下民の最強回復術師

@j-master

第1話 ゼロとイチ

 皇族>貴族>市民>下民。これがこの世界の身分制度であり、絶対優先事項されることである。しかし、最下身分である下民の1人の少年がそんな世界を変えてしまうそんな話。



「ふぁーー。今日も雑用かよ」


「欠伸をするなイチ。主に見つかったらどうするんだよ!」


「わりぃわりぃ」


 この愚痴をこぼしているのは、僕の親友でもあるイチ。僕らは下民であるため名前などはなく番号でそう呼ばれているため、僕もイチと呼んでいる。ちなみに僕の名前はゼロである。1番最初にこの家にやってきたのでゼロと呼ばれている。


 本当は他に5人くらいいたのだが、森に出て行ったきり戻ってこない。おそらく死んだか、逃げたかのどっちかだ。僕らは1度も森に入ってはいない。


 森の中には魔獣。いわゆる魔族の飼いならしのペットどもがうじゃうじゃいるのだ。僕ら人族は15歳になったら教会行って称示と呼ばれる、自分の能力を開示してもらえるようになる。まぁ、下民である僕らは教会に行くお金すらないからまず行けないし、身分の高い方が能力もすごいと言われている。天候を操るものとかもいるらしい。


 どちらにしろ下民である僕らは一生関わりのない人物ではあるだろうが...。


「おーーい、クソども! 今日は薪割りだ。しっかり働けよ!!」


 今声をかけてきたのが僕らの主だ。奴隷みたいに主従の契約はないが住まわせてもらっている以上、労働で返せということで働いている。他の人に比べて食事もちゃんと出すし、優しい人ではある。


「ほら、やるぞイチ」


「へいへい~」


 薪割りも半分差し掛かったその時、


『ドガーーーン!!!』


 すごい音とともに僕らの住んでいた小屋は壊れた。何が起きたのかわからずいたが、すぐに理解ができた。モンスターの襲来だ。僕らの目の前には緑のモンスターが数十体いた。


「ゼロ!! あれはゴブリンだ!」


「ゴブリン!? なんで知ってんだよ」


「主の書斎に入って読んだ本に書いてあった!」


「また、入ったのか!? 懲りないやつだな...」


「そんなことより、こいつらだ! モンスターの中でも最も下位のモンスターらしい」


「でも、どうするんだよ!」


 すると、イチは小屋に走っていき、戻った時には2本の剣を持っていた。


「これで倒すぞ!!」


「ほんかよ...」


「俺らの修行の成果を見せるときだぜ!?」


 そう、僕らは2人で修行をしていた。修行と言っても剣を使っての模擬戦だ。それがこいつらに通用するかと言ったらすぐにはうなずけない。しかし、僕ら以外の人間はほぼ死んでしまっている。やるしかないのだ!


「わ、わかった!!」


 ゴブリンどもは連帯行動をとっているように見える。前には盾部隊。後ろには弓矢。そしてその間に剣。実に合理的な攻撃方法だ。


 イチと僕の剣の腕は正直言ってすごいほうだと思う。僕らは4万回模擬戦をやって2万勝、2万敗なのだ。いわば五分五分である。


 そして、そのイチは剣を盾を持つゴブリンに当てた。すると、パワーで押し切ったのか、盾ゴブリンが吹き飛んだ。しかし、その裏には剣ゴブリンだ。それを僕が剣でとめ、イチとチェンジする。剣ゴブリンも倒した。さらにその裏にいる弓矢ゴブリンにも撃たせる暇を与えず、僕とイチはものの数十秒ですべてのゴブリンを殲滅した。


 しかし、


「なんなんだあれ....」


 僕とイチの目に映ったのは、デブで棍棒を持った2メートル級の怪物だった。


「なんでトロールがいる...」


「おい!! イチあいつはなんなんだ!?」


「あいつはトロール。上級種のモンスターだ」


「上級種?」


 イチ曰く、豪級>特級>上級>中級>下級という順番でモンスターの強さが分かれているらしい。豪級は勇者級のバケモノしか倒せない怪物だ。そして、上級であるトロールは金等級の冒険者が10人でやっと倒せるレベルだ。


「嘘だろ...」


「やるしかないぞ!! もう残ってるのは俺らしかいないんだ!!!」


「わ、わかった!!」


 走り始めたイチの後ろにくっついて僕もトロールに向かう。トロールは思ったより遅い攻撃であり、避けながら切り付けていくが、傷が一瞬でなくなっていく。


「なんで、傷が消えてるんだ!?」


「おそらく、回復しているんだと思うぞ」


「そんなのありかよ...」


 しかし、剣以外で戦う術がなく自分んたちの体力が減っていくばかり。そして、イチの足がもつれてしまった。その瞬間をトロールは逃さなかった。


「ドカーーン!!!!」


 トロールの棍棒がイチにクリンヒット。イチは吹き飛び小屋に衝突した。


「イチーーーーー!!!!!!!」


 僕は慌ててイチのところ行くため、戦場を離脱。腕でガードしたのか腕はぐちゃぐちゃ。それでも防ぎきれてなかったのか腹部もぐちゃぐちゃになっていた。すぐさま治療をしたいが、する術がない。


「おい!! イチ大丈夫か!?」


「いや、結構...やばいや...」


「死ぬなよ! 絶対に!!!」


 もし、僕にイチを治す力があったら....。そのとき、僕の頭に声が入ってきた。


『人を治す力が欲しいですか?』


「誰だ!!!???」


『もう一度聞きます。人を治す力が欲しいですか?』


「.....あぁ。欲しい!!!!」


『いい返事です』


 そして、僕の頭の中に無数の回復魔法らしきものが入ってきた。それをすぐさまイチに使用した。


【回復魔法ヒール】


 詠唱をすると、イチの体は少し治った。でも、体はドッと疲れを感じてしまい、治った部分は少なくまだまだ大量の出血が出ている。


「ダメだ...。止まらない!!」


『しょうがないですね、私の加護をあげましょう』


「加護? わからないが欲しい!」


『その代わり対価が要求されますがいいでしょうか?』


「なんでもいい! とにかく加護というものくれ!!!」


『いいでしょう』


 すると、体がスッと軽くなり力が満ちるようだった。


【大回復魔法ハイヒール】


 詠唱とともにイチの体の傷は完全に塞がった。よし、治った!! イチは何が起きたのか理解できずにいた。なんせ致命傷の傷を一瞬で治してしまったのだから。


「ゼロ、お前はいったい....」


「驚いている場合じゃないよ! まだトロールが残ってるぞ!!」


「お、おう!」


 そして、再びトロールとの決戦のゴングが鳴った。

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