第2話 カフェにて

 今日の学校では色々やらなきゃいけないことがあったため、頑張って全てこなした自分へのご褒美と称して好きなカフェに立ち寄る。それにしても、本当に今日は忙しかった。朝は部活の朝練、昼休みは部活のミーティングでほとんどの時間を過ごし、放課後は委員会に出席した後また部活に行った。そんなこんなでとても疲れたのだ。その上今日は大嫌いな家庭科の授業が2時間続きであるという始末だった。

 しかし、ラッキーなことに今日はバイトが無いので、こうして今私はカフェにいる。私は安定の抹茶ラテのミディアムサイズを頼む。店員さんは既に私の顔を覚えてくれており、いつもメッセージを書いてくれる。今日は「今日も学校お疲れ!ゆっくりして行ってね」と書いてくれた。こういったことがあるとやっぱり元気出るなーと思う。

 バーカウンターの笑顔が素敵な大学生らしい男性店員さんから商品を受け取り、2階の窓際の席に着く。スマホを見ると時刻はもう7時だった。よし、勉強しよう。そう思い、鞄のなかから筆記用具と英語の教材を取り出す。そのときだった。


「あの、隣座ってもいいですか?」

 私の目の前には、同級生くらいの男子が立っている。しかもイケメンで高身長の。え、私?周りを見渡してみるが、私以外には離れたところに20代であろう男性がいるだけで他には誰もいない。

「…あ、はい。」

 私はぎこちなく答えた。え、なんでも無いのにわざわざ隣座っていいかなんて聞く?え、もしかしてナンパ?いや、もしかしたら聞くかもしれない。ほら、ここ窓際で景色が良いし、ね。電車で混んでないときに人の隣に座らないっていう感じと一緒だよね、たぶん…。

 私はすぐに妄想に走ってしまう癖があるからかな、ナンパかもなんて思ってしまう。でも、こんなかっこよくてハイスペックな感じの男子が私なんかに声をかけるわけがない。いや、キープにしたいとか?ほら、何人かキープしといてその中から選ぶみたいなやつ。

 …また妄想に走ってしまった。まあ、今のところそんな素振りも無いしなんでも無かったのだろう。1人でドキドキして今になってすごく恥ずかしい。でもそうだったらいいな、なんて。


 それから10分くらいたった時だった。

「あの、連絡先交換してもらえませんか?」

「…え?」

「僕と付き合ってください」

「…!?え、あの、それは、どういう…」

「すみません、急ですよね…。あなたに一目惚れしました。だから、その…、僕の彼女になってくださいって意味です」

「…」

「だめですよね…」

「あ、いや、そういうことじゃなくて…。今まで告白されたことなくて、びっくりしちゃったんです。私で良ければ、お願いします」

「僕はあなたがいいんです!よろしくお願いします。名前と年を教えてもらえますか?」

「瀬渡梛奈実で、年は、16です。あなたは?」

「僕は、溝田光希です。17です。…今週の土曜日って空いてますか?」

「はい、空いてます」

「その日デートしませんか?」

「あ、はい、良いんですけど、そろそろ時間がやばいので、帰ります。後はLI◯Eでいいですか?」

「はい、じゃあまた今度」


 こうして私はLI◯Eを交換して帰った。彼はまだ店に残るという。本当は時間はとくに問題は無かったのだが、驚きすぎて頭が回らなくなってきたのでそう言ったのだ。会話の様子を見れば分かると思うが、緊張して上手く話せなかった。

 それにしても、今私はこれが現実であると思えないのとドキドキで困っている。それに、そんなに一瞬でこの人だ!って思うことなどあるんだろうか?そんなドキドキと疑念が私の頭を巡っているのだった。

 彼のことを考えてみよう。彼は凄くかっこよかったし、偏見であるがサッカー部っぽい爽やかな感じで、一重で垂れぎみの目で、優しい光を放つようなダークブラウンの瞳だった、はず。髪は黒髪で、特に変わった感じのない髪型で、少しウェーブがかかっていたかな。そして何より個人的には彼の首からデコルテにかけてが凄く綺麗でいいなと思った。実は私は首フェチである。それにしても私は自分が思っている以上に彼のことを見ていたんだな。意外とよく覚えている。


 そんなことを考えていたら彼からLI◯Eが来た。

「今日は突然声をかけてしまってごめんね🙏💦びっくりしたよね…。僕はこれからななみちゃんと少しずつ仲良くなって行きたいと思ってます。よろしくね!」

 ため口になった!?しかも名前!?

「はい!よろしくお願いします😆」

 絵文字をつけて可愛らしい感じにしてみたんだけど、これしか返せないくらい頭が回らない。

「あ、敬語じゃなくてためでいいよ!」

「オッケー👌」

「土曜日の話なんだけどさ、何処に行きたい?」

「とりあえず最初だからまたあのカフェで話してみたい!」

「わかったよ!じゃあ細かい時間とかはまた今度決めよっか。あとさ、なんて呼んで欲しい?」

「うーん、何でもいいよ。逆に私にはなんて呼んで欲しい?」

「じゃあ、ななって呼ぶね!僕はこうき、って呼んで欲しい😄」

「わかったよ!」

「じゃあ今日は遅いからおやすみ~」

「おやすみなさい」

 ここまでが今日の私達のやり取り。なんて夢みたいな話…。今まで恋愛経験なんてない私はもう、もう、なんか、困惑しか、ない。正直どうやって帰ったか覚えていなくて、今は23時、私の部屋にいる。多分普通に帰ってきたんだろうけど、お金は使っていないと願っておこう。さて、どうしようか。とりあえず宿題でもやっとくか。何もしないとまた考えちゃうし。

 そして私は25時半まで宿題や勉強、また毎日欠かさずしている筋トレメニューをこなして寝た。そんな朝から色々な事があって疲労困憊する1日だった。私は、爆睡した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕ら、100の空の下 花崎埜娃 @mi-nana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ