第24話 二回目の飛び降り
「そっちの世界では、何をしているのかしら?」
「秋葉を殺した犯人捜しといったところです」
「でも、そっちの秋葉くんは女の子なのよね?」
「そうですね」
「それで犯人がわかるとは思えないけど?」
「それが、こっちの世界の秋葉さんが、誰かに殺される夢を見たとか何とか」
「興味深いわね」
北条は言いつつ、小型ナイフを折り畳み、制服のスカートにあるポケットにしまい込んだ。
「その夢、ここと似たような空間だったかもしれないわね」
「だとしたら、犯人は」
「複数の世界を行き来できる人物、なのかも」
「そんなことって」
「できるってことよね。わたしだって、同じ時を二十三回も経験しているんだから、不思議ではないわね」
両腕を組み、うなずく北条。僕は周りを見渡し、もしかしたら、犯人がいるのではないかと捜してしまった。
「都合よく現れたら、それはラッキーだけれど、そんな都合がいいことは起きないわよね」
「ですよね」
「となると、わたしのいる世界でも現れるかもしれないってことね」
「そうかもしれないですね」
「赤坂くんも、そっちの世界で出てこないかどうか、ちゃんと見ててもらえる?」
「わかりました」
「今度わたしとこうして会える機会はいつ訪れるかわからないから」
「何だか、寂しいですね」
「そうね。状況をちゃんと知ってる人がお互いに別の世界だものね」
「まあ、北条さんが元気そうだということがわかっただけでもよかったです」
「わたしもね」
北条は笑みを浮かべると、僕に近寄り、軽く肩を叩いた。
「秋葉くんを殺した犯人、見つけたら、逃さないでよね」
「そのつもりです」
「ということで、お別れとかしようかなと思ったんだけど、この空間、いつ終わるのか、タイミングが読めないわね」
「というより、自分たちで終わらせるとか?」
僕の言葉に、北条は握りこぶしを手のひらで叩いて、「そっか」と口にする。
「そしたら、この屋上から飛び降りれば、いいってことね」
「また、飛び降りるんですか……」
「多分、死ぬことはないと思うわよ。多分」
「また、多分って二回言ってるんですけど……」
僕が弱い語気でこぼすも、北条は気にもしないような顔をする。
仕方なく、僕は足を進ませると、金網まで行くなり、登り始め、てっぺんまで行く。
「ところで、赤坂くん」
「何ですか」
真下までやってきた北条は甲高い声で話しかけてくる。
「委員長は元気だった?」
「まあ、普通でしたけど」
北条のことが好きだと教えるのは面倒そうになるので、伏せることにした。
「そう。こっちの世界の委員長は、赤坂くんのことが好きみたいよ」
「えっ?」
「後、秋葉くんだけど、前と同じで男だし、まだ殺されていないから」
「ちょ、その前にすごい気になるような言葉が」
僕が口を動かしている途中、急に強い風が吹きつけてきて、体が煽られる形で崩れ落ちる。
「まだ、話の途中なのに……」
僕は真っ逆さまに落ちていく中、「気をつけて」という北条の声が耳に届く。
何に気をつけてなのか、僕はわからないまま、視界は真っ暗になってしまった。
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