとから二人でお買い物に行く予定だったけど。じゃないと食料品などが足りない。お弁当のおかずも買わなければならないのだ。
お買い物のあとにデートと付けるだけでなぜだか楽しみになってくる。
後輩ちゃんとのお買い物デートが楽しみだ!
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