第6話 秋葉家への訪問

 秋葉の家は駅から徒歩五分ほど離れたところに建つマンションの七階にある。

 僕は何回か遊びでお邪魔したことがあり、秋葉の部屋は小奇麗だったことを覚えていた。

 風邪ということは、部屋にあったベッドで寝込んでいるのだろう。

 マンションのエレベーターに乗り、僕は七階で降りる。

 吹き抜けの通路からは、駅前の繁華街や自分らの通う高校まで見渡せた。

 僕は外の風景を眺めつつ、エレベーターから三番目にあるドアへ向かう。

 「秋葉」の表札があるところで足を止め、インタホーンを押し、相手からの声を待つ。

 反応がない。

 僕は再びインタホーンを鳴らしてみる。

「すみません、秋葉のクラスメイトの赤坂ですけど」

 名乗ってみるも、返事はなし。もしかして、留守なのだろうか。

 僕はドアの取っ手を握ってみる。

「空いてる……」

 ドアは抗うこともなく、簡単に開いた。

「お邪魔します……」

 僕は意を決して、中にそろりと足を踏み入れる。

 玄関から伸びる廊下は明かりがついておらず、夜でもないのに、薄暗かった。

 僕は扉を閉め、通学靴を脱ぎ、上がり込む。

「誰かー、誰かいますかー」

 声を張り上げてみるも、物音ひとつしない。

 もしかして、強盗にでも入られたのか。段々と嫌な予感がしてくる。

「気を付けなさいよ」

 脳裏に、別れ際聞いた北条の言葉が蘇ってくる。

 まさか、北条が先回りして、秋葉を。

「いや、そんなことが本当に」

 かぶりを振る僕だが、冗談と片づける気持ちの余裕はなかった。

 今いるところは危ない。

 なぜだが、僕の第六感がそう伝えてきているように思えた。

 ひとまず踵を返して、玄関の方へ戻ろうとして。

 突然、後頭部を激しい痛みが襲う。

 誰かに鈍器のようなもので殴られたとわかった時には、僕は床に倒れ込んでいた。

「気を付けなさいよ」

 北条の忠告は見事に当たった。対して、何も考えずに秋葉の家にやってきた僕は愚かだったようだ。

 意識が薄らいでいき、視界もぼやけていく。

 相手だろうか。はっきりとわからないが、じっと覗き込んでくる。

 目を凝らして犯人の顔を見てやろうとしたが、僕は気を失い、叶うことはなかった。

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