第3話 目を覚ますと枕の上に
目を覚ますと枕の上に子猫がいた。
もうすでに夫さんは仕事に出たあと。
寝たらなかなか起きない私を置いてさっさと出かけたようだ。
あああ、またやってしまったと思う間もなく、私は枕元の子猫に目をうばわれてしまった。
真っ白な子猫。
丸くなってスヤスヤ眠るフワフワの毛並み。
起こしちゃいけない。
なで回したい気持ちを必死ににおさえて私はかすかに息づく白い毛玉を見ていた。
1時間たったかもしれないし、ほんの数分かもしれない。
ふいに白い子猫が目を開いた。
ああっ・・・。
ブルートパーズ。
イエロートパーズ。
輝く瞳が私を見ている。
ふれていいのだろうか。
ふれてはいけないのだろうか。
私の心臓はドキドキとふるえた。
小さな宝石に指一本ふれることのできない私をよそに、
桜色の口でクァァッとひとつあくびをこぼし、
おぼつかない動きで毛づくろいを始めた。
おそるおそる手を伸ばす私。
こわがるだろうか。
逃げるだろうか。
それとも、小さな威嚇を見せるだろうか。
白い子猫は恐れるようすもなく好奇心をあらわに、
冷たい鼻先で私の指にふれてきた。
さわっていいの?
そろそろとなでる私に身をゆだね、白い子猫はゴロゴロと小さくのどを鳴らしている。
小さな耳も鼻も口も肉球も生き生きと桜色に色づくオッドアイ。
ボンヤリ寝ぼける私のそばで何者かに飛びつく白い子猫。
なに?
虫?
どんなに目をこらしても私の目には何もうつらない。
ピョンッ!と飛びつく。
またひとつピョンッ!と飛ぶ。
ピンと伸びる白いシッポ。
そのとき私はようやく気づく。
ねぇ、あなたどこから来たの?
どうやってこの部屋に・・・。
とたん子猫は動きを止め、少し悲しそうに私を見やるオッドアイ。
私の胸に不安が芽ばえ、動かない子猫を捕まえようと手を伸ばした。
いま捕まえなければこの子はきっと消えてしまう。
それは不安でもなく、予感でもない。
確信だった。
とどく、白い子猫にとどきそうな私の手をさえぎる白い羽。
行かないで。
連れて行かないでよ。
白い羽は子猫を包む。
ひどくやさしく愛しむように。
スルーリスルリ捕まえようともがく私の手で遊ぶ白い子猫と白い羽。
行っちゃうの?
行っちゃうよ。
またね。
また来てね。
また遊ぼうね。
スルーリスルリと白い羽は、窓のガラスを突き抜けて輝く朝日に消えていく。
またね。
また、遊ぼうね。
白い羽 くき @Satou-Pann
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