僕ら、100の空の下
花崎埜娃
第1話 いつもの朝
ー君は、きっと知らないー
7月1日月曜日。今日も私の1日が始まる。
午前4時30分、起床。急いで歯磨き、洗顔、着替え等を済ませ、10分程度で紅茶と母親が夜中に作っておいてくれたフレンチトーストを食べ、家を出る。母親は医師と言うとてもハードな仕事も完璧にこなしながら、家族のためにこんなことをしてくれるのだから、私のなかにはいつも感謝しかない。
5時01分、バスに乗り駅へと向かう。駅に到着。バスを降りて改札の方へと駆けていく。ICカードを少し雑にタッチして改札を通る。いつもの半分の時間で駅のホームに辿り着く。しかし、残念なことに電車を逃してしまう。
私の名前は瀬渡 梛菜実(せと ななみ)。16歳で、今年からいわゆる「JK」になった。部活はバドミントン部に入り、同じクラスには親友と呼べるほどの友達が出来た。
家族は医師の母、サラリーマンの父、大学生の兄、私、養子である小学2年生の妹の5人だ。私のJKライフとやらは、部活に勉強にバイトに、それから良い家族に恵まれ、とても充実している。今日もJKライフを送るため、横浜にある私の私立高校へ向かうところだ。
午前5時24分。新宿駅の2番ホームで電車を待っている。横浜までに乗り換えは1回で、品川乗り換えだ。帰るときは乗り換えはないのだけれど、今はまだ早朝であるため乗り換えがある電車が走っていないのだ。普段でだったら最寄りのバス停から駅までは10分程度で着くのだけれど、今日は道路が何故だかとても混雑していて、バスがかなり遅れてしまった。そのために本来乗るはずだった5時19分発の電車を逃してしまい、1本後の電車に乗ることになったのだった。
それにしても、こんな時間なのに人が多いなといつも思う。そして外はもう明るくなりつつあり、ややオレンジがかっている空が私は美しくて好きだ。ただ、やはり空気は濁っており、澄んでいたらとても綺麗なのになぁ、と思う。そんないつもの朝である。
そうこう考えているうちに電車が来た。5時37分、乗車。カタンゴトン、カタンゴトン、とゆっくりと音をたてながら静かに、少し濁った東京の空気のなかを電車が動いていく。
私は電車に揺られながらスマホを右手に取り、イヤホンをつけて好きな歌手の音楽を流す。そして、今ではもう当たり前かのように多くの人が使っている、T◯iterやらL◯NEやらと言ったSNSを見た後にちょっとしたポエムを投稿して、お決まりの早起き組がいいねをつけてくれる。(…よしっ!)毎日のことではあるものの、個人的にはとても嬉しくて、心のなかでガッツポーズをする…。これが毎日の習慣になっている。
そして今日は久しぶりに、女子高生向けの流行りとか何だとかがたくさん掲載されているアプリを開いてみた。(…。)少し私には難しかったというか、私の頭は流行りにはついていけないようであった。特にメイクは分からなくて、面倒くさい上にギャップで悲しくならないか?と思ってしまうからだ。
諦めて今日の英単語テストの対策をすることにし、淡い黄色ベースに黒く「happy days」と刺繍の施されているリュックサックの奥から単語帳を取り出す。今回の範囲は300語で、出題数は140問と割と広いので、今勉強しておくのは正解だろう。少し忘れかけていたところを少しずつ思いだしていく。
5時58分、品川に到着。既に外は明るくなっている。今日は雲ひとつ無い青空で、もう少し暑くなって来ている。1番ホームから15番ホームに移動する。6時09分、乗車。再び単語帳を開き、勉強を始める。
6時32分、横浜に到着。人の波に流されるように中央改札へと向かう。改札を出たら北口へ向かい、自転車に乗って学校までは約35分と少し遠めであり、憂鬱な気分を感じながら向かっている。駐輪場へと向かう道中、大好きなカフェが既に開店しており、私を誘惑する。(いや、行くとしたら放課後だ!)と、自分を粛清して通りすぎる。
駐輪場に到着。憂鬱な気分で自転車に乗り、学校へと向かう道を行く。そんな変哲も無いいつもと同じ朝だった。
この時の私は知るよしもなかった。
運命が、少しずつ迫ってきていただなんて…。
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