家庭内別居でトケる〜!

 カタメの父親は元来が厳格な性格であることもあり、本当にトケルを別居状態に追い込んだ。


「意地悪してるみたいなやり方は好まない。だからキミが快適な状態でいられるよう配慮する」

「配慮しつつ別居ですね」

「ああ」

「お義父とうさん」

「だから義父さんじゃないって」

「一日に何回カタメくんに会っていいですか?」

「家の中ではダメだ」

「じゃあ、学校でならばいいと」

「当たり前だ。キミとカタメはクラスメートなんだから」

「ふむう・・・それで?わたしが食事をする場所は?わたしが使わせていただいている寝室ですか?」

「いいや。それではまるで虐待だからね。下宿生用の食堂で食べてもらう」

「?下宿生の食堂?」

「これだ」


 トケルの父親はキッチンの家族用大テーブルの横にある一人掛けのスチール・テーブルを指し示した。


「下宿生はこのテーブルで食事をしてもらう。配食はセルフサービスだ」

「こっちの方が虐待っぽいですよ」

「お代わり自由だぞ」

「やった!」


 こういう事態になってもトケルは一向に焦った様子を見せなかった。それどころか露骨にカタメにいちゃつき始めた。


「カタメくん。襟元直してあげる」

「い、いいよ。ホラ、父さんが見てるから」

「OKOK。さ、できたよっ!」

「ウォッホン!」

「ホラ、父さん怒ってるよ」

「いーからいーから」


 そして学校でトケルは更に激しくカタメにくっついた。


「カ・タ・メ・く〜ん」

「ト、トケルさん。みんな見てるから・・・」

「いーじゃない?別居中だから学校で会った時ぐらい」

「別居!?」

「とうとうカタメとトケルも離婚の危機か!」

「いや別に結婚はしてない」

「ううん、事実婚も同然だよね、カタメくん」

「トケルさん、かわいそうに。おい!カタメ!どうして別居してるんだ!トケルさんを追い出したのか!?」

「家の中には居る」

「いわゆる家庭内別居ってやつだよね、カタメくん」


 もはやクラスは総小姑状態だった。


 そんな中、小姑よりも深く問題に首を突っ込んでくる者たちがいた。


「お舅さま・・・つまりカタメくんのお父さんがトケルさんを敵視してるってことだよね。どうして?」

「ロカビーさん。多分、俺とトケルさんが高校生らしからぬ不純な付き合いにならないかと心配してるんだと思う」

「高校生らしいなら不純だろ?」


 ネロータは茶化すように言うが一応心配はしているようだ。


「トケル、もしかして寝る場所もないのか?寝る場所がないならカタメの部屋にこっそり忍び込んでちゃんと暖かい布団で寝ないと体がもたないぞ」

「あ、ネロータちゃん、それグッド!」

「トケルさん!」

「おーいおいおい」

「カタギリーくん、泣いて悲しんでくれてるんだね」

「あ、そうだ!」

「な、なに?ロカビーさん。大きな声出して」

「わたしたちがお泊まりしに行くっていうのなら、場が和まないかな」

「ロカビー。いいアイディアだけどまだまだインパクトが小さいな」

「じゃあネロータちゃんはどうすればいいと思う?」

「ホームパーティーやろう」

「ホームパーティー?」

「闇鍋さ」

「闇鍋?」

「クラス全員でな」


 トケルもカタメもロカビーもカタギリーも、闇鍋やみなべそのものよりも他人の家のホームパーティーを企画立案するその神経に戦慄していた。

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