白い羽

くき

第1話 白い羽がふうわりと

それはわずかのゆがみもない、青い水面に白いメレンゲを浮かべたような、

静かな空が広がる午後のことでした。


さやさやと吹くそよ風とともに、

開けはなたれた窓の向こうから、

白い羽がふうわりと、

ミーの足元に舞いおりました。


茶トラの男の子のミーは、

ひらりとその身をひるがえし、

まるで波乗りサーファーさながら、

ほんのわずかの迷いもなく、


透明な風のように、白い羽に乗りました。


「ミー!」


私の声に答えるようにミイーと小さく返事を残し、ただの1度ふり向いて、


私がかけよるすきもなく、

ミーの乗った白い羽は

窓を飛び出し

メレンゲの雲を突き抜け

青い水面に

かすかな波の輪を作りながら

吸い込まれていきました。


ミー。

もっともっと幸せに

もっともっと幸せに

もっともっと幸せに


してあげられなくて・・・ごめんなさい。

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