第47話 夢を追って生きること
「ねぇ、エトピリカ。これからどうするの?」
メイデンがエトピリカに尋ねる。
「どうするって言われても、何をしたらよいかわからないよ」
少年ははじめて手にした自由に戸惑った。トライアドにいれば水も食事も困らない。生活に困らないのだ。何をするにも自由となった。衣食住の食と住が手に入ったのだ。少年が今まで苦労していな内容は無くなった。
「せっかくお船があるのなら、以前のヨギさんみたく運送屋をやるのなんてどう?」
「おっ、いい手段だな。賃金を得られてあちこち旅ができる!」
ベックがメイデンの意見に賛成した。
「でも、戸籍がないと他の星には入れないって聞いた……僕にできるかな」
エトピリカが不安そうにする。その背をベックがぽんと叩いた。
「それなら安心しろ。犯罪者が集まる惑星ベンヌに行けば良い。偽造戸籍とか違法取得した戸籍を買うのさ! まぁ、金がかかるがな。あぁ、先に言っておくが俺は金がないからな」
エトピリカははたと思い出した。テッドから貰ったデジタルマネーとマムからのメモリー代がある。
「あるよ。僕、お金持っている!」
少年は既に必要なものを持っていた。これまでの足跡の中に、出会ってきた人々のおかげで、少年は可能性と未来を手にする。
「上出来だぜ!」
「キャプテン・エトピリカ。行き先は惑星ベンヌでよろしいですか?……ところで、惑星ベンヌという星、私のデータベースにありませんが」
トライアドが困った顔をした。
「あぁ、ベンヌは数十年前に開拓された星だ。トライアドが活躍した時代にはまだ無かったな」
「それなら、私のデータベースに記録があるよ。トライアドに転送するね!」
メイデンも活躍している。彼女はまたトライアドの手を取り繋がってデータ転送を行った。
「惑星ベンヌを確認。これよりワープ航法に入ります。皆様、良い旅を」
トライアドが光の粒子を纏いワープを始めた。
「僕、故郷の星を出るのが夢だった。それに宇宙に出るのも。その夢が叶った時、今度は地球に行ってみたいと思ったんだ。その夢、叶えて良いのかな?」
「いいに決まっているよ!」
メイデンが即答する。
「なんだエトピリカ。お前、人類発祥の聖地、地球に行ってみたいのか。実は俺も行ったことないんだ。一度は行ってみたいよな!」
夢が膨らんでいく。苦難の渦中を生き続けてきた少年に希望ができ、道が拓き、未来へと繋がった。
エトピリカはこれまで出会った人々に感謝した。彼らがあってこその今の自分がある、と。生きることを諦めなかった少年に、天が運命を与えた。女の姿をしたアンドロイドを遣わして。
メイデンがエトピリカの人生を動かした。彼女無くしてエトピリカの希望も未来も無かったことだろう。メイデンにそんな機能は付加されていない。製造者が考えもしなかった結果をもたらした。全ては女の姿をした運命。
こうしてエトピリカの大冒険は始まるのだ。新たなる伝説として。
壊れかけのファム・ファタル ペテン師のMark @might-is-right
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