第2話

「すごい人だね~!」

「人気のアトラクションは2時間待ちとかなんだって!」

「観覧車乗れるかな~」

遊園地に着いてみると、園内は人だらけ。ジュースやポップコーンを買うのにも、行列に並ばないといけないくらいだ。

「鈴花は観覧車に乗りたいのか?」

「うん、乗りたい!」

「よし、じゃあ早速乗りに行こう!」

観覧車の待ち時間をみると50分だったので、他のアトラクションよりはマシだろう。3人で列の最後尾に並び、入場時にスタッフから受け取っていた園内マップを見ながら、次にどこに行きたいか話して待ち時間を潰していた。


「申し訳ありませんが、アトラクションでトラブルが発生したため、現在システムを調整中です」

観覧車で電気系統のトラブルがあり、復旧作業に30分程度かかるというアナウンスが流れ、列に並んでいる人たちから不満の声が漏れた。それは鈴花も同じだった。

「まだ乗れないの?疲れてきちゃった~」

徐々に苛立ち初め、鈴花の[怒]メーターが55を表示していた。ちなみに喜怒哀楽の[怒][哀]はマイナスな感情ではあるが、この2つも立派な人間の感情なので、電力に変換することができる。今も家のリビングにある貯蔵器に電力が貯まっていることだろう。

「お待たせ!はい!」

「わ~い!」

復旧作業中に美香が列を抜けだし、ソフトクリームを買ってきてくれた。これで鈴花の機嫌も元通り。現にさっきまでの[怒]メーターの数値がそのままそっくり[喜]メーターに変わっていた。子供は本当に感情が豊かだな。


「久しぶりの休みなのに、家族サービスしてくれてありがとね!」

一日中歩き回って疲れ果てたのか、車に乗るとすぐに寝てしまった鈴花を、優しい顔で見ながら美香は言った。

「俺もリフレッシュできたし、明日からも仕事頑張れそうだよ」

照れている表情を見せないように、真っ直ぐ前を見ながらそう応えたが、俺の[喜]メーターは正直に80を表示していた。

「あ、すごい喜んでる!」

「おい、人の感情を勝手にみるなよ!」

「でもこれってほんとにありがたいよね、感情を電力に変換できるから、今までよりも多少だけど電気代が浮くし」

美香は自分の手首につけている感情力発電装置をいじっていた。

そう、少しだけだがこの装置のおかげで電気代が節約できる。さらに感情が数値として表れるので、今までよりも感情を表現しやすくなったのもこの装置による大きな恩恵の1つだと思う。相手の感情も分かるので、円滑にコミュニケーションをとることもできる。


今日一日で疲れ果てた3人は、家に着くとすぐに布団の中に入った。身体は疲れているはずなのに、俺だけは明日からの仕事を考えてしまい、眠れない夜を過ごした。

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