第18話 再会

「いい?」

「はい」

 委員長の返事に、僕は意を決して、マンションの中へ入っていく。

エレベーターに乗り、七階で降りると、手すりと各部屋のドアに面する通路が伸びていた。外を見れば、駅前の繁華街や自分らの通う高校まで見渡せる。

「高いですね」

「そうだね」

 僕は風景を眺めつつ、エレベーターから三番目にある部屋のドアへ向かう。

 表札には、「秋葉」とあった。

「赤坂くん、これって……」

「いや、会ってみないと」

 僕は口にしつつも、緊張からか、インターホンを押そうとする指が震えていた。

 もし、秋葉が出てきたら、何を話せばいいか。または、親が現れて、そんな子は知らないとか言われたら、どうしようか。様々なことが脳裏によぎってくる。

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫。うん」

 僕はうなずき、深呼吸をする。とりあえず、気持ちを落ち着かせよう。

「君たち、誰?」

 突然、誰かの声が横から聞こえてきた。

 僕はおもむろに顔を動かし。

「あっ……」

 視線をやれば、端正な顔つきに切れ長な瞳を向けてくるジャージ姿の人物がいた。手にはビニール袋を持っている。どうやら、何かの買い物帰りらしかった。

 瞬間、僕は自然と口が動く。

「秋葉?」

「この人が、秋葉くんですか?」

「う、うん」

 僕は委員長の問いかけに首を縦に振り、視界に映る秋葉であろう人物と向かい合う。

 対して、相手は首を傾げ、不思議そうな表情を移してくる。

「秋葉、くん?」

「その、何て説明したらいいか何だけど……」

「その制服って、北高?」

「は、はい」

 委員長が答えると、相手は、「そっか」と声をこぼす。

「僕もそっちを受験していたら、共学の高校に行ってたのか……」

「共学?」

「うん。今はほら、近くにある女子校だから」

 相手の言葉に、僕は「えっ?」と間が抜けた声を漏らしてしまう。

「あ、あの」

「何?」

「その、お名前、教えてもらってもいいですか?」

「僕の名前? 秋葉充だけど?」

「充……。同じ名前だ。でも」

 僕が戸惑っている中、委員長が秋葉の方へ身を乗り出してくる。

「その、一応確認させてください。秋葉、さんは、女ですか?」

「えっ? そうだけど」

 秋葉の返事に、僕は体の力が抜け、場にへたり込んでしまった。

「赤坂くん、大丈夫ですか?」

「君、大丈夫?」

 心配そうな二人の女子に囲まれる中、僕はどうすればいいかわからなくなっていた。

 友達の男子が別の世界では女子だなんて、冷静に受け止める方が無理な話だ。

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